義両親が「小学校は私立に入れなさい。有名な私立に入れば将来安泰よ」と強引に勧めてきます。夫は面倒だから受験させようと言いますが、金銭面も心配です。
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月2日 3時0分
Aさんの1人娘は幼稚園の年中さん。義両親が「小学校は私立に入れなさい。できるだけ有名な私立に入れれば将来安泰よ」と強引に受験を勧めてくるそうです。 Aさん夫婦は「親に会うたびに言われて面倒だし、このことで夫婦げんかも絶えないので親の言うとおり受験させてしまおう」と思っているそうですが、小学校から私立に通わせる場合には、主に費用面をしっかり計画する必要があります。 Aさん夫婦は共働きで世帯年収は900万円ほど、住宅ローンを払っていて生活に余裕があるわけではないのだそうです。子どもの教育費と今後の家計について考えてみましょう。
わが子の教育は誰が責任を持つのか
Aさんのお子さんの教育は、義理のご両親ではなく「Aさん夫妻」が責任を持つということをまず確認しましょう。経済的な支援を受けられるかもしれませんが、子どもの教育は「お金」だけの問題ではないはずです。
ご相談の内容を伺っていると、お嬢さまの意思(幼くて無理かもしれませんが)やご夫妻が「どういった教育を施してあげたいか」という思いではなく、ご両親との人間関係が優先されているようにお見受けします。
まずは、「Aさんご夫妻」がお嬢さまの教育を含め子育ての責任を負うという認識を確認し、ご夫妻の意思表示をされるところからはじめてはいかがでしょうか。
時代によって価値観や労働市場の状況は変わる
次に、義理のご両親の「将来安泰」という根拠ですが、ご両親の時代と今の時代では状況がまったく異なります。
ご両親が現役だったころの日本は、製造業を中心に右肩上がりの経済成長を遂げていました。主要生産拠点は国内にありましたから、製造・販売に伴う事務作業も多く生まれ、一定水準の大学を卒業すればホワイトカラーの事務職に雇用されるレールを見通すことができました。
しかし、今や多くの製造業は海外に拠点を移してしまいました。そして、人口減少により働き手が不足している日本に拠点を戻す力はありません。
かつてのように、大学を卒業していれば見えていたレールはなく、「将来安泰」ということは考えづらい状況になっています。「将来安泰」という言葉が意味するところはさまざまでしょうが、何十年か前に描かれていた「事務職で数年働いて、専業主婦になる」というイメージは描きづらい状況です。
参考までに、令和4年6月の業種別有効求人倍率によれば、一般事務員の求職者は6224件、対して求人件数は2188件と0.35倍です。
小学校で私立を選択すれば、大学まで私立の覚悟が必要
教育費についても確認しておきましょう。
こういった「公立VS私立」の費用はよく目にするところだと思いますが、具体的に試算してみると、小学校から高等学校まですべて私立に通わせた場合、大学入学までに、年間小学校学費×6+中学校×3+高等学校×3ですから
1000万1694円+430万9059円+316万3332円=1747万4085円
もの費用がかかることになります。
学費については昨今、教育費無償化の取り組みが国や地方公共団体で展開されています。また、入試の成績によって授業料免除などを提供している私立学校も多くありますので、かつてほど心配する要素ではなくなっていきています。
しかし問題は、学校外活動に関する費用です。
一般的に私立に子どもを通わせる家庭は、最初から奨学金を目当てにというよりは自分たちが負担することを前提に選択しますから、経済的に余裕があると考えてよいでしょう。
そうなると、部活動や修学旅行、運動会や送別会など、イベントごとのお付き合いで、目に見えない出費がかさみます。しかもこれらの学校外活動や自主的なイベントに関わる費用は支援の対象外です。
子どもを私立に通わせるということは、そういった目に見えない費用を負担し続けることができるかも併せて確認する必要があります。
最終学歴は、私立大学50万599人 VS 国立・公立大学9万8878人
国立・公立大学の令和6年度入学者定員は9万8878人でした。一方で私立大学は最近定員割れという状況に陥っている大学がありますので、令和5年度時点で入学した人数を上げると50万599人と報告されています。
この統計からも、私立小学校に入学してそのまま大学まで私立という確率が高いということが読み取れます。
大学では、より学校内での授業料免除や各種奨学金制度が充実している上に、アルバイトで生活費の一部を賄っている学生も多いです。進学する学部によってさまざまですし、親の経済的支援の割合も方法も各家庭によって何通りもあり、一般化することは難しいのでここでは割愛しています。
小学校を私立にすると、大学まで私立に通わせる覚悟が必要であるということです。現在はご両親から経済的支援を受けることができたとしても、お子さまが大学に入学したときに同様の支援を継続的に受けることができるかどうかも考えておくべきでしょう。
「子どもが自分らしい人生を歩むための地盤づくりが教育」という趣旨を忘れずに
子育てのメインは教育、と言ってもいいでしょう。費用が長期間にわたること、価値観や労働市場の状況が大きく変わっていること、ご両親の支援がどこまで得られるか、といったことを併せて、「子どもが自分らしく生き生きした人生を送ることができるか」という観点から検討することが大切でしょう。
出典
文部科学省 2. 教育費負担
厚生労働省 業種別<中分類>常用計 有効求人・求職・求人倍率 (令和4年6月)
日本私立学校振興・共済事業団 令和5(2023)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向
文部科学省 令和6年度国公立大学入学者選抜確定志願状況
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者
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