長女が子どもを連れて離婚……。「養育費」をもらっていないのですが、これって普通ですか? 私たちも家計に余裕がないのであまり援助できません
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月13日 9時10分
長女が子連れ離婚、実家に戻ってきたというAさん。元夫と関係を持ちたくないと養育費をもらっていないのですが、仕事がとても忙しそう……。「これって今は普通のことなのでしょうか」とのご質問です。また、自分たちも家計に余裕がないので、娘家族に対し金銭的な援助は今後もあまりできないことも不安だそうです。
みんな養育費をもらえているのか?
離婚する際は、財産分与や年金分割、慰謝料、そして養育費など、お金に関わるさまざまな頭の痛い問題を整理・解決しないといけません。しかし、顔も合わせたくない相手だと、考えるだけで気がめいってしまいます。離婚する人はみんな、養育費を取り決めているのでしょうか?
厚生労働省が実施した、ひとり親世帯に関する調査結果(※1)によると、離婚後の母子世帯では、養育費を取り決めている割合が46.7%、取り決めていない割合が51.2%と、取り決めていない世帯のほうが多くなっています。
また、離婚方法で見ると、協議離婚の場合は取り決めているのが43.6%であるのに対し、その他の離婚(調停離婚、審判離婚・裁判離婚)だと81.2%と圧倒的に多くなります。
養育費は、たとえ離婚しても親として支払義務を負うので、当事者だけで決めた協議離婚より、第三者が関わる調停離婚等のほうが、公正証書などでの取り決めまでしっかり実行していると考えられます。
ただし、母子世帯で実際に養育費を継続的に受け取れているのは3割弱で、約57%が養育費を受けたことがない状態です。裁判所等で取り決めても、実態は相当の未払い率だということです。なお、離婚時に取り決めていなくても、離婚後にあらためて取り決めることもできます(※2)。
養育費をもらわない人もいる
養育費支払いは義務にもかかわらず、離婚時に取り決めしない割合が以外に高かったのはなぜなのでしょうか? 同じ調査の中で理由も聞いています。表1では母子・父子世帯いずれも上位5つを抜き出しました。
母子世帯では長女同様に「相手と関わりたくない」が最も多くなっていますね。父子世帯でも上位です。母子世帯では「暴力を受けた」など、お金よりもまず相手から距離を置きたい切実さがより強く表れています。
一方、父子世帯の特徴は「自分の収入等で経済的に問題がない」です。母子世帯との決定的な違いといえます。
経済力の格差
母子世帯の年収は表2のとおりです(※1)。
平均値、中央値ともに就労収入は200万円台前半であり、同居親族のいない場合の家計はかなり厳しいといえます。長女は実家に戻りましたが、親からの支援が期待できないため、やりくりが大変な状況といえます。
その点、父子世帯の金額を見ると、「経済的に問題はない」と養育費を求めない選択もあり得るのが理解できます。
養育費の平均額と算定基準
令和3年では、母子世帯で子ひとりの場合に、元夫から受け取る養育費の平均額は月4万468円、子ふたりの場合月5万7954円となっています。同様に、父子世帯での受取額はそれぞれ2万2857円、2万8777円です(※1)。
母子世帯の金額を、養育費を決める際の標準算定方式として最高裁判所が示している、「算定表」と突き合わせてみます(※3)。
子ひとり(0~14歳)の際に、長女と離婚相手の年収が「表2の中央値」とした場合、相手の年収が430万円、長女が240万円となり、これを算定表に当てはめると養育費は月2~4万円が目安となりました。平均収入の金額を当てはめると、月4~6万円に上がります。
長女が受け取るとしたら、標準的にはやはり月4万円前後が期待できるということです。
最後に
もう関わりたくない、というAさんの長女の心境も分かります。しかし、毎月4万円だとすると年間48万円、仮に子どもが小学校から大学卒業まで16年間養育費を受け取るなら、総額768万円です。
当面の家計は必死に働けば大丈夫でも、子どもにかかる支出はしだいに大きくなります。しばらくして落ち着いたら、気が重いかもしれませんが家庭裁判所で公正証書を作成するなど、養育費を取り決めておくことを勧めてみてはいかがでしょうか。
日常生活にそのお金を使わなくても、今後の学費として蓄えておくことで、お孫さんの将来の選択肢を増やすことができるはずです。
出典
(※1)厚生労働省 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要
(※2)法務省 離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~ 養育費
(※3)最高裁判所 平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について 標準算定方式・算定表(令和元年版)
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
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