1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

消滅した『SANYO』ブランド パナソニックに買収された名門企業の末路

Finasee / 2023年9月6日 18時0分

写真

Finasee(フィナシー)

バブル崩壊やリーマンショックなど、極端な金融不安が何度も襲った日本では、大企業が突然姿を消すことも珍しくありません。三洋電機もその一つです。ソニーや日立に並ぶ大手電機メーカーでしたが、同業のパナソニックに買収され現在は法人格を残すのみとなっています。

三洋電機はなぜ買収されるに至ったのでしょうか。経緯を振り返りましょう。

投資の失敗で損失2000億円

三洋電機は井植歳男(いうえ・としお)氏によって1947年に創業されました。戦前は松下電器産業(現・パナソニック)で経営に携わっていた人物で、同社の創業者である松下幸之助(まつした・こうのすけ)氏の義弟にあたることでも知られます。

戦後、松下電器が財閥指定を受けたこともあり、井植氏は独立して三洋電機を設立しました。同社はリチウムイオン電池で世界トップクラスのシェアを握り、社員10万人を擁する大企業へと成長します。

しかし半導体事業や液晶事業への投資が失敗し、経営不振に陥りました。2005年度には2000億円以上の純損失を計上しています。

運転資金確保のため大和証券グループと三井住友銀行、ゴールドマン・サックスグループの3社から3000億円の出資を受けますが、リーマンショックもあり業績の回復には至りません。2008年度には再び900億円を超える最終損失へと転落します。株価も長期株価することとなりました。

パナソニックが8100億円で買収 三洋電機は解体へ

株価下落で買収費用が低下したこともあり、パナソニックは三洋電機の子会社化に乗り出します。2009年までに出資した金融機関3社から三洋電機株式を買い取る形で連結し、2011年には完全子会社化しました。買収総額は約8100億円に上ったとみられています。

買収後、三洋電機ではリストラが進められました。2011年に家電事業の一部を中国企業へ譲渡し、2013年には回路基板事業を終了、2015年には北米テレビ事業も売却され、三洋電機の事業は相次いで縮小されます。ブランドは『Panasonic』へ統一され、『SANYO(サンヨー)』は姿を消しました。

旧本社ビルも守口市(大阪府)に売却されます。10万人いた社員もパナソニックに残ったのは9000人ほどで、ほとんどは職場を去りました。法人格こそ現在も残っていますが、三洋電機は事実上解体されてしまいます。

売上高3兆円へ 引き継いだ電池事業で目指す高成長

三洋電機の買収で電池事業を強化したパナソニックは、業界トップクラスのメーカーへと成長しています。SNEリサーチによると、2022年は車載電池で世界4位のシェアを獲得しました。中国勢と韓国勢が大部分を握るなか、日本勢では唯一上位に食い込んでいます。

【車載電池の世界シェア上位5社(2022年)】
・CATL(中国):37.0%
・LGエナジーソリューション(韓国):13.6%
・BYD(中国):13.6%
・パナソニック:7.3%
・SKオン(韓国):5.4%

出所:SNEリサーチ プレスリリース

パナソニックの電池事業を担うパナソニックエナジーは2023年6月、前年に発表した中長期経営計画を更新し、2030年度までに全体で売上高3兆円を目指す目標を明かしました。主に車載向け電池が成長をけん引する内容で、8年間で3倍超、毎年15%以上成長する計算です。

【中長期経営計画の財務目標(パナソニックエナジー)】

   2023年3月期   2031年3月期 
(目標値)
  増加率   増加率
 (年率) 
 全体 0.97兆円 3兆円超 3.1倍 15.2%  内、車載 0.65兆円 2.5兆円 3.8倍 18.2%  内、産業・民生  0.31兆円 0.6兆円 1.9倍 8.4%


出所:パナソニックエナジー 中長期戦略の進捗(しんちょく)

3兆円の売上高は業界2位のLGエナジーソリューション(2022年:約2.7兆円)を上回る水準で、パナソニックグループの中核事業である家電(くらし事業)に匹敵します。

【パナソニックHDのセグメント業績(2023年3月期)】

  売上高 営業利益  くらし事業 3兆4833億円   1031億円  オートモーティブ  1兆2975億円 162億円  コネクト 1兆1257億円 209億円  インダストリー 1兆1499億円 668億円  エナジー 9718億円 332億円  その他   1兆1994億円 377億円


出所:パナソニックホールディングス 決算短信

目標到達に向け電池の高容量化と生産能力の増強に取り組むとしていますが、顧客の開拓も重要でしょう。パナソニックは米EVメーカー大手のテスラへの依存が指摘されており、野心的な計画の達成には新しい供給先の獲得が欠かせません。

もっとも、新規顧客の獲得は順調なようです。2022年12月にEVメーカーの米ルーシッド社にリチウムイオン電池の供給契約を締結したほか、2023年4月にはゼロ・エミッション(※)トラックなどを開発するノルウェーのヘキサゴンプルス社に車載電池を供給する契約を結びました。同年6月にはマツダと将来の車載電池供給に向け協議を開始しています。

※ゼロ・エミッション:廃棄物を排出しないこと。エミッションは「排出」の意。

車載向け電池は海外勢がシェアの大半を握っています。パナソニックの電池事業は計画通り成長できるのでしょうか。注目が集まります。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください