救急車の出動には1回「4万5000円」かかる!?有料化がすすむ背景とは?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月8日 23時20分
近年、救急車の利用に関して議論が活発化しています。中でもとくに注目される論点は、救急車の出動一回あたりにかかる費用と、有料化の可能性です。 本記事では、救急車の利用にかかる実際の費用や有料化が検討される背景、社会に与える影響について考察します。
救急車の出動に必要なコスト
救急車の出動にかかる費用は、一回あたりおよそ4万5000円にものぼるといわれているようです。この金額には、人件費、燃料費、車両の維持費など、さまざまな経費が含まれています。
現在、この費用は税金によって賄われており、行政サービスの一環として行われていることから、利用者は直接料金を支払わなくても救急車を利用できます。しかし、この状況が今後も続くかどうかは不透明といえます。
救急車利用の現状と課題
総務省消防庁が発表する「令和5年版 救急救助の現況 救急編」によると、令和4年度の救急出動件数は約723万件、搬送人員は約622万人と、過去最高であることが分かりました。この数字は、近年右肩上がりで増加し続けています。
同データでは、救急車で搬送される患者のうち、約半数が入院する必要がない軽症であることが分かっています。緊急性の高い重症患者のために確保されるべき救急体制が、必ずしも適切に利用されていないことを示すものといえるでしょう。
救急出動件数の増加は、救急医療全体に大きな負担をかけており、救急隊員の過重労働や、病院の救急受け入れ態勢のひっ迫など、さまざまな問題を引き起こしています。
救急車有料化の背景
総務省消防庁の「令和5年消防白書」によると、消防関連予算は年間2兆円以上であるようです。費用削減の必要性が高まってきた中で、救急車の有料化は、この膨大な予算を削減するための対策として検討され始めした。
救急車を有料化することで、軽症での利用や、タクシー代わりの利用などの不適切な利用をおさえて救急医療の効率化を図り、緊急を要する患者の利用を確保することが目的です。
日本では現在、救急車の利用は原則無料ですが、中国やアメリカなどではすでに有料化されています。国際的な基準に合わせる形で、日本でも有料化の検討が進められた背景もあるでしょう。
一部地域で取り入れられている選定療養費
日本では三重県松阪市や茨城県において、特定の条件下で救急車を利用した場合に費用が発生する仕組みが導入されました。
松阪市では2024年6月から、救急車で病院に運ばれたものの入院に至らなかった場合、7700円(税込み)の選定療養費が徴収されることになっています。
この制度は軽症患者が救急車を利用することによって、本来の救急医療体制が圧迫されることを防ぐために導入されました。入院した場合や紹介状を持参した場合、災害や交通事故による場合、医師の判断によるなどの場合は対象外になっています。
また、茨城県でも2024年12月から、緊急性が認められなかった場合に選定療養費が徴収されることになりました。料金は医療機関によって異なり、1100円~1万3200円まで幅があります。
こうした新しい制度は、住民にとっては経済的な負担となる一方で、適切な救急制度の利用促進につながるでしょう。しかし、軽症か重症かを判断することが難しく、救急車を呼ぶことをためらう人が増える懸念があります。
救急医療体制を維持するためには、救急車の適切な利用が必要
救急車の有料化は、日本の医療に大きな変革をもたらす可能性のある課題です。財政的な観点だけでなく、医療の質の維持、公平性、生命や健康を守るという救急医療の本質的な役割を踏まえたうえでの慎重な議論が必要といえます。
救急車の有料化問題は医療や財政の問題にとどまらず、社会のあり方そのものを問う重要な課題であり、今後もさまざまな立場からの意見を集め、最適な解決策を見つける必要があるでしょう。
出典
総務省消防庁 令和5年版 救急救助の現況 救急編 (3,15,16ページ)
総務省消防庁 令和5年版 消防白書(66ページ)
茨城県 本件の救急医療の現状及び2024年12月2日(月曜日)からの救急搬送における選定療養費の徴収開始について
松阪市 三基幹病院における選定療養費について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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