ウォーレン・バフェットが「絶対に売却しない」と言った“2大米国株の名前”
Finasee / 2024年9月6日 19時5分
Finasee(フィナシー)
投資の神様、ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイが「1兆ドルクラブ」入り
投資に興味のある方で、ウォーレン・バフェットの名前を知らない人は、恐らくほとんどいないでしょう。バークシャー・ハサウェイという投資会社を率いている著名投資家であり、8月28日に同社の時価総額が一時、1兆ドルの大台に乗せました。
1ドル=145円で換算すると、1兆ドルは145兆円にもなります。新聞報道によると、アップルやマイクロソフトといった大手テック企業以外では最初の「1兆ドルクラブ」入りになったそうです。
1兆ドルの時価総額がどれだけ大きいのかは、日本企業の時価総額と比較すれば一目瞭然でしょう。9月5日時点の終値で計算した日本企業の時価総額ランキングで上位の企業は、以下のようになります。
トヨタ自動車・・・・・・41兆3196億8719万円
三菱UFJフィナンシャル・グループ・・・・・・18兆3276億6957万円
ソニーグループ・・・・・・16兆9063億923万円
キーエンス・・・・・・16兆1222億3737万円
日立製作所・・・・・・15兆7318億7992万円
これ以上、並べても無駄なので、ひとまず上位5社だけにしておきますが、バークシャー・ハサウェイの時価総額145兆円は、トヨタ自動車の時価総額を100兆円以上も上回っているのです。
では、バークシャー・ハサウェイとはどういう会社なのでしょうか。
元々は綿紡績の会社だったが、投資会社に転換設立は1888年です。もともと綿紡績を主事業とする事業会社でした。当時はハサウェイ製造会社という名前だったのが、1950年代に綿織物事業を行っている会社と合併して、バークシャー・ハサウェイという社名になりました。
もちろん、この時点ではウォーレン・バフェットの会社ではありません。バフェットはこの会社の株式に投資する投資家として、関与することになります。1962年から同社の株価を割安と判断して、その株式を買い進めていったのですが、実は投資としては失敗だったそうです。結局、バークシャー・ハサウェイの中核事業だった綿織物紡績業からは徐々に手を引き、バフェットはこの会社を投資会社へと業態転換させました。
バークシャー・ハサウェイは、大きく2つの投資を行っています。「事業投資」と「株式投資」です。
まず事業投資ですが、バークシャー・ハサウェイは一種の持株会社で、傘下にさまざまな業種の子会社を保有しています。
業種で言うと保険業、エネルギー業、製造業、建築業、賃貸業、フライトサービス、運送業、小売業など、実に多岐にわたっていて、その数は60社以上に及んでいます。
これらはすべて事業投資、つまり、実際にその事業に投資し、かつ他の子会社が営んでいる事業とのシナジー効果から、事業全体を成長させることに目標が置かれています。バークシャー・ハサウェイの連結損益計算書の売上高に計上されるのは、この事業投資を行っている企業群の売上高の合計です。
株式投資はバークシャー・ハサウェイにとって“営業損益”そしてもうひとつが「株式投資」です。恐らくウォーレン・バフェットