突然、大家さんから家賃の「値上げ」通告……、これってアリなの? 法的には拒否できるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年2月4日 5時0分
家賃の値上げ通告がなされるタイミングは、通常、契約の更新の時期が多いようです。 要するに、「あなたはこれ以降もこの部屋に住み続けることはできますが、家賃はさまざまな状況を考慮し、○○円値上げします。」ということです。 結論をいえば、借地借家法という法律において、一定の要件を備えた場合には、契約当事者(双方)から家賃の増減を請求する権利が認められています。
家賃の増減を請求できる要件
契約当事者が家賃の増減を請求できる権利を、借賃増減額請求権といいます。以下のいずれかに該当した場合、当事者は契約の条件に関わらず、相手方に請求の意思表示が到達してから将来に向かって[過去に遡及(そきゅう)しない]家賃の増減を請求することができます。
(1)不動産に対する租税その他の負担の増減
(2)不動産の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動
(3)近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった
通常、契約条件の変更については当事者双方の合意が必要となりますが、借賃増減額請求権は借地借家法に規定する上記の要件に該当すれば、相手方の同意がなくても効力が発生します(大家さんからの値上げ通告は有効)。
また、「契約の条件に関わらず」とのことなので、例えば契約書に「3年ごとの更新の際に家賃の増減を協議する」と規定されていても、その時期に関わらず随時(大家さんの考えるタイミングで)請求することができます。
ただし、「一定の期間借賃を増額しない旨の特約」がある場合には、その期間は増額できません(逆に、一定期間、減額しない旨の特約は認められていません)。
上記3つの要件の事例としては、例えば、固定資産税の負担の増減、リノベーションなどの大規模改修による価値の向上、経年劣化など物件の劣化による価値の低減、新しい商業施設や交通インフラの整備などによる周辺環境の変化、賃料相場の大幅な変化、災害などによる被害などが挙げられます。
どうしても納得できず紛争となってしまったら
家賃の値上げについて、どうしても納得できず大家さんとの協議が調わない場合には、最終的に訴訟を提起することもあり得ます。その場合、訴訟提起の前に調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。調停においても解決できない場合は裁判となります。
(1)大家さん(賃貸人)からの増額請求の場合
増額を正当とする確定判決までは、賃借人は相当と認める額の家賃を支払えば債務不履行にはなりません。その後、裁判が確定すると不足額(増額分)に年10%の利息を付して支払う必要があります(超過の場合には年利3%の利息を付して返還)。
(2)賃借人からの減額請求の場合
同じく、減額を正当とする裁判の確定までは、大家さんは相当と認める額を請求することができます。その後、裁判が確定すると超過額(減額分)に年10%の利息を付して返還しなければなりません(不足の場合には年利3%の利息を付して支払い)。
家賃の値上げ通告を受け取った場合の対処
最近は、あらゆる物の値段が上がっているインフレの傾向が強まっています。不動産価格自体の上昇が、家賃相場にも大きく影響していることは確かです。
家賃の値上げ通告を受け取った場合にも、極力冷静に対処し、賃借人自らが増額となる理由やその妥当性について確認する姿勢が必要となるでしょう。そのうえで、大家さんと交渉する(相談する)ことをおすすめいたします。
前述のとおり、賃料増減額請求権は相手方の同意は必要なく、一方的な権利の行使ですが、全ての交渉を妨げるものではありません。
交渉の際には、「この部屋をとても気に入っているのでできるかぎり長く住みたい」「直近の更新料を値下げしてほしい」などの率直な意見も含めて相談してみましょう。当事者双方が可能なかぎり納得したうえで、新たな家賃が設定されることが理想といえます。
まとめ
突然、家賃の値上げ通告を受け取った場合には、驚きや諦めなどさまざまな感情が先に立つかもしれません。賃料増減額請求権は、名称のとおり、逆に賃借人側から家賃の減額を請求する権利でもあります。家賃とは将来的にも変わることなく一定額のものである、といった楽観的な考えは一掃すべきでしょう。
また、新家賃にどうしても納得いかない場合には、紛争を避けて、更新料を払う前に他の物件に引っ越すことも有効な選択肢となる場合があります。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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