母が軽度の「認知症」に。母名義の口座に100万円ありますが、銀行に知られると「口座凍結」されますか? 自分の口座にお金を移して管理しても問題ないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月11日 5時10分
認知症などを患った場合、本人の判断能力低下を理由に、銀行口座が凍結される可能性があります。銀行口座が凍結されるとその口座内の預金を自由に引き出せなくなるため、事前の備えが必要ですが、別の口座にお金を移すことに対しては税金の関係で注意が必要です。 本記事では、銀行口座の凍結の対策として別の口座にお金を移すときの注意点や、お金を移す以外の備え方について解説します。
認知症になると銀行口座が凍結されるのは本当?
全国銀行協会が2021年2月18日に公表したガイドラインでは、認知症などによって判断能力が低下または喪失すると、「銀行としてより厳格な対応を行うケースや、取引のリスクが大きいと判断された場合に取引を謝絶するケースはあり得る」とされており、判断能力の低下などを理由として口座が凍結されてしまう可能性はあります。
判断能力が低下したことで、詐欺などによって口座契約者が財産を失わないように備えるための対応ですが、一方で口座が凍結されると、預金の出し入れなどができなくなり、さまざまな不都合が生じます。
口座の預金を移すことで贈与税が発生する可能性がある
口座凍結時に生じる不都合の一例として、生活費が引き出せなくなり立て替えが発生することで、家族に経済的負担が生じることがあげられます。そうならないように、事前に預金を別の口座に移すことが対策として考えられますが、注意も必要です。
認知症の母親を助けるため、という理由であっても、銀行の預金は基本的に口座契約者本人の資産であり、その資産を別名義の口座に移すということは贈与に該当します。暦年課税の場合、1年間で110万円まで非課税枠があるので、その範囲であれば贈与税がかかりませんが、それを超えた額になると、贈与を受けた人が贈与税を申告・納付する必要があります。
口座が凍結される前にできる3つの対策
口座が凍結される前にできる対策は、贈与以外にも次のようなものが考えられます。いずれも口座が凍結されるような状況になった後も、口座内の預金を一定の使用用途の範囲で利用できます。
成年後見制度
成年後見制度とは、本人が認知症などで判断能力を失った後、家庭裁判所によって選任された後見人が本人に代わって財産管理などを行う制度です。
客観的に後見人が選任されるため、公平さが期待できる一方、家族以外の第三者が選任されることが多いなど本人の意思が反映されにくい場合があったり、手続きに時間がかかったりする点に注意が必要です。また、弁護士や司法書士などが後見人となる場合は報酬が発生します。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人の判断能力が不十分になった場合に備えて、判断能力があるうちに後見人を選任して契約することで、本人の判断能力低下後に後見人が財産管理などを行う制度です。
成年後見人に比べて、本人が信頼できる人を後見人に選べるので本人の意思が尊重されやすいのがメリットです。しかし、効力を発生させるには家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されることが必要です。通常は弁護士や司法書士などがその役割を担うため、報酬が発生します。
家族信託
家族信託は、信頼できる家族や親族などの受託者に、不動産や預金などの財産を託しておくことで、受託者が信託契約に基づいて財産を管理・処分することができる制度です。
柔軟な資産管理が期待できる一方、信託契約書の作成などの手続きもやや複雑なため、専門家への相談が必要になる可能性が高く、任意後見制度と同じく、手間や費用がかかることが考えられます。
口座が凍結されてしまう前に最適な方法で備えよう
認知症などにより判断能力が低下した場合、本人の資産を守るために銀行が口座を凍結する可能性があります。お金を引き出せなくなり、家族に経済的負担が発生するなどの不都合が考えられますが、それを避けるために別の口座に預金を移すと、金額によっては贈与税の納付が必要です。
別口座に預金を移す以外の方法も検討し、口座が凍結されてしまう前に、自分や家族にとって最適な備え方を考えましょう。
出典
一般社団法人全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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