子どもが「自転車」の運転中に事故の「加害者」となってしまったら、賠償金を請求されることはあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年2月1日 10時20分
自転車事故の増加傾向に伴い、2024年11月から道路交通法が改正され、スマートフォン等の「ながら運転」に対する罰則の強化や、「酒気帯び運転及びほう助」(運転者のみならず、酒類や自転車の提供者、同乗者)も罰則の対象となることとなりました。 本記事では、自転車の運転中に事故を起こし、加害者となってしまった場合に発生する責任や損害賠償の事例などについて確認していきます。
もしも、自転車運転中に事故加害者となってしまったら?
前述のとおり、道路交通法の改正により自転車運転の際の違反行為に対して罰則の強化が図られています。
万が一、事故加害者となってしまった場合、発生する可能性のある責任の1つ目は「刑事上」の責任です。
自転車事故における刑事上の責任とは、運転者がその違反行為によって事故を引き起こし、結果として他人に重大な被害を与えた場合に刑事罰を受ける責任のことです。例えば、重大な過失により他人を死傷させてしまった場合は「重過失致死傷罪」に問われる場合があります。刑事罰は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
2つ目の責任は、「民事上」の責任です。
これは、自転車事故によって被害者に与えた精神的・財産的損害を賠償する責任のことを指します。自転車事故で被害者に損害を与えた場合、一般的に賠償金や慰謝料の支払いが必要になります。
被害者のけがの状況や後遺症の有無などによって異なりますが、損害賠償金の内訳として以下のようなものが想定されます。
(1)治療費、入院費:治療や入院にかかった費用
(2)慰謝料:入院・通院・後遺障害に対する慰謝料、遺族に対する死亡慰謝料など、事故による精神的苦痛に対する賠償
(3)休業損害・逸失利益:事故によって休業となった損害や、事故がなければ本来得られていたはずの将来の収入に対する賠償
未成年者が加害者になる高額な賠償事例も多い
自転車事故でも、被害の状況によっては数千万円の損害賠償金となる場合があります。この賠償責任は、未成年といえども責任を免れることはできません。過去の判例等で高額な賠償額となった事例を見てみると、以下のようなものがあります。
(1)損害賠償額9521万円(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決認容額)
男子小学生が夜間、帰宅途中に自転車で走行中に、歩行していた女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。
(2)損害賠償額9266万円(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決認容額)
男子高校生が昼間、自転車横断帯でない歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性(24歳)と衝突。男性は言語機能の喪失等の重大な障害を負った。
(3)損害賠償金6779万円(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決認容額)
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂からスピードを落とさないまま交差点に進入し、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突した。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
※上記の事例は、一般社団法人日本損害保険協会「自転車事故と保険」より引用
未成年者が加害者となった場合、親の損害賠償責任は?
民法712条では、「未成年者など責任能力を有していない場合、他人に損害を加えた行為について賠償の責任を負わない」と規定されています。そして、民法714条では、「責任無能力者が責任を負わない場合、親など責任無能力者を監督する法定の監督義務者が賠償責任を負う」とされています。
一般的に、責任能力(自分の行っている行為の意味を理解できる)が認められる年齢は12歳程度とされます。つまり、おおむね小学生までの子どもが加害者となった場合には、その子ども自身は賠償責任を負わないが、その監督義務者である親権者(主に親)が賠償責任を負うこととなります。それ以降、子どもが13歳以上(責任能力を有する)の場合でも、親の監督義務に違反があったと評価することが多く、子どもがおおむね14歳ごろまでは親権者に賠償責任が生じるケースがあります(民法709条)。さらに、子どもが15歳以上の場合には、親の監督責任が否定され、子どものみが賠償責任を負う傾向となります。
まとめ
現在は多くの地方公共団体の条例により、自転車損害賠償責任保険等(個人賠償責任保険)への加入が義務化されています。普段より、保険の加入状況や補償の内容などを確認しておくとともに、万が一の事故の際に慌てることのないよう保険会社等の連絡先も確認しておきましょう。民事上の被害者と行う損害賠償金などの示談交渉は、通常は保険会社が代わりに行ってくれるケースが多いようです。
また、事故により運転者自身がけがを負った場合の補償については、個人賠償責任保険ではなく、傷害保険などで対応することとなります。個人賠償責任保険と傷害保険の両方がセットになった保険などもありますので、万が一に備えて検討してみてはいかがでしょうか。
出典
一般社団法人日本損害保険協会 自転車事故と保険
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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