予想の難しい為替相場。今後の為替を考えるうえで、一つの判断基準となるのは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年4月5日 11時0分
2018年のドル円は、一年を通じて10円以下のレンジ内に収まり、値動きは非常に小さなものとなりました。 しかし、2019年は一転して、年明け早々に一瞬で4円程度も円高に振れるなど、波乱の幕開けとなっています。今後の為替はどのように見ればいいのでしょうか?
予想の難しい為替相場
金融のプロと言われる人たちがドル円の年間予想を発表していますが、それらの内容にはかなりの開きが見られます。
これはある意味、仕方のないことだと考えられます。為替に影響を与える要素は限りなく存在します。それぞれの要素の今後を予想し、さらに、それらの影響度合いを判断するというのは、まさに神業でもあるためです。
今であれば、米中摩擦の行方を占い、米国の利上げのペースを予想しつつ、日本の消費増税の影響を測り、突発的な地政学リスクも点検したうえで、さらにさまざまなファクターを読み込む必要があるのです。
そのように精緻な為替予想は難しいため、長期的な予想であれば、一種の肌感覚が大事になります。
ハンバーガーやディズニーランドの入場料で考えると
英国の経済誌「エコノミスト」が、年に2回「ビッグマック指数」というものを発表しています。
これは、世界中に展開しているマクドナルドのビッグマックの価格を、国別に調べたものです。同様の品質であるはずのビックマックの現地価格から、その国の通貨の価値や経済力を測ろうというものです。
2018年7月の調査結果では、米国での価格が5.51ドルであったのに対し、日本では390円となっていました。もし、米国と日本で同じ価格で販売されているべきだと考えるなら、ドル円の為替は70.78となるはずです。
また、米カリフォルニアのディズニーランドの料金は、2019年1月6日にまた引き上げられ、繁忙日の料金は149ドルとなりました。最も安い日の料金でも104ドルです。一方、日本のディズニーランドの1日券の料金は7400円です。
米国でも日本でも、ディズニーファンは同じだけの金額を払うべきだと考えるなら、米国の最低料金である104ドルを使って計算しても、ドル円の為替は71.15が適正だということになります。
さらに、国民の最低水準の生活を保障するための最低賃金制度を見てみます。米国では、連邦法で定める7.25ドルか、州や市が独自に定める最低賃金のどちらか高いほうが適用されます。
州レベルで見た場合、ワシントンでは一時間あたり12ドル、ニューヨークでは11.1ドル、カリフォルニアでは12ドルとなっています。一方、日本では最も高い東京都が985円です。
ニューヨーク州では地域によって11.1ドルよりも高い最低賃金が設定されていますが、11.1ドルと比べても、ドル円の為替が88.74でなければ東京都民の最低賃金はニューヨークよりもかなり低いことになります。
OECDやBISが示す購買力平価とは?
もちろんこれらの例のみで、ドルに対して円が割安だと結論付けるのは乱暴過ぎます。
民間の企業には展開地域ごとに価格戦略があるはずですし、商品やサービス自体にも少なからず違いがあります。また、スターバックスのドリップコーヒーなどのように、現在の為替なら米国の価格のほうが日本より安く見えるような商品も、もちろんあります。
そこで役に立つのが、国連統計委員会が主導し、各国の広範囲な商品やサービスの価格を国ごとに調査したデータです。経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)などが調査に基づき、「購買力平価」と呼ばれる数値を算出しています。
購買力平価を簡単に言えば、異なる通貨を持つ二つの国において、どちらの国でも同じ内容の物やサービスが購入できるような為替の交換比率を言います。
直近のドル円の購買力平価は、IMFでは98.25円、OECDでは102.47円と算出しています。購買力平価との比較で見る限り、現在のドル円の為替水準は多少ドルが割安になっていると言えます。
最初に述べた通り、為替の水準を決める要素は無数にあるため、購買力平価に今後急速に収れんしていくという保証はありません。しかし、ある通貨が過度に割安、あるいは割高となっている状況が永続することもまた考えにくいと言えます。
長期的な為替水準を展望するなら、現状の円の割安感という肌感覚も大事にするべきだと思われます。※1/12執筆時点
執筆者:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
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