市場の乱高下でインデックス投信が痛手を被る中、頼りになるファンドは?
Finasee / 2024年8月20日 7時0分
Finasee(フィナシー)
大手証券の投信売れ筋ランキング(2024年7月)のトップ3は、前月と同様に「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」と「HSBC インド・インフラ株式オープン」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」になった。
前月と比較すると、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」や「半導体関連 世界株式戦略ファンド 愛称:半導体革命」など半導体関連株ファンドが順位を下げ、代わって、「日経225ノーロードオープン」、「ダイワ・ブルベア・ファンド6 ブル3倍日本株ポートフォリオ6」、「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」など日本株インデックスファンドが大きく順位を上げた。7月下旬に国内外の株価が調整安となる中で、先行して下落した日本株に「押し目買い」が入ったと考えられるが、8月に入ると株価が一段安となり、この7月の日本株買いは痛手になってしまった。
ランキングは、大手証券(野村、大和、SMBC日興、みずほ)の代表的な売れ筋ランキングについて、トップに10点、以下、順位が下がるごとに1点減点して10位を1点としてポイントを付与し、そのポイントを合算してポイント上位から並べたもの。各社の公開情報に基づくもので、大和とSMBC日興はオンライン(総合)、また、大和の売れ筋は当月最終週の1週間分のみのランキングを使っている。
◆7月は日本株投信がランキング浮上したが…7月の売れ筋ランキングで順位をあげた日本株インデックスファンドは、結果的に8月初旬の株価急落によって大きな痛手を受けてしまったことになる。7月の国内株インデックスの動きは、TOPIX(東証株価指数)が6月末比で史上最高値を記録した7月11日に4.25%高となったものの、その後はダラダラと下落し、月末には6月末比で0.55%安となった。7月11日の高値からは4.61%安だった。同じように日経平均株価は、7月11日に6.67%高とTOPIXを上回る上昇率を記録して史上最高値を更新したが、月末は1.22%安。高値からの下落率は7.39%にもなった。前半高で後半が失速という動きだったため、月間で売れ筋ランキングの上位になった日本株ファンドは、高値を付けた後の下落局面で、次なる高値更新を期待した「押し目買い」の注文が多かったことがうかがえる。
ただ、7月の買い注文は、8月初旬の株価急落で大きな含み損を抱えてしまうことになる。7月末に日銀が政策金利の0.25%引き上げを決定したことをきっかけに国内株価が急落したためだ。TOPIXは8月5日までに7月末比で20.30%安に急落。史上最高値だった7月11日と比べると23.97%安になった。日経平均株価も7月末比19.55%安、史上最高値からは25.50%安となった。1カ月足らずの間に25%を超える下落率は「暴落」と表現されても良いレベルだ。
◆日本株「ブル3倍」は8月3営業日で半値!この市場の急変に、日銀は副総裁が「金融市場が不安定な状況で利上げすることはない」と発言、総裁の利上げ継続発言を打ち消すようなコメントを出すなどして事態の鎮静化を図った。金融政策に関する軌道修正を感じさせる発言が功を奏したのか、株価は8月5日を底に戻り歩調にある。8月13日時点では、株価は8月5日からは14~15%上昇し、7月末比でも7~8%安という水準に戻った。
とはいえ、この8月の株価暴落は、7月に日本株インデックスファンドを購入した投資家にとっては、大きな痛手になった。たとえば、7月の売れ筋ランキングで第6位だった「日経225ノーロードオープン」は7月末の基準価額2万8916円が、8月5日には2万3277円と19.50%安に下落した。また、「ダイワ・ブルベア・ファンド6 ブル3倍日本株ポートフォリオ6」は、7月末の基準価額1万9101円が8月5日には8803円と53.91%安の半値以下に急落した。レバレッジ型ファンドの変動率の大きさを示した。
◆変動率が大きい相場ではアクティブファンドへの期待高まる一方、6月28日に新規設定された「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」が売れ筋の16位に食い込んだ。このファンドは、名前にある「コンビクション(conviction)」=「確信」が示すように、今後の持続的な利益成長に確信が強い銘柄を選んで投資するアクティブファンドだ。持続的な利益成長は、株高の重要な要素であるため、市場全体の株価をアウトパフォームする期待の強い銘柄群でポートフォリオを構築するということを意図している。このため、個々の銘柄において業績好転のシグナルとなるような指標をウオッチして投資タイミングを計ることも実施するとしている。どれほど先行きの株高期待が強い銘柄に投資していても、市場全体が大きく下げる時には、同ファンドの組み入れ銘柄の株価も下げる。同ファンドも8月5日には基準価額が7705円にまで下げている。問題は、今後の株価回復局面において、どれほど他のファンドより力強い回復を見せるかだ。8月13日時点では基準価額が9009円まで戻った。今後に期待したい。
日本株のインデックスは、7月11日に史上最高値をつけるものの、その後、25%程度の急落をするなど、価格変動率が大きな市場になっている。株価の水準が半年余りで25%程度も上昇するという大きな値上がりの後だけに、その変動率の大きさも覚悟しなければならないだろう。インデックスファンドへの投資は、その反動率の大きさをストレートに反映する投資成果になる。その変動を抑え、そして、株価の回復時により大きな上昇をみせることによってインデックスを上回るパフォーマンスが期待できるのがアクティブファンドだ。「三井住友DS・ジャパン・ハイ・コンビクション・ストラテジー」のような意欲的なファンドが売れ筋上位に入ってくるのは、優れたアクティブファンドへの期待感を示しているのだろう。今後、実績のあるファンドも含めてアクティブファンドへの評価の変化に注目していきたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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