夫に先立たれて、娘とも疎遠。“もしもの時”が不安です。娘には迷惑をかけたくないのですが「終活」を手伝ってくれるサービスはありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月27日 3時0分
高齢で一人暮らしの方にとっては、自分が万が一のときにはどうなるか、非常に不安になります。近くに頼りになる身内がいない、自分自身で病気を抱えている、まだ子どもが成人していない、といった事情がある方にとっては、自分の死後どうなってしまうのか、非常に不安になります。 こうした事態に対応するための、終活支援サービスを知っておくと役に立つかもしれません。
高齢者に広がる「終活」への意識
自分の死後、なるべく関係者に負担をかけなくするため、財産情報データの集約、エンディングノートの作成といったことを準備する方が増えています。高齢で一人暮らしの方はもちろんですが、子どもなど相続人がいる方でも、こうした準備をすることで、残された遺族などが意向に沿った手続きを行うことができます。
しかし「終活」への意識はあったとしても、エンディングノートの書き方を詳しく知りたい、自分の遺産の相続について知識がないので対策が立てられない、無効にならない遺言状の書き方を教えてほしい、自分の葬儀や納骨がどうなるかが不安になる、といった相談を希望する方が多くなっています。いざ実行という段階で、二の足を踏んでしまう方もかなりいると思います。
このようなときに頼りになるのが、「終活支援サービス」を実施している各種の組織です。まずお住まいの自治体などが、相談窓口を設置しているかを確認します。終活支援サービスも多様化しており、行政ではカバーしきれないことも増えてきました。
そのため、民間企業が専門性を生かせる分野で、サービスを提供しているところも増えています。できれば元気なうちに、ニーズにあったサービスに目を向けておくと安心感が生まれます。
自治体による終活サービス
一人暮らしの方にとって、まずお住まいの自治体によるサポートがあるかを確認することが第一歩です。どこの自治体にもある「地域包括支援センター」は、高齢者の介護などに関する相談窓口としての機能はありますが、終活支援サービスまでカバーしているかというと、やや無理があるかもしれません。
ただ終活支援に関しての情報提供を受けることは可能です。終活の方法について悩んでいる方は、一度訪問して相談してみましょう。
すべての自治体が実施しているとはいえませんが、依頼者本人の安否確認、葬儀や納骨に関する生前契約、家財道具の処分対応、公的機関向けの各種提出書類作成の代行、といったサービスを実施している自治体はいくつかあります。それぞれの内容を確認し、ニーズにあったサービスを提供していれば利用しましょう。
ただしそれに応じて対価が発生します。実際の費用の実例(目安)としては、葬儀・納骨一式が、25~30万円程度です。家財の処分については、処分量により別途費用が発生します。自治体が行うサービスのため、比較的安い価格設定といえます。
一人暮らしの高齢者は確実に増加します。自治体としても、このニーズの高まりに対応することが必要になります。現在の単なる情報提供だけでは不十分で、個別具体的な終活サービスのメニューを提供することが求められると予想されます。
民間による多彩な終活サービス
終活を1つのビジネスチャンスと考え、動き出している民間企業は増える傾向です。さまざまな業種の企業が、その得意分野を生かしつつ、新たなビジネスモデルを構築し、ニーズに応えようとしています。
自治体が行うサービスに比べ、民間としての知恵を生かし、細かいニーズにも対応しようとする工夫も見られます。ただし公的サービスと比較して、事業として展開するため、その分の経費はやや高くなります。
例えば、相続対策に絞って力を入れている企業はかなりあります。これまでは、資産管理や遺言状は、主に信託銀行が担当する分野でしたが、どうしても敷居が高い、高額の費用が発生しそう、といった印象がありました。そのため、気軽に相談できることをセールスポイントに、多くの企業が参入しています。
利用する立場で考えると、一人暮らしの方はもちろん、定年退職した夫婦で「子どもに迷惑をかけたくない」として相談、その後に契約する方も多くなっています。
具体的なサービスには、葬儀や納骨の業者選定とその手配、電気料金など公共料金の解約と精算、家財道具の仕分けと処分などを実施するだけでなく、相続に特化して相続税の計算から税理士の紹介など広域にわたっています。
その方の金融資産、不動産の所有状況など、必要項目をネットで入力するだけで、相続税額が表示されるシステムもあります。選べるメニューもいくつかあり、依頼者のニーズに応じて選ぶことができます。選び方にもよりますが、料金としては50~120万円程度が目安になります。
納骨や墓地に関する情報を提供する企業もあります。全国の霊園・墓地の募集情報だけでなく、通常お墓が不要な方に向けて、納骨堂や樹木葬に関する募集情報をネットで無料公開しています。
埋葬方法ごとに空き情報がわかり、それと同時に、埋葬料金の情報提供があります。他人に埋葬方法を委ねるのではなく、自分の希望に即した方法を、生前に決めることができます。
例えば、遺言状にその旨記載しておけば、遺族にとっても悩む必要はなくなるはずです。納骨に関する経費は、霊園や寺院との個々の契約となり、情報提供企業への支払いはありません。
今後とも一人暮らしの高齢者は確実に増えるため、こうした民間による終活サービスは増加していくと思われます。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者
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