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銀行の新規ビジネス参入は、人口減少に伴う「収益力低下」を覆せるか?

Finasee / 2023年9月21日 17時0分

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Finasee(フィナシー)

みなさんは「銀行」が提供するサービスと言うと、何を真っ先に思い浮かべますか?

ちなみに、ここで指している「銀行」とは、メガバンク、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、ゆうちょ銀行など、広義の銀行という意味です。

銀行に対する一般的なイメージ

恐らく、銀行に対するイメージは、次のようなものではないでしょうか。

「毎月お給料を振り込んでもらうところ」
「時々、ATMで現金を引き出すところ」
「とりあえず余裕資金を預けておくところ」
「たまに振込などをしてもらうところ」
「住宅ローンを組むところ」

だいたい、このような感じかと思います。

もっとも最近は、クレジットカード決済やQRコード決済が中心で、財布に現金を入れていない人が増えているので、ATMを使って現金を引き出す機会は、かつてに比べて格段に減っているかもしれません。いずれにしても普通に生活をしている人たちにとって、銀行が提供するサービスのイメージは、上記のようなものだと思います。

でも、この数年で何となくですが、銀行が行っているサービスが変わってきたような印象を受けませんか?

大幅に減った銀行の店舗数

まず、全体的に店舗数が減りました。

少々古いデータで恐縮ですが、預金を扱っている金融機関の有人店舗数がピークをつけたのが、1994年(平成6年)で合計2万8848店舗でしたが、平成最後の年になる2018年(平成30年)のそれは2万1531店舗でした。

特に、平成の30年間を通じて大幅に店舗数を減らしたのが、メガバンクでした。平成元年当時は「都市銀行」と言って、第一勧業銀行、富士銀行、住友銀行、三井銀行、太陽神戸銀行、三菱銀行、東京銀行、三和銀行、東海銀行、協和銀行、埼玉銀行、大和銀行、北海道拓殖銀行の以上13行がありました。

しかしながら、平成30年間で度重なる合併、経営破綻などがあった結果、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、りそなホールディングスという4つの金融持ち株会社に統合されました。

その結果、どうなったのかと言うと、都市銀行(今で言うメガバンク)の店舗数が激減しました。平成元年当時、13行で3412店舗あった国内有人店舗数は、平成30年時点で1772店舗になったのです。

ちなみに、平成元年と平成30年の店舗数を金融機関の業態別に見ると、

・地域銀行(地方銀行・第二地方銀行)・・・・・・1万2055店舗→1万6店舗
・信用金庫・・・・・・7754店舗→7271店舗
・信用組合・・・・・・2924店舗→1637店舗
・労働金庫・・・・・・642店舗→605店舗

以上のようになっていますから、メガバンクに比べると店舗数の減少は少なめに抑えられていることが分かります。

その中でも信用組合の店舗数は▲44%と大きめですが、これは信用組合の機関数が、平成元年の419機関から平成30年には146機関まで減ったことが主因と考えられます。

もはや身近な存在ではなくなっている

すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、特にメガバンクに口座を持っていらっしゃる人たちからすると、銀行が昔ほど身近な存在ではなくなってきたのかもしれません。

今から30年くらい前を振り返ると、どの駅前にも銀行の有人店舗があり、どの銀行に口座を持っていたとしても、ほぼ同一のサービスを受けることができました。そして銀行は、必要なお金をATMで引き出したり、あるいは店内窓口で少し大きめのお金を動かす依頼をしたりするなど、日常生活に必要なお金の出し入れに欠くことのできない、非常に身近な存在だったような気がします。

しかし、今はだいぶ様相が変わってきました。すでにメガバンクの業務は、小口の預金を集めることではありませんし、恐らく少額の取引しかしない個人は、顧客として相手にしなくなるのだと思います。

口座維持手数料の徴収は何のため?

すでにメガバンクの多くは、一定条件を満たさない顧客に対しては口座維持手数料を求めるようになりましたし、紙の通帳を発行する場合には、通帳利用料・発行料が取られるケースあります。

中でも口座維持手数料の徴収は、手数料を徴収することによって、小口の顧客をインターネット取引に置き換えるか、あるいは小口顧客を相手にする銀行への口座移転を狙ったものです。

多くのメガバンクは、ある程度の資産を保有する個人向け資産運用コンサルティングサービスや国際業務、法人業務、デジタル金融領域を主軸にし、小口顧客に対するサービスからは、徐々に撤退していくものと考えられます。

地域金融機関の課題とは……

メガバンクが小口顧客を相手にしたサービスから撤退するとしたら、その穴を埋めるのが地銀、第二地銀、信金、信組といった地域金融機関になります。

ただ、地域金融機関の問題は、地元での商売が成り立つのかどうかという点でしょう。少子・超高齢社会の到来によって、日本全体の人口が減少傾向にあるだけでなく、都市化の影響によって地方から大都市圏への人口移動は、止まる気配を見せません。

かつ超低金利が長期化する中で、預金を通じて集めたお金を貸し出して利ざやを取る預貸ビジネスは、規模の面でも、収益の面でも厳しくなってきています。

業務範囲規制が緩和された理由

2021年11月に改正銀行法が施行され、銀行の業務範囲規制が緩和されたのは、地域金融機関がその知見を持って新しい業務を行い、新たな収益源を発掘してもらうためです。

まず、銀行本体の参入が認められた業態は以下のとおりです。

・自行アプリやITシステムの販売
・データ分析、マーケティング、広告
・登録型人材派遣
・幅広いコンサルティング、マッチング

このように、金融機関による非金融分野参入への道が開かれたのです。

金融機関のビジネス展開の可能性

確かに、金融機関はさまざまな企業への融資業務を通じて、多くの人材との交流を日々行っています。

この知見を活かせば、職業紹介や起業支援、人材紹介、人材派遣、人事コンサルティングといったヒューマンリソース系のビジネスを展開できそうですし、ビジネスマッチングや経営コンサルティング、あるいはM&Aなどを活用した事業承継支援、事業再生などのビジネスもできそうです。

あるいは長年、地元経済のために金融業務を行ってきた信用がありますから、地域ブランディングや、地域の商品やサービスを幅広く扱い、域外への販路拡大を行う地域商社の運営支援などを通じた、地方創生ビジネスなどへの進出も可能と思われます。

ただ、正直なところこれらのビジネスに新味があるのかと言うと、決してそうではありません。しかも、地元を対象にしたビジネスであれば、金融ビジネスと同様、人口減少による収益力の低下を覆すことは、かなり難しいものと思われます。

金融機関による非金融分野への参入はまだ始まったばかりなので、どういうビジネスが生まれ、どのように収益化していくのかという実例は、まだほとんど見えてきていません。

ただ、人口減少が続く地元に根差したビジネスから脱却できない限り、いくら非金融分野に事業領域を拡大したとしても、地域金融機関の未来が厳しいことに変わりはないと思われます。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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