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106万円の壁「撤廃」が注目されていますが、私たちの「老後」や「家計」にどのような影響を与えるのでしょうか? 年金制度の改正の狙いと、安心して暮らすためのヒントを紹介します。

ファイナンシャルフィールド / 2025年1月16日 22時20分

106万円の壁「撤廃」が注目されていますが、私たちの「老後」や「家計」にどのような影響を与えるのでしょうか? 年金制度の改正の狙いと、安心して暮らすためのヒントを紹介します。

現在話題になっている「106万円の壁撤廃」は、所得代替率を引き上げることが目的になっています。要するに、現役世代が老後に年金暮らしになっても、現役の頃と比べてそれほど大きく収入が減らないようにするための、ひとつの方策です。   国の政策は、「年金制度改正に向けた動き」と解釈すれば分かりやすいですが、個別具体的に出てくる政策が、年金制度の改正とどのようにつながっているかは、因果関係が見えにくいかもしれません。   そこで今回は、老後の家計と絡めて、国の用意する政策と年金制度改正がどのように関わっているかについて探っていきます。

所得代替率って何?

まず、所得代替率とは何かを説明します。
 
簡単にいうと、現役男子の平均手取り額に対して、もらえる年金がどれぐらいかを示す指標のことです。モデル世帯は下記のように夫婦2人の専業主婦(主夫)世帯ですが、共働き世帯が増えている現在も、このような世帯モデルを軸に年金制度は組み立てられています。
 

筆者作成
 
2024年の7月に厚生労働省が公表した「令和6年 財政検証結果の概要」によると、2024年度の所得代替率は61.2%となっています。金額の内訳を見ると、夫婦2人の基礎年金が13万4000円、夫の厚生年金が9万2000円で、もらえる年金の合計が22万6000円、現役男子の平均手取り収入額が37万円です。
 
要は2024年度の場合、現役世代の手取りの約6割が高齢者の年金として支給されているということです。
 

現役世代の所得代替率を上げるために106万円の壁が撤廃される

厚生労働省は「過去30年投影ケース(今後、過去30年のような経済情勢で推移した場合)」における試算で、年金制度について何も改正をしない(現行制度をそのまま続ける)とすると、2057年度には所得代替率が50.4%に低下すると予測しています。
 
これは、現役世代のもらえる年金が将来減る可能性があることを示唆しています。政府はこれを改善するためにさまざまな策を用いて、所得代替率の低下を抑制、もしくは、向上させようとしています。
 
この理屈で考えれば、106万円の壁撤廃の目的はおのずと見えてきます。パート主婦(主夫)のうち厚生年金に加入していない人にも新たに加入してもらうことで、現役世代の所得代替率を向上させることが狙いです。
 
これを老後の生活に絡めて考えてみましょう。パート主婦(主夫)のうち厚生年金に加入していない人が、新たに加入するわけですから、その人は将来もらえる年金が増え、老後の生活の足しになります。
 

年金で足りない部分に対し、どのような政策的後押しがあるのか

「106万円の壁を撤廃し、厚生年金加入者を増やすことで、所得代替率を高める」とはいうものの、所得代替率が向上したとしても微々たるものと考えられ、年金だけでそれまでの暮らしを維持することは難しいかもしれません。
 
そのように考えると、足りない部分は家計面でどのように工夫すればよいでしょうか。収入、支出、資産、負債の4つで考えてみましょう。
 
まず「収入」の面においては、単純に収入を増やす工夫をすればよいわけです。国の政策としては、「最低賃金を1500円に引き上げる」「企業に賃上げを促す(賃上げ税制や価格転嫁対策など)」「兼業や副業の奨励」「リスキリング(社会人が新たな知識やスキルを習得する学び直し)」などが用意されています。
 
このような政策が実現され、また、労働者が活用すれば、おのずと収入が増え、将来もらえる年金も増える可能性が高まります。
 
「支出」の面では、例えば、「所得控除の上手な活用」が挙げられるでしょう。寄附金控除を活用した「ふるさと納税」は人気のある控除項目ですが、ほかにも「生命保険料等控除の拡充」が、2025年度に向けた税制改正要望として、金融庁から出されています。
 
また、最近は「103万円の壁を178万円に引き上げる」という国民民主党の案が話題ですが、政策の実現性は別として、仮にこれが実現されれば基礎控除が大幅に引き上げられるため、減税につながります。
 
これらの政策や制度は、可処分所得(手取り)を増やすことに寄与するため、家計簿で見れば収入から支出を差し引いた金額(純利益)の増加につながり、将来に向けた資産形成に寄与する可能性があるといえるでしょう。
 
このように「資産」が増えれば、貯蓄や投資にお金を回すことができます。国の政策としてはiDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額の引き上げや、NISA(少額投資非課税制度)の利便性向上などが今後の税制改正として期待されています。
 
そのほかにも、「財形年金貯蓄制度」を活用したり、先述の生命保険料等控除の拡充を利用し、貯蓄性のある生命保険や個人年金保険に加入したりすることで、将来に向けた資産形成につなげる、という方法もあるかもしれません。
 
さらに、金融庁から2025年の税制改正要望として出されている「結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充」などは、親や祖父母から財産を移転しやすくするための政策で、子や孫世代にとっては将来に向けた資産形成に寄与すると考えられます。
 
最後に「負債」ですが、いわゆる住宅ローン減税が代表的です。少子化対策や子育て支援策として、子育て世帯などを対象に住宅ローン控除の拡充やリフォーム税制の拡充が示されています。
 
これらはローンなどの返済支出を減らすことにつながるため、資産とあわせて考えると、資産から負債を差し引いた純資産、つまり、将来における家計の体力を強化する政策といえます。
 

まとめ

将来、現役世代がもらえる年金はおそらく今の高齢者と比べると減るでしょう。これを見越し、国はさまざまな政策を打ち出しています。
 
私たちは年金に関するニュースが流れると不満を述べがちです。気持ちとしては分かりますが、仮にもらえる年金が将来減るなら、ほかにどのような方法で家計をよくしていけばよいかを、自分なりに考えるほうが有意義ではないでしょうか。
 

出典

厚生労働省 令和6(2024)年財政検証結果の概要
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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