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POSやクレカ、求人情報も株式指標に プロが注目する「オルタナティブデータ」

Finasee / 2024年4月25日 7時0分

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Finasee(フィナシー)

 ナウキャスト
辻中 仁士 CEO
 

――オルタナティブデータとはどのようなものでしょう。

文字通り「オルタナティブ(代替的)」に用いられるデータ全般を指します。利用目的はマーケティングや商品開発、研究など様々ですが、株式投資で言えばこれまで伝統的に用いられてきた経済指標や財務指標以外の情報、例えばPOSの購買データやクレジットカードの購入履歴、ウェブ上の公開情報、SNSの書き込みなど多種多様な情報がオルタナティブデータとして活用されています。

――貴社のビジネスモデルを教えてください。

端的に言えば、①データホルダーから各種データを仕入れ、②株式運用等に役立つように加工し、③運用会社などのユーザーに販売する――といった商流です。仕入れ先にあたるデータホルダーとしては、クレジットカード会社のJCBや通信事業者のKDDIなど約10社とパートナーシップを結んでいます。一方、加工したオルタナティブデータの販売先は、運用会社やヘッジファンド、官公庁、事業会社、大学など数百社に上ります。

――具体的にどのようなオルタナティブデータを扱っているのですか。

POSやクレジットカードなどから抽出できる「購買系データ」と、求人情報やウェブ公開情報などから得られる「非購買系データ」の2つに分けられます。基本的には実際のお金の動きを示している前者の方が各種判断に活用しやすいのですが、最近は後者にも注目が集まるようになりました。

現在ナウキャストで注力しているのが、企業の求人情報のオルタナティブデータ化です。具体的には約170の求人サイトから求人数や賃金情報をウェブスクレイピングしてデータをトラッキングし、企業別や職種別、地域別などで様々な分析ができる「HRog賃金Now」というサービスを提供しています。データの参照は2017年から可能ですし、賃金の推移は厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に対して一定の先行性があることが分かっています。

――ほかにも投資判断に活用されているオルタナティブデータの具体例はありますか。

一般的に「使いやすい」と評判いただくのはPOSデータですね。例えば「ヤクルト1000」の売り上げとヤクルト本社の株価に一定の相関が見られており、POSから抽出したヤクルト1000の売り上げデータを日次でリアルタイムに把握できるオルタナティブデータは投資家から評価されています。ナウキャストではスーパーマーケットやドラッグストア、家電量販店、GMSなど幅広い業種で7500店舗以上をカバーしています。

またクレジットカードの購買情報もよく投資判断に活用されています。例えば足元の国内消費が全般的に弱いことはご案内の通りですが、業態別にクレカ情報を抽出してみると、アミューズメントパークは比較的好調だと分かります。

――ユーザーにはどのようにオルタナティブデータを提供しているのですか。

オンライン上でご覧いただけるプラットフォームをご用意しています。例えばクレジットカード情報については「JCB消費NOW」、求人情報は「HRog賃金Now」などオルタナティブデータの種類に応じたサイトを設けており、それぞれのサイト上でグラフを可視化したりデータをダウンロードしたりできる環境を提供しています。

――サービスの手ごたえはどうですか。

運用会社から事業会社、官公庁、大学と幅広く活用されるようになり、非常に手ごたえを感じているところです。特に2020年から始まったコロナ禍をきっかけにユーザー数が急増しました。コロナ禍は上場各社の業績も大きく変動する非常に大きな経済イベントでしたので、四半期に1回の決算情報を待つよりも、速報性のあるオルタナティブデータに期待が寄せられたのでしょう。

――実際、オルタナティブデータはコロナ禍における大きな経済環境の変化を織り込めていたのでしょうか。

十分に織り込めていたと思います。例えばナウキャストでトラッキングしてきたデータを見ると、いわゆる「おうち時間」の浸透とともにECや冷凍食品などの売り上げが爆発的に伸びました。反対に外出機会が減った影響でしょうか、化粧品関連企業の売り上げが大幅に落ちていく様子が日々のPOSデータからリアルタイムで読み取れました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
後編では、オルタナティブデータと個人投資家の関係や海外における活用状況、国内市場の今後の見通しを取り上げる。

オルイン編集部

「オルイン」は、株式・債券といった伝統資産はもちろん、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブもカバーする、国内随一の機関投資家向け「運用情報誌」。2006年の創刊以来、日本の年金基金や金融法人、公益法人といった機関投資家の運用プロフェッショナルに対し、その時々のタイムリーな話題を客観的かつ独自の視点でわかりやすくお伝えしています。

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