【知らないと損してるかも】会社から「退職所得の受給に関する申告書」を提出するように言われましたが提出したほうがよいのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月9日 1時0分
退職金を一時金で受け取る場合、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することで税金の優遇が受けられます。
一時金で受け取る場合の税金
退職金を一時金で受け取る場合、所得税・住民税が課税されます。あらかじめ「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、受取時に税金は天引きされ、それで課税関係は完結します(分離課税)。なお、この申告書を提出しない場合、退職金の20.42%の所得税が源泉徴収されます。この場合は確定申告をして税金を精算します。
退職金を一時金で受け取る場合、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払いまでに会社に提出することで、「退職所得控除」が利用できますので、退職金(収入金額)が退職所得控除より少なければ税金はかかりません。
退職所得金額=(退職金−退職所得控除額(*1))×1/2(*2)
(*1)退職所得控除額
勤続年数20年以下:勤続年数×40万円(最低80万円~最高800万円)
勤続年数20年超:800万円+(勤続年数−20年)×70万円
勤続37年と1日で退職するとき、退職金2210万円のケースで見てみましょう。
勤続年数に端数がある場合は切り上げになりますので、このケースの場合の勤続年数は計算上38年となります。勤続38年の場合の退職所得控除額は2060万円(800万円+18年×70万円)となります。したがって、退職所得は75万円((2210万円−2060円)×1/2)と計算できます。これをもとに税金を試算すると、所得税は3万8287円(75万円×5%×102.1%)、住民税は7万5000円(75万円×10%)です。
(*2)勤続年数が5年以下の場合、1/2が適用できないこともあります。
退職直後の住民税
会社員として働いている時には、所得税や住民税は給料から天引きされ、勤務先がまとめて税金を納付してくれますので、自分で納税をする必要はありません。しかし、住民税は前年の所得をもとに決まりますので退職直後の住民税の支払いの準備をしておく必要があります。
「1月~5月に退職する場合」と「6月~12月に退職する場合」とでは住民税の取り扱いが異なります。
まず、「1月~5月に退職する場合」は、退職日から5月までの住民税は退職月の給与から一括徴収されますので、5月まで住民税の支払いはありません。6月以降は、新年度の住民税を納付書によって支払います。
次に、「6月~12月に退職する場合」は、退職した月の翌月から翌年5月までの住民税を市区町村から送られてくる納付書により、年4回に分けて支払います。
年金で受け取る場合の税金
退職金を年金(分割)で受け取る場合、受け取る年金は「雑所得」になります。公的年金等の税金は、年金の収入金額から「公的年金等控除額」を差し引いて所得金額を計算します。
「公的年金等控除」が適用となる公的年金等とは、老齢基礎年金や厚生年金などの老齢年金だけではなく企業年金や国金年金基金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などです。
公的年金等控除額は年齢や公的年金等の収入金額などにより決まり、例えば、65歳未満で年金額130万円未満であれば60万円、65歳以上で年金額330万円未満であれば110万円となっています。
また、雑所得として他の所得と合わせた総合課税になります。所得が多いと社会保険料や医療費の窓口負担が多くなる可能性があります。
〔(公的年金等の金額−公的年金等控除額)+他の雑所得+他の所得〕−所得控除=課税所得金額
課税所得金額×所得税率=所得税額
まとめ
会社の規定によって退職金の受け取り方には、「一時金」「年金」「一時金+年金」があります。手取り額を増やすなら「一時金」がおすすめです。「一時金」には、大きな「退職所得控除」「2分の1課税」「分離課税」といったメリットがあります。
ただし、「退職所得控除」を受けるには退職金の支払いまでに「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出する必要があります。また、分離課税なので社会保険料もかかりません。留意しておきましょう。
出典
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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