40歳以上は要注意!? 遺族年金の「中高齢寡婦加算」が廃止されるって本当?“現行の制度”と議論内容について解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月1日 4時40分
遺族年金制度の中高齢寡婦加算は、40歳以上で特定の要件を満たした人が受け取れる加算給付の1つです。しかし、社会保障審議会で中高齢寡婦加算の廃止が検討されていることをご存知でしょうか。 本記事では、中高齢寡婦加算は廃止されるのか、中高齢寡婦加算や遺族厚生年金の概要などについて解説します。
中高齢寡婦加算とは?
遺族厚生年金の加算給付には「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」があり、そのうち中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金の受給者で要件を満たした人が受け取れる加算給付の1つです。
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金を受け取っている人が対象となるため、まずは遺族厚生年金の概要や、中高齢寡婦加算でもらえる金額などを以下で確認しておきましょう。
遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者等が亡くなった際に、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族に支払われる公的年金です。
遺族厚生年金の受給権者は、優先順位の高い方から「子のある配偶者や子」「子のない配偶者」「父母」「孫」「祖父母」となります。
遺族厚生年金の受給要件は以下の通りです。
●死亡したときに厚生年金保険の被保険者であった場合
●厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やケガが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
●1級または2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
●老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
●老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
遺族厚生年金の受給には、支給事由の発生日から5年以内に、必要書類を添付した年金請求書を年金事務所または年金相談センターに提出する必要があるため、事由が発生したらすみやかに請求手続きを行いましょう。
中高齢寡婦加算の対象者や金額
遺族厚生年金の受給者のうち、中高齢寡婦加算の対象者は「40歳以上65歳未満の、子がいない妻」、または「遺族年金を受けていたが、子の年齢が制限に達した等で受給権を失い、遺族基礎年金を受給できなくなった妻」のどちらかに該当する人です。
中高齢寡婦加算をもらえる期間は「40歳から65歳になるまでの15年間」で、遺族厚生年金に年額61万2000円が加算されて支給されます。
遺族厚生年金を受給している人であれば、中高齢寡婦加算を改めて申請する必要はありません。
中高齢寡婦加算は廃止される?
遺族年金制度は、制度内容が時代にそぐわない点が多いとして制度の改正が議論されており、改正案の1つとして中高齢寡婦加算の廃止も検討されています。
中高齢寡婦加算は、家計の担い手である夫と死別した場合に、死別後の妻の就労が困難である社会経済状況に着目して設計された制度で、子のいない40歳以上65歳未満の女性しか受け取ることができません。
しかし、近年は女性の就業の進展や共働き世帯の増加など、社会経済状況が著しく変化し、現行の制度内容では、男性や40歳未満の女性との差が浮き彫りとなるため、中高齢寡婦加算を段階的に廃止していく方針で議論されています。
具体的な改正案や施行日などは今後の議会でさらに議論されることになるため、引き続き理解を深めていくことが大切でしょう。
まとめ
遺族厚生年金の「中高齢寡婦加算」は、遺族厚生年金に年額61万2000円を加算して支給される加算給付です。
「40歳以上65歳未満の子がいない妻」または「遺族年金を受けていたが、子の年齢が制限に達した等で受給権を失い、遺族基礎年金を受給できなくなった妻」のどちらかが受給できます。
家計の担い手である夫が亡くなった際に生活の支えとなる遺族年金ですが、男女差の解消や社会経済状況の変化に伴い、遺族年金の制度内容の改正が議論されています。
なかでも中高齢寡婦加算は、制度の段階的な廃止が改正案の1つとして検討されており、今後の議会でさらに具体的になっていくため、引き続き理解を深めていくことが大切です。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金を受けられるとき
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて
執筆者:梅井沙也香
FP2級
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