マイホームを売却したけど「損失」に……。この場合、確定申告は必要?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月29日 1時50分
マイホームを売却した際、期待していた価格で売却できず損失が出てしまうことがあります。このような場合、確定申告が必要かどうか迷われる方も多いでしょう。実は、不動産売却で損失が出た場合には原則として確定申告は不要ですが、特例を活用することで損失を他の所得と相殺したり、翌年以降に控除を繰り越したりすることが可能です。 本記事では、不動産売却時の譲渡損失に関する基本情報から、確定申告が必要な場合、特例の活用方法について分かりやすく解説します。
不動産売却で損失が出た場合、確定申告は必要なのか?
不動産を売却した際に損失が出た場合、原則として確定申告は不要です。譲渡所得がマイナスの場合、税金を納める必要がないためです。ただし、特定の条件を満たす場合には確定申告が必要となることがあります。たとえば、「居住用財産の3000万円特別控除」を適用する場合や、損失を他の所得と相殺する「損益通算」や翌年以降に繰り越して控除する「繰越控除」を利用したい場合です。これらの特例を利用する際には、確定申告を通じて適切に手続きする必要があり、条件や必要書類に注意が必要です。
出典: 国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
不動産売却の基本:譲渡所得と損失の計算方法
不動産を売却する際、譲渡所得と損失を正確に計算することは重要です。譲渡所得の計算式や、損失が発生した場合の取り扱いを理解しておくことで、適切な対応が可能になります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は次の計算式で求めます。
●譲渡所得 = 譲渡価額 −(譲渡費用 + 取得費)− 特別控除額
「譲渡価額」は売却時の価格を指し、「譲渡費用」には仲介手数料や印紙税などの諸経費が含まれます。「取得費」は購入価格や手数料で、建物部分は減価償却費を差し引いて計算します。また、一定の条件を満たす場合には「特別控除額」が適用され、課税額を軽減できます。
譲渡損失とは?
譲渡所得がマイナスになる場合、その差額が譲渡損失として扱われます。たとえば、売却価格が購入時の費用や売却諸経費を下回る場合に発生します。この損失は税金が発生しないため原則として確定申告の必要はありませんが、「損益通算」や「繰越控除」の特例を利用する場合は確定申告が必要です。不動産売却時に損失が出た場合、その影響を最小限に抑えるための手続きが重要です。
譲渡損失を活用する:知っておきたい2つの特例
譲渡損失が発生した場合でも、一定の条件を満たせば税負担を軽減するための特例を活用できます。ここでは「マイホームを買い換えた場合の特例」と「特定のマイホームの特例」の2つについて説明します。
1. マイホームを買い換えた場合の特例
この特例は、マイホームの買い換えを行った際に譲渡損失が生じた場合に適用されます。売却した不動産と新居の双方が条件を満たす必要があります。主な条件として、売却物件の所有期間が5年以上であることや、新居の購入が売却した翌年の12月31日までに行われ、住宅ローンの融資期間が10年以上であることが挙げられます。また、売却した敷地面積が500㎡以下であることも条件の一つです。
2. 特定のマイホームの特例
買い換えを伴わないマイホームの売却で譲渡損失が発生した場合に適用される特例です。この特例では、売却時点で住宅ローン残高があり、売却価格がその残高を下回る場合に利用可能です。また、売却物件の所有期間が5年以上であることが条件で、合計所得金額が3,000万円以下である必要もあります。この特例を活用することで、損益通算や繰越控除を通じて節税が可能となります。
譲渡損失の特例を利用するための確定申告の手順
譲渡損失の特例を利用するには、確定申告を正確に行うことが必要です。以下はその手順について説明します。
必要書類の準備
まず、一般的な必要書類をそろえます。これには、確定申告書、譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、譲渡費用を証明する領収書、登記事項証明書などが含まれます。また、特例を利用する際には、居住用財産の譲渡損失の明細書や損益通算および繰越控除に関する計算書、住宅ローンの残高証明書などの追加書類が必要です。これらを事前に用意することでスムーズに手続きを進められます。
確定申告書の作成と提出
確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると便利です。画面案内に従うことで、必要事項を入力するだけで計算結果が自動で反映され、記入ミスを防げます。作成した申告書は、税務署への持参、郵送、またはe-Taxによるオンライン提出のいずれかの方法で提出できます。特にe-Taxを利用する場合は、事前にマイナンバーカードやID・パスワードの登録が必要なため、早めに準備を進めましょう。
注意!特例適用時の注意点
譲渡損失の特例を利用する際には、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。適用外となる条件や所有期間の計算に関するポイントを押さえておきましょう。
知っておきたい適用外の条件
譲渡損失の特例は、他の特例を受けた場合には適用できない場合があります。たとえば、3000万円特別控除やマイホームの買い換え特例を過去に利用している場合、その年や数年前の売却には譲渡損失の特例が適用外となることがあります。これにより、特例を組み合わせて利用できなくなるため、過去の利用状況を確認することが重要です。
所有期間の計算方法と注意点
特例の適用には、売却する不動産の所有期間が5年を超えることが条件です。ただし、土地と建物の所有期間は別々に計算されます。たとえば、土地を20年所有していても、その上に建てた建物の所有期間が5年未満である場合、特例の条件を満たさないことがあるので注意が必要です。所有期間の計算は売却年の1月1日を基準とするため、購入時期を正確に確認する必要があります。土地と建物の所有期間を明確に区別することで、特例適用の判断が正確に行えるでしょう。
まとめ:損失を生かして賢く節税を
マイホーム売却で損失が出た場合でも、確定申告を通じて「損益通算」や「繰越控除」の特例を活用することで、損失を節税に生かすことが可能です。ただし、特例の適用には所有期間や過去の特例利用状況など細かな条件があり、正確な書類準備が欠かせません。売却前後の状況を整理し、必要に応じて税務の専門家に相談することをおすすめします。不動産売却後も有効な対応を取ることで、賢い資産運用を目指しましょう。
出典
国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
国税庁 No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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