実は老後の1番の悩みは“年金額”ではなかった…! 定年を迎えた世代が痛感している「シニアの本当の課題」とは
Finasee / 2024年8月19日 18時0分
Finasee(フィナシー)
定年前の漠然としたお金の不安。実は杞憂だった?
定年前の40代、50代の方にとっての老後不安とは、生活する上でお金が足りるのだろうか、という漠然としたものであると思われます。
しかし実際定年を迎えた人たちの話を聞くと、少し様子が変わってきます。お金が足りないから生活のために働かなくてはいけない、と思っている人は意外と少ないのです。
その理由は定年後の収支を考えると見えてきます。
まず、現役時代に支出の大きな部分を占めていた教育費、住宅ローンについては、定年前後になると負担が軽くなったり、払わなくてもいい状態になったりします。
収入面では、65歳から年金を受け取ることができるので、これが一定の収入源になり大きな安心材料となります。また定年後は65歳まで雇用延長をする人が多く、現役時代と比べて収入が激減したとしても、生活費はカバーできます。さらに、サラリーマンとしての勤務期間が長い人は多少の退職金と貯蓄もあるので、それらが不安解消の後押しにもなるのです。
定年を迎えた世代が年金に感じていることそれに、収入が減ることは悪いことばかりではありません。実は自助努力のキッカケにもなるのです。
現役時代は、外食や遊興費もあまり考えなく使っていたのが、収入が減ると共に節約の気持ちが芽生え、飲み会にも必要な時以外はいかなくなる人も増えてきます。趣味にも無尽蔵にお金を使うことを控えるようになるでしょう。このように収入が大幅に減っても「何とかやろうと思えばやれる」という自信がその時から湧いてきます。
年金はその額が少ない云々とよく言われますが、現役の一線から退いた立場から見ると、定期収入のベースとして安心感を与えてくれる存在と言えるのです。
多くのシニアが痛感している“年金以外”の2つの課題「仕事はお金を稼ぐため」と考えると、確かに定年後は現役時代ほど稼げないので、ファイナンシャル的にはネガティブになってしまいます。しかし、筆者はセカンドキャリア支援で多くのシニアと話す中で、定年後の本当の不安はもっと別のところに潜んでいると感じています。
まず大きな不安要素は孤独です。定年後に老後資金に余裕があったとして、「年金で生活をして、足りない分は貯蓄を切り崩していけばいい」と働かないでいると、次第に人との交流が少なくなり、1人取り残された感覚に陥ってきます。
人は現役時代に生活のために働きストレスを感じてきた経験から、定年後は生活のために働かなくてもいいのではと思いがちです。しかし働かないことで孤独という新たな問題が浮き彫りになってくるのです。
もう1つの課題は健康に関する不安です。60歳を超えてくると、身近な人が病気になり、死に直面することも起きてきます。親の介護をしなくてはいけない状況に置かれる方も出てくるでしょう。そうなれば介護への出費や、いずれ自分もそうなるのではという不安も出てきます。
自分自身も健康診断の結果で検査値に異常値が出ると胸騒ぎがします。今は健康であっても近い将来かかる医療費や、もしもの時の施設利用代などを考えると、蓄えがあったとしても不安はつきまとうものです。
そこで定年後は、「生活のために働く」のでなく、「自分のために働く」という考えにシフトし、積極的に働く気持ちを持つことが大切になってきます。
定年後のファイナンシャル・ウェルビーイングと課題解決を考える最近ウェルビーングという言葉がよく使われます。簡単に言うと「幸せな状態」を意味するものです。また、幸せな状態には多少なりともお金が関係することから、幸せな状態になるためお金にどう向き合うかという「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という考え方もあります。お金を単に稼ぐものとして捉えるのでなく、自分が幸せになる手段として考えていくのです。
では定年後のファイナンシャル・ウェルビーイングはどうすれば実現できるのでしょう。
まず第一歩として、お金を得るためには働く必要がありますが、その働くことをお金のためだけでなく「シニアの課題を解決するもの」として捉え直してみてはいかがでしょうか。
前述した通り、シニアの本当の課題はお金が足りないというよりも、人との交流がなくなり孤独になること、健康を維持できなくなることにあります。それらは働くことで解消できる部分もあるのです。
例えば、仕事はその種類に関わらず、職場での交流や人間関係が発生します。それが刺激にもなり生活にハリをもたらします。人間関係で多少のストレスは生じますが、責任ある立場ではないので、そんなに大きいものではありません。仕事も自分の好きな分野を選択し、そこで強みを活かすことできれば、人からも喜ばれ感謝されます。またフルタイムではなく、週数回、1日数時間だけ働くという選択もできます。仕事の時間にあわせて規則正しい生活を送り、通勤時に体を動かせば、それが定期的な運動になって健康にもつながります。お金の不安も、働くことで年金にプラスして収入を得られるので、おのずと解消されていくでしょう。
このように、定年後も働くことは、シニアならではの課題、そしてお金の悩みを解決することに役立ちます。働いてお金を得ることがシニアの課題解決に役立っているのなら、それは「ファイナンシャルウェルビーイング」を高めることになるのではないでしょうか。
髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰
1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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