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先月、70歳の父が亡くなりました。「専業主婦」として70歳まで過ごしてきた母が受け取る年金額は、現在の半分程度に減ってしまうのでしょうか?

ファイナンシャルフィールド / 2025年2月4日 5時40分

先月、70歳の父が亡くなりました。「専業主婦」として70歳まで過ごしてきた母が受け取る年金額は、現在の半分程度に減ってしまうのでしょうか?

年金生活をしていた夫婦の一方が亡くなった場合、その後の家計の面について、心配になる方もいるでしょう。本記事では、残された配偶者の年金がどうなるのかを解説します。

要件を満たせばもらえる遺族年金

配偶者が亡くなった場合、これまで夫婦で年金を受給されていた場合には、配偶者が受け取っていた年金は受給できなくなります。そのため、「世帯としての年金受給額はかなり減るのでは」と心配になってしまう方もいるかもしれません。
 
しかし、日本の年金制度には遺族が受給できる「遺族年金」があります。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあり、一定の要件を満たせば受給することができます。受給要件は遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なりますが、それぞれの要件を満たせば、両方を受給することもできます。
 

遺族基礎年金を受給するための要件とは?

遺族と亡くなった人が以下の要件を満たしていれば、遺族は遺族基礎年金を受給することができます。
 
■遺族についての要件(受給対象者)

●原則として、亡くなった人に生計を維持されていた「子どものいる配偶者」または「子ども※」

※子どもとは、18歳到達年度の3月31日までの子ども(障害年金1級・2級を受給している場合は20歳未満の子ども)
 
ただし、子どものいる配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子どもと生計を同じくする父または母がいる間は、子どもには遺族基礎年金は支給されません。
 
■亡くなった人についての要件
亡くなった人が、図表1のいずれかの要件に該当していること。
 
【図表1】

要件 補足
・国民年金の被保険者である間に死亡した ・死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。
ただし、死亡日が2026年3月末日までのときは、亡くなった人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、
日本国内に住所を有していた
・老齢基礎年金の受給権者であった 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あること
・老齢基礎年金の受給資格を満たした人

出典)日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
 

遺族厚生年金を受給するための要件とは?

遺族と亡くなった人が以下の要件を満たしていれば、残された遺族は遺族厚生年金を受給することができます。
 
■遺族についての要件(受給対象者)
亡くなった人に生計を維持されていた図表2の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。
 
【図表2】

図表2

出典)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
 
■亡くなった人についての要件
亡くなった人が、図表3のいずれかの要件に該当していること。
 
【図表3】

要件 補足
・厚生年金の被保険者の期間に死亡した場合 死亡日前日に、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上ある。ただし、死亡日が2026年3月末日までのときは、亡くなった人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがにより、
初診日から5年以内に死亡した場合
・障害厚生(共済)年金1級・2級の受給権者が死亡した場合
・老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合 保険料納付済期間と保険料免除期間、合算対象期間の合計が25年以上あることが必要
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡した場合

出典)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
 

もらえる遺族年金額

もらえる年金額も、遺族基礎年金と遺族厚生年金では異なります。
 

遺族基礎年金の受給額

遺族基礎年金の受給対象者が受け取れる年金額(令和6年4月分から)は、以下となります。
 
■子どものいる配偶者が受け取る場合

昭和31年4月2日以後生まれの人 81万6000円 + 子どもの加算額
昭和31年4月1日以前生まれの人 81万3700円 + 子どもの加算額

■子どもが受け取る場合
次の金額を子どもの数で割った額が、1人当たりの受給額となります。

81万6000円+2人目以降の子どもの加算額

なお、子どもの加算額については以下のとおりです。

●1人目および2人目の子どもの加算額:各23万4800円
●3人目以降の子どもの加算額:各7万8300円

 

