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「加賀屋」50歳の元若女将が選んだ"第2の人生" 震災からの復興への道、仕事術について聞く

東洋経済オンライン / 2024年4月26日 12時0分

数奇屋建築の名棟梁・平田雅哉が設計施工した「つるや」は敷地内に3つの源泉を持つ(写真:筆者撮影)

親の家業でもない、生まれ育った土地でもない。自分とはゆかりのない地方でも、新たな仕事にチャレンジする人たちがいる。

【写真】旅館「つるや」の6代目女将、小田絵里香さん。客室乗務員を8年務め、結婚を機に旅館業に携わるように。

福井県あわら市で明治時代から140年続く温泉旅館「つるや」を取り仕切る女将・小田絵里香さん(50)もその1人だ。絵里香さんは2022年5月、夫・小田與之彦さん(55)とともに後継者のいなかったこの老舗旅館の経営を引き継いだ。

加賀屋から独立、老舗旅館を承継

絵里香さんのことを、石川県能登で有名な日本一の旅館「加賀屋」の元若女将として知る人も少なくないだろう。相談役に退いていた夫の父である先代が経営に復帰したのを機に、夫婦で「つるや」の承継に動き、福井に拠点を移した。

旅館の建築美を伝え残していくこと、「女将」がいること、和服の装いを手放さないこと。どれも、流れに任せれば失われていくものばかり。絵里香さんは、決してたやすくはないこの世界の真ん中に、自らの人生を築きにいった。

受け継いだ旅館と共に、人生の「第2の創業」と位置付ける。女将をなりわいとして選んだ自身の道のり、必要とされる役割とは。女将・小田絵里香の半生を取材した。

北陸新幹線の「金沢・敦賀延伸ルート」開業まで1カ月半に迫った2024年元日、石川県能登地方を大地震が襲った。

加賀屋のある和倉温泉の旅館街は建物や道路、水道インフラなどが損壊し、壊滅的な被害を受けた。

一方、「芦原温泉駅」の開業準備に追われていたあわら温泉は、地震による被害はほとんどなかったものの、旅行のキャンセルが相次ぎ、新幹線延伸のPRムードは一気に冷え込んだ。

なすすべもなく立ち尽くす旅館の人たち。そんな落ち込んだ状況から一歩前進させてくれたのは、ほかならぬ和倉温泉の女将さんたちだった。

揺れが襲った瞬間何が起こったのか、宿泊客の帰路をどう確保したのか。何が必要で、どんな準備が足りていなかったのか。

震災からわずか1カ月後、あわら温泉の旅館を会場に、和倉の女将さんら3人を招いた懇談会が開かれたのだ。生々しく鮮明な震災の体験談が語られ、次の災害への備えや対応策が伝えられた。そして、あわらの女将さんに向け、こんなエールが送られた。

「新幹線開業を機にあわらを盛り上げて、能登や北陸全体の元気を引っ張ってほしい」

和倉とあわら、2つの温泉地で「女将さん」をつないだのはいうまでもなく、絵里香女将の存在だ。

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