「救われたような気持ちになりました」40代女性が同居する義母への不満をスッキリ解消できたワケ
Finasee / 2024年8月23日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
専業主婦の窪川涼子さん(仮名・46歳)は、夫と大学生の息子の3人家族。義両親が建てた二世帯住宅に暮らしています。義父は2年ほど前から体調を崩して入退院を繰り返し、現在は医療設備の整った高齢者施設に入居しています。
日頃から義両親が義妹一家ばかりをかわいがっていると感じていた窪川さんでしたが、ある日義母の居室で見つけた義母のノートを開いてあぜんとします。そこには義母が義妹に渡したと思われるお金の細目と金額、渡した日付が書いてあったのです。将来的に義両親が窪川さんの夫と義妹に財産を半分ずつ分けるとすると、義妹の取り分が明らかに多くなってしまいます。
この出来事をきっかけにもやもやを抱え、「嫁の相続」という市民講座に参加した窪川さん。相続診断士である内海さんの話を聞き、「内海さんに相談してみたい」と面談を申し込みました。
●前編:【「ふとノートを開くと…」同居の義家族に辟易する40代主婦が片づけ中に見つけた義母の“驚くべき秘密”】
義母が義妹一家に数千万円贈与していた事実が発覚夫の義両親が建てた二世帯住宅で暮らす私は、ある日偶然に義母の居室で義母が義妹一家に渡したお金のメモを見てしまいました。そこには、義妹の娘で名門大学の医学部に通う怜花ちゃんの学費も含め、この10年間で数千万円の支援があったことが書かれていました。
義妹は開業医に嫁いでいます。私と同じ専業主婦で、車で30分ほどの距離に住んでいるのに、高齢者施設に入居している義父の着替えの用意や買い物といった義両親の世話はほとんど私任せです。私には怜花ちゃんと同学年の長男がいますが、義両親からはごくごく一般的な額の入学祝いやお年玉しかいただいたことがありません。
義両親からの相続は、不動産を含めた財産を夫と義妹で平等に分割するという遺言書が用意してあると聞いています。それでは不平等ではないかと疑問を持ちました。
専門家への相談を決める自治体の広報誌で目に留まった「嫁の相続」という市民講座に参加することにしたのは、そんな経緯があったからです。そこでは主催者である相続診断士の内海さんが、ご自身が特別寄与制度を活用して義父の介護の特別寄与料を相続人の夫のきょうだいに払わせた体験談を赤裸々に語って拍手喝采を浴びていました。
内海さんなら、同じ嫁の立場で今の私のもやもやした気持ちを理解してくれるのではないか。そう思って内海さんに面談をお願いすることにしました。
内海さんは、お話し上手であると同時に聞き上手でもありました。柔らかな笑みを浮かべた内海さんを前にすると、胸の中に貯まった鬱屈(うっくつ)した思いが、言葉となってどんどん口から溢(あふ)れてきました。
中でも義母の部屋で義妹への支援をメモしたノートを見つけた体験は、話しながらもまたあの時の悔しさが込み上げてきて涙がこぼれ落ちました。
「義母は私たちに黙って、義妹一家に少なからぬ支援をしていたんです。こういうことをしておきながら『相続は兄妹平等にするよう遺言書を書いた』っておかしくないですか」
私の感情が治まるのを待ってから、内海さんは私をじっと見てこう言いました。
「窪川さん、今のお話には『不平等な相続』ということ以外にも大変デリケートな問題が含まれています。例えば、教育費や生活費の援助は別として、1人につき年間110万を超える贈与には贈与税がかかります。一方で、妹さんに渡していたのが“少なからぬ金額”だとしたら、そのお金はどこから出てきたお金かという問題もありますよね」
「私は国税でも税理士でもありませんから、そこについて追及したりはしませんけれど、窪川さんは今考えていることについて、まず、ご主人と話し合ってみるのがいいかと思います」
核心を突いた言葉にどきりとしました。ああ、この人は面白おかしく相続の話をするだけの人ではないのだなと思いました。
内海さんはその後、こんなアドバイスもくれました。
「一般論ですが、あなたの息子さんと従姉妹さんとの格差が大きいように思うので、ご主人から義理のご両親に相談して、教育資金贈与の特例(最大1500万円まで非課税)や相続時精算課税制度の非課税枠(年間110万円)を使った生前贈与を受けておいてもいいかもしれませんね」
夫と話し合って分かった「意外な事実」自宅で夫に内海さんの提案を持ち出すと、夫は気まずそうな顔をして次のような話を聞かせてくれました。
実は義弟の病院経営はうまくいっておらず、義妹が度々義両親に泣きついていたこと。怜花ちゃんの進学の際にも、義両親や夫を交えた親族会議をして義両親が学費を払うと決めたこと。親族会議の結果は夫も容認していたようです。
「俺も8年かかって大学を卒業したし、学生時代は海外を放浪したりして親には世話になりっ放しだった。この家や土地だって元はと言えば親のものだしね。他の相続人より多めにお金をもらったりしていることを『特別受益』と言うらしいけど、そういう意味では、妹の特別受益を主張できる立場じゃないんだよ」
同時に、今私が義両親の面倒を見ていることを「俺としても本当にありがたいと思ってるし、母親もああいう性格だから面と向かってお前には言わないだろうけれど『涼子さんは本当によくやってくれている。自分の娘よりよっぽど頼りになる』といつも言っている」と言ってくれたことで、私自身、救われたような気持ちになりました。
夫は息子の学費についてもこんな打ち明け話をしてくれました。
「父親は『怜花ばかり援助するわけにはいかないだろ』と出そうとしたけど、俺が『止めてくれ』って言ったんだ。俺が自分で払えるからって。でも、それが怜花に対する劣等感みたいなものの原因になっているとしたら、その内海さんとやらが言うように生前贈与をしてもらってもいいのかもしれないな」
話し合いで初めて知った義家族の複雑な事情夫の話は私にとって青天霹靂でした。今思えば、私が夫の家族の事情を何も知らなかっただけで、全て私の独りよがりだったのです。内海さんは私に自分でそれを確認させたかったのだなと、遅ればせながらようやく気付いた次第です。
内海さんに「夫と話し合いをしたら一発で解決しました。息子への生前贈与も検討してもらうそうです」とお礼のメールを送ったら、サムズアップの絵文字が返信されました。
しかし、内海さんとのご縁はそれだけでは終わりませんでした。夫は義父から頼まれて相続全般を任せられる税理士事務所を探していたらしく、「涼子の話を聞いて、内海さんという人はなかなか機転の利く、洞察力のある人だなという印象を持ったんだ」と、まずは内海さんに相続診断をしてもらい、その後の相続対策や相続の実務については内海さんが勤務していた税理士事務所に依頼することを考えているようでした。
以前の顧問税理士が高齢になって事務所を閉めた後、義両親の資産管理もしっかりなされていなかったことから、そのあたりも含めてのご相談です。
改めて内海さんに連絡を取ると、今度はこんなメールが返ってきました。
「窪川さんのお役に立てるなら私もうれしいです。相続では、お嫁さんやお孫さんなど相続人以外の人も含めてファミリーでしっかり情報を共有し、皆が納得して進めていくことが重要だと思っています。微力ながら、そういう相続ができるようにお手伝いさせていただきます」
最後にはやっぱり、サムズアップの絵文字がついていました。これには私もサムズアップで返信しました。「内海さん、どうかこれからもよろしくお願いしますね」という思いを込めて。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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