遺族厚生年金の受給額

遺族厚生年金は、遺族基礎年金のような定額ではなく、亡くなった人が受け取っていた(または受け取ることができた)老齢厚生年金額によって異なってきます。遺族が受け取ることができるのは、亡くなった人が受け取っていた報酬比例部分の4分の3の年金額となります。
 
なお、亡くなった人が図表4のいずれかの要件に該当する遺族厚生年金の場合は、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満でも「300月」と見なしたうえで計算されます。
 
【図表4】

要件
・厚生年金の被保険者の期間に死亡した場合
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがにより、初診日から5年以内に死亡した場合
・障害厚生(共済)年金1級・2級の受給権者が死亡した場合

出典)日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
 
また、65歳以上で老齢厚生年金を受け取っている人が遺族厚生年金を受け取る場合、その額は図表5のAとBを比較し、いずれか高いほうの額となります。
 
【図表5】

図表5

出典)日本年金機構「2つ以上の年金を受け取れる方へ受け取る年金を選択する手続きのご案内」
 

年金は「1人1年金」が原則だが、特例もある

公的年金には支給理由に「老齢」「障害」「遺族」といった異なる3つがありますが、2つ以上の理由に基づいて年金を受けられるようになった場合は、原則としていずれか1つの年金を選択することとなっています。
 
ただし、65歳以降は特例的に、理由の異なる2つ以上の年金を受けられる場合があります。
 

65歳以降に老齢基礎年金を受給している人が、遺族基礎(厚生)年金を受給できる場合

65歳以降に老齢基礎年金を受給している人が、遺族基礎(厚生)年金を受給できるようになった場合、図表6のどちらかの組み合わせを選択することになります。
 
【図表6】

図表6

出典)日本年金機構「2つ以上の年金を受け取れる方へ 受け取る年金を選択する手続きのご案内」
 

65歳以降に老齢厚生年金を受給している人が、遺族厚生年金を受給できる場合

65歳以降に老齢厚生年金を受給している人が、遺族厚生年金を受給できるようになった場合、遺族厚生年金の額が自分の老齢厚生年金より高い場合に、その差額を受け取ることができます。一方で、自分の老齢厚生年金額のほうが高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止となります。
 
【図表7】

図表7

出典)日本年金機構「2つ以上の年金を受け取れる方へ 受け取る年金を選択する手続きのご案内」
 

遺族年金と老齢基礎年金の両方を受給できる?

ここまでは、遺族年金の仕組み・受け取れる額などを見てきました。では、例えば共に70歳の夫婦のうち夫が亡くなったとき、専業主婦の妻は、遺族年金と自分の老齢基礎年金の両方を受給できるのでしょうか? この疑問については、夫の年金の加入状況によって、遺族年金が受け取れるかどうかが異なります。
 

夫が国民年金のみに加入していた場合

子どもがいなければ妻は遺族基礎年金を受給できないため、この場合、受け取れるのは自分の老齢基礎年金のみとなります。そのため、例えば夫も妻もそれぞれが同額程度の老齢年金を受給していた場合などは、これまでと比較して年金収入は半分程度になってしまうでしょう。
 

夫が厚生年金に加入していた場合

「遺族基礎年金+遺族厚生年金」と「老齢基礎年金+遺族厚生年金」の額を比較して選択することができます。どちらか多い額の組み合わせを受給するとよいでしょう。ただし、これまで夫婦ともに得ていた2人分の年金収入よりは少なくなるでしょう。
 

まとめ

配偶者が亡くなった場合、年金の加入状況や家族状況によって遺族年金をもらえるかどうかは異なってきます。
 
また、遺族年金をもらえるにしても、それまで夫婦それぞれが年金をもらっていた場合には、年金収入が減少してしまうのは避けられません。そのような場合になっても慌てないために、年金事務所などであらかじめ受給要件や金額をしっかり確認して準備しておきましょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 2つ以上の年金を受け取れる方へ 受け取る年金を選択する手続きのご案内
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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