負債1.5兆円、戦後最大の巨額破綻…死亡事故で失墜したタカタの威信
Finasee / 2023年6月26日 12時0分
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Finasee(フィナシー)
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およそ14年前、命を守るはずのエアバッグで死亡事故が起きてしまいました。事故の原因となったのは日本の大手自動車部品メーカー「タカタ」製のエアバッグとみられ、シェアが大きかったこともあり被害はアメリカなど世界中で発生します。
タカタは2017年に民事再生法の適用を申請し、事業のほとんどを外国企業に譲渡して経営破綻しました。今日はタカタが破綻した経緯と、タカタのように外国企業に買収された日本企業、また破綻した企業にあえて投資する「ディストレスト投資」について解説します。
死者続出で大規模リコール、製造業では戦後最大の破綻タカタはエアバッグの世界シェアの約2割を占める大企業でした。しかし国土交通省によると、2004年以降にタカタ製エアバッグの異常が原因とみられる事故が連続して起こります。エアバッグは高速で膨張させるため化学反応を用いガスを発生させますが、タカタ製エアバッグはそのガス発生装置が破裂し金属片が飛散する不具合が発生していました。
特に2009年5月、アメリカで最初の死亡事故が報告されると世間の目は一層タカタに注がれます。死者数は世界で少なくとも18人が報告され、世界的な大規模リコールに発展しました。2008年以降に発生したリコール台数は世界で8100万台以上に上り、タカタには巨額な費用が発生します。
タカタは2017年6月26日に民事再生法の適用を申請し、経営破綻を迎えました。破綻時の負債1兆5024億円は製造業として戦後最悪の数値です。
【戦後に経営破綻した企業の負債額ランキング】
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タカタは民事再生法の適用を申請した日、同業のキー・セイフティー・システムズ(米国)と事業譲渡に関する基本合意を締結しました。事業譲渡とは企業が持つ全てまたは一部の事業を他社へ売却することをいいます。タカタは2018年4月までにエアバッグ事業を除く全ての事業を譲渡しました。
買い手となったキー・セイフティー・システムズの親会社は中国企業です。タカタが1933年の創業から培ってきた技術は中国へ流出することになってしまいました。
経営難に陥った日本企業が外資に買われるケースは少なくありません。近年行われたものを以下にまとめました。
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通常、私たちが投資を行う際は優良企業を選別するケースが多いと思います。そう考えると、破綻した企業をわざわざ買収する意図があまりイメージできないかもしれません。
株式や債券といった有価証券は発行企業が破綻すると一般的に価値が大きく下落します。時には実態を大きく下回る水準まで値下がりすることもあるでしょう。そのような値段で取得できれば現金化できたときに大きな利益を得られるかもしれません。このように、破綻した企業(または破綻に近しい企業)にあえて投資する戦略を「ディストレスト投資」といいます。
ディストレスト投資の対象となりやすいのは債券です。一般に株式は弁済順位(※)が最も低いため、いざ法的な債務整理が始まると資金を回収できる可能性は高くありません。しかし債券は比較的弁済順位が高く、破綻企業から優先的に支払いを受けられます。投資額や破綻企業の負債状況によってはリターンを得られる可能性があるでしょう。
※弁済順位:企業が負債を返済する際の順位。一般に社債>劣後債>優先株>普通株の順に弁済される。
ディストレスト投資の例としては、ヘッジファンド「エリオット・マネジメント」(以下エリオット)がアルゼンチン国債に対して行ったものが有名です。エリオットは2001年にデフォルト(利息や元本が支払われない状態)に陥ったアルゼンチン国債を買い集め、全額の支払いを求めてアルゼンチン政府を提訴します。
訴訟は2014年まで続き、最終的にアルゼンチン政府がエリオットらに約5300億円を支払うことで和解しました。この取引でエリオットは巨額の利益を得たと考えられています。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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