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「お母さんもADHD」義両親に土下座、依存症の借金で学資保険を解約、息子は不登校…それでも手にした幸せな家庭

Finasee / 2024年8月14日 11時0分

「お母さんもADHD」義両親に土下座、依存症の借金で学資保険を解約、息子は不登校…それでも手にした幸せな家庭

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

「女の子はお嫁に行くから学歴は必要ない」。男尊女卑の父親、長男ばかりをかわいがる母親に育てられた森山吹子さん(仮名・40代)。高校卒業後、森山さんは大手化粧品メーカーの美容部員になった。

きらびやかな世界とは裏腹にノルマが達成できなければ自腹を切らされる。金づる扱いされていた彼氏からも振られ、身も心もボロボロになって22歳で退職し、残ったのは230万円の借金だけだった。

しかし、父親の紹介で建築関係の会社に再就職したのをきっかけに、夫と出会い結婚。2人の子どもにも恵まれたが、夫の地方勤務のため知り合いもおらず孤独な生活は続く。ようやく地元に戻れたものの、今度は高齢の義両親との同居が始まる。

●前編:【「一体、いくらあるの?」ストレスで買い物依存になった美容部員が家族への“借金バレ”に安堵したワケ】

再借金地獄

古い義実家を2世帯住宅に建て替えた住宅ローンと、義両親の生活費、自分たちの生活費と、地元に戻るまでの2年間の賃貸住宅の家賃、そして想定外の次男の出産があり、森山家の家計は火の車となっていた。

そして同居から2年目。ついに貯金が底をつく。

義両親との同居もうまくいっていなかった。小学校1年生と2歳になったばかりの息子たちに対して、義父は「うるさい!」と怒鳴り、ひどいときは長男を差別語で罵る。

長男は小学校2年生のとき、次男は3歳のときにADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)の診断がおり、発達外来、市の相談室、療育、放課後等デイサービスなどに通っている。

「地元に戻ってきたとは言え、友だちは散り散りになっており、ママ友もいません。この頃の夫は子どもたちの障害への理解も薄く、仕事や飲み会や旅行、趣味の車を優先し、ほとんどワンオペ育児でした。私が高熱を出そうが、嘔吐してトイレから出られなくなろうが、『〇時間目の授業が終わるまで耐えて!』と放置されたことは数えきれません」

トラックの運転手をしていた義父は、60歳で脳梗塞を起こし、左半身麻痺になったが、介護サービスの一切を拒否。着替えや食事、トイレや入浴の世話はすべて義母がやっていた。もしかしたら、身体が不自由になった苛立ちを、元気に遊び回る孫たちにぶつけていたのかもしれない。

だとしても、嫁である森山さんにとって、義父は大きなストレス源だった。自分より身体が大きい義父を1人で介護する義母を放ってはおけず、おのずと義母のサポートを務めることとなる。義母は55歳のときに食道がんで食道と胃をつなげる手術をしているうえ、72歳の頃から狭心症を患っていたため無理はできない。しかし義母から感謝はない。気付けば森山さんは、大好きなブランドの服を買うことで、ストレスを解消するようになっていた。

「服を買うときは高揚感に包まれ、その一瞬だけ、幸福感に満たされます。でも帰宅すると、罪悪感に苛まれて……。夫にバレないように隠したり、タグ付きのままオークションへ出したこともありました。生活費も足りないのに、『欲しい!』と思ったら、寝ても覚めても欲しくてたまらないのです。支払いはカードでして、先延ばし先延ばしにしていました」

やがて、限度額10万円のA社のカードキャッシングだけでは足りず、B社を申し込む。

同居から2年目の夏、借金は合計80万円に。それを思い切って打ち明けると、夫は森山さんを責めず、収入と支出のバランスを見て、やりくりは難しかったと納得してくれた。

借金は、長男の学資保険を解約して返済。この年からボーナスは夫が管理し、子どもたちの教育費はボーナスから貯めることにした。

初めての夫婦喧嘩

同居4年目。長男が小4になり、次男は3年保育の私立幼稚園へ入園。長男がサッカーを習い始めると、森山さんにママ友ができた。

サッカー仲間の家で2カ月に一度、母親4人+子ども6人が集まり、夕飯をともにする。

他にも母親6名ほどで集まり、定期的にランチ会をした。その度に、個々にお土産を買っていき、ランチ代とその後のお茶代で、1回で1万円以上使った。

そんな頃、夜のママ友会の森山さん主催の番が回ってきた。小学4年生と3歳児の男の子が複数集まれば、当然騒がしくなる。

ついに、義父の逆鱗に触れてしまった。

翌朝、夫から謝罪するよう促された森山さんは、義両親の部屋を訪れ、土下座する。

「母親のくせに子どもを注意もせずに何をやっとる! 今の親はどうもならん!」

翌日から、森山さんは子どもたちを朝送り出すと、自分も家を出て、子どもたちが帰宅するまで戻らなくなった。再び夫の給料だけではやりくりできなくなると、また借金が始まった。

