年金暮らしの親が「貯金がなくなり、暮らすだけで精一杯」と言っています。親の面倒をみたいのですが、妻は同居に反対しています……。何か解決策はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月15日 4時20分
少子高齢化の中、高齢になった親の世話をどうするのか、悩む場面は多いものです。本稿では、子ども側からの視点で親との同居や距離感について、注意点とメリット、デメリットを考えてみましょう。
子どもが親と同居を考えるきっかけは突然にやってくる
子どもが親と同居を考えるきっかけはさまざまでしょう。親の年金が少なく生活が厳しい、もしくは病気や認知症になった、父親が亡くなって母親1人だけでは心配など、わかっていたけれど先延ばしにしていた問題が急に現れるというケースも多いかもしれません。
仲のよい親子だとしても,赤裸々にお金の話をすることは少ないものです。親から「生活が厳しい」と聞かされていても、いつもの口癖か、それとも本当に切迫しているのか見極めるのにも時間がかかり、気が付けば、どうしようもなくなっている、というきっかけもあるかもしれません。
突然、どうしようもなくなる前に、親としっかりお金の話ができる関係を目指すために、まずは、「お金の話をすることが得になる」という説明から始めてもいいでしょう。親を税法上の扶養、もしくは社会保険上の扶養に入れるとメリットがあります。まずは同居を考える前に、この扶養を検討することから始めてもいいかもしれません。
兄弟姉妹が複数いるケースで、今年は兄、その次の年は妹というように、兄弟姉妹間で順番を決めて親を扶養にして、扶養のメリットを利用することは可能です。ただ、「生計を同一にして支援する」ことが扶養ですから、単に名目だけを扶養とすることではメリットは享受できません。
配偶者の「扶養」と親の「扶養」の定義の違い
社会保険の適用拡大を機に、配偶者の扶養については、詳しく知っている方も増えてきたように感じます。年間収入を、103万円か106万円、もしくは130万円という数字におさえるために、自分のパート収入計画を見直した方もいることでしょう。
ただ、配偶者と親族では、社会保険上の扶養の基準は少し異なります。
健康保険の場合、75歳以上は後期高齢者の保険に加入します。親が75歳になるまで健康保険上の扶養に入れることで、親が国民健康保険に加入して保険料を支払っていれば,その分の保険料を節約できるでしょう。
ちなみに、健康保険の扶養親族とするためには、同居していなくても可能ですが、「扶養の認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合」に限られます。
次に、税法上の扶養とするためには、「年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」という基準があります。
この税法上の扶養の基準を満たせば、70歳未満の親ひとりあたり38万円、70歳以上の親ひとりあたり48万円(同居しているときには58万円)が子どもの所得から控除され、子どもの課税所得が少なくなり所得税が下がるというメリットがあります。
社会保険上、税法上いずれも単なる名目だけではなく、普段から生計を維持している、すなわち支援しているという証拠、例えば定期的に振り込みをする、など実態が伴っていることは基本です。
遺族年金が男女平等に改正される?
今の遺族年金は、年金制度上でいえば男女平等とはいえません。
18歳未満の子どもがいる妻が亡くなったときの遺族基礎年金については、夫にも受給権が発生するよう改正されています。この点については男女差が解消されたといえます。
ただ、そもそも遺族厚生年金の受給権が発生する夫は55歳以上に限られます。妻について、子どものいない30歳未満の妻は5年の有期年金になった改正点はありましたが、妻については、55歳未満でも受給権が発生します。今後、この圧倒的に妻が有利な状況について解消されるかもしれません。
厚生労働省の「第17回社会保障審議会年金部会」(2024年7月30日)の資料によると、「妻が40歳以上65歳未満の間に支給される中高齢寡婦加算を段階的になくす」ことや「夫の55歳以上という条件をなくす」という提言がなされています。確定ではないので今後も法改正を見ていく必要はありますが、親の年金がどれくらいかという点は、別居か同居かの選択肢に影響することもあります。
専業主婦やパートなど、厚生年金に加入していた期間が少ない母親では、年金額が少なくなり、子どもと同居せざるをえないというケースも出てくるかもしれません。
親子で、同居か近所に住むかの判断は非常に難しいものですが、突然どちらかの判断によることとなれば、どちらかにとっては不本意な判断となることもあります。できれば親が元気なうちに、親子でお金の話をクリアにしつつ、どちらにとってもウイン・ウインの選択肢とできるようにしたいものです。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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