民間医療保険は本当に必要?高額療養費制度を踏まえた賢い選択肢
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月1日 23時20分
日本国民は職業・年齢にかかわらず、公的医療保険に入っています。さらにそのため民間の医療保険に入ると、例えば年収370万円~770万円の人は、月8万円を超える部分の保障が重複することになります。 それでは、そのような場合、民間医療保険についてはどうすればよいのか、考えてみましょう。
高額療養費を前提にした、民間医療保険の使い道
リード文で先述したように、保障内容が民間保険と公的医療保険とで重複する場合、以下の対応策が考えられます。
(1)民間医療保険へは加入せず、「自家保険」で対応する
高額療養費制度のおかげで、医療費のリスクは大きくありません。そのため民間保険には入らずに、入院した場合などに備えて自己負担分をあらかじめ貯金しておき、入院した際の医療費として使う方法があります(いざというときの出費を自分で賄うので「自家保険」といいます)。
(2)民間保険に加入する
(2-1)自己負担限度額をカバーするために、民間保険に加入する
高額療養費制度があっても、例えば年収370万円~770万円の人は、月8万円程度までは自己負担をしなくてはなりません。その費用をカバーするために民間医療保険に入る、という選択肢もあります。この場合はリスクが小さいので、保障額・保険料も小さくてすみます。
(2-2)個室費用など、公的保険でカバーされない費用を補うために、民間保険に入る
「公的医療保険で保障されない、入院に伴う諸費用をカバーするために、民間医療保険に入る」という考え方もあります。
例えば個室費用などの差額ベッド代、入院中の食事代、病院へのタクシー代などは、入院に関する費用ですが、公的医療保険ではカバーされません。特に差額ベッド代は1日当たり数千円から数万円かかるので、民間医療保険からの入院給付金をもらえれば、差額ベッド代に充てることができます。民間医療保険は差額ベッド代のための保険ではありませんが、そのために入っておくという考え方もあるでしょう。
(2-3)先進医療など、公的医療保険の対象外となる医療費のために、民間医療保険に入る
「先進医療」とは、将来に保険の適用が期待されている医療技術で、有効性や安全性に関して一定の基準を満たし、厚生労働省の認めたものをいいます。陽子線治療や重粒子線治療など、がんの治療に使える先進医療もあります。これらは公的医療保険の対象外なので、自己負担となり、受診には数百万円単位の費用がかかります。
この費用に対しては、民間医療保険やがん保険の「先進医療特約」に加入することもできますし、先進医療特約専門の保険もあります。保険料が年齢に関係なく比較的割安なので、このような保険に入っておく選択肢もあります。
なお2022年4月からは、陽子線治療や重粒子線治療を肝がん・再発した大腸がんなどに使う場合には、公的医療保険が適用されることになりました(どのようながんに公的医療保険が適用されるかは、個別にチェックすることをお勧めします)。しかし、他の陽子線治療や重粒子線治療、その他の先進医療が保険適用の対象になったわけではないので、先進医療特約を利用する価値はあります。
まとめ
高額療養費のように、社会保険で一定額以上が保障される場合は、個人のリスクが限定されます。その場合は、上記(1)のように「民間保険に加入する必要はない」という選択が基本になります。その上で「限定されたリスクではあるものの、それをカバーするために民間医療保険に入る」という選択肢(2-1)もありますが、絶対必要(マスト)ではないといえます。
また、(2-2)の選択肢は「民間保険の仕組みを別の目的に使う」という応用で、実際、個室費用を支払うために医療保険を使っている人もいます。これは主に、経済的に余裕のある人が行っている選択肢です。
(2-3)の選択肢も「公的医療保険の対象外となるもの」という点で(2-2)と似ていますが、これは「先進医療」という医療技術の費用のために、民間医療保険に入る方法です。
なお、(2)で紹介した選択肢はあくまで応用的な方法です。基本的には社会保険の高額療養費制度があるので、必ずしも民間医療保険が必要であるとはいえないと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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