ある日のこと。夫に対して溜まった不満や怒りが爆発し、森山さんは号泣しながら夫へくってかかった。森山さんにとって、本音を吐き出したのは人生で初めてのことだった。

「転勤について行って、慣れない土地で子育てしてきましたが、夫はまったく協力してくれませんでした。義父に否定ばかりされる毎日は息苦しく、夫への不信感がどんどん大きくなっていたのです」

夫は黙って話を聞いたあと、「俺も妻と両親に挟まれて困っていた」と打ち明けた。

このことがきっかけで、夫は家事育児に協力的になり、夫婦の絆は深まった。だが、それで借金がなくなるわけではない。

夫の理解を得たことで心が満たされた森山さんは、新たな借金を作ることはなくなったが、すでに借金は95万円。専業主婦である森山さんにとっては、売れそうなものを売り、家計を節約しても、利息分を減らすことで精一杯だった。

「ゆくゆくはパートへと思いつつも、当時は不登校になっていた次男から『家にいてほしい』と言われていました。また、マルチタスクが苦手なので、パートと家事と子育てがこなせるか、自分のメンタルも心配でした」

パートで働き始める

2019年。中3の長男が私立高校への進学を希望。

いよいよ「夫だけの収入では学費を捻出できない」と思った森山さんは、働きに行くことを次男に相談。すると小学校高学年になった次男は、「帰宅した時にお母さんがいてくれるならいいよ」と言ってくれた。

森山さんのパート収入がプラスされると、家計がスムーズに回り始めた。約10カ月が過ぎた頃、森山さんは繰り上げ返済を実行。80万円ほど残っていた借金も、半年後には55万円まで減らすことができた。

「結婚前の借金は両親が肩代わりし、2回目の借金は学資保険を解約。学資保険の解約には親としてのふがいなさはありましたが、ほとんど苦労していません。自分で働いて自分で返して、お金を稼ぐことの大変さ、お金の大切さを、いまさら理解しました。浪費が減ったのは、子どもたちの主治医や療育でお世話になっている心理士さんから『お母さんもADHD・HSPだと思いますよ』と言われたことで、自分の性質(ADHD)と気質(HSP)に合ったルールを作ったことが大きかったと思います」

森山さんは、1人カフェやランチはしない。カードは極力使わない。ウインドーショッピングをしない。服は必ず試着する……というルールを決めたところ、無駄遣いが減ったという。

毒親の連鎖

「私が買い物依存に陥ってしまったのは、母の影響が大きかったと思っています。誕生日やクリスマスのプレゼントはお金。中学からは母の代わりに家事をして2万円。高校生の頃はお弁当代に毎日1000円もらっていました。すべてお金で解決させられてきたんです。母との行動は全てタクシーでしたし、買い物はデパート。私自身もお金で解決する癖や贅沢が染みついていたのだと思います」

誕生日やクリスマスのプレゼント、お弁当もお金ということは、「何がほしい?」「何が食べたい?」という親子の対話さえなかったことを意味している。母方の祖母も贅沢な人だったようなので、母親はお金を渡すことしか親としての務めを果たす方法を知らなかったのかもしれない。

祖父も父親も家庭に目もくれず、自分優先で好きなように生きていた。もしかしたら母親と祖母は、たった1人で家事や育児に向き合う孤独や苦悩に耐えきれず、贅沢に依存したのかもしれない。

「今思えば母にとっての私は完全に所有物で、私なんてお金で動く駒でしたね……」

都合の良いように使われてきた森山さんは、子どもの頃に満たされなかった心を埋めるように、買い物依存や元カレへの依存に走ってしまった。しかし、苦しみながらも自分の人生を生きるために足掻き続け、夫とぶつかりながらも、現在は居心地の良い家庭を築くに至った。

義父は91歳で亡くなったが、82歳の義母との同居は続く。79歳の父親と78歳の母親の介護問題で振り回されている森山さんだが、夫も2人の息子たちも味方だ。

森山さんには自分たちが幸せになることを優先してほしい。
 

旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー

愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。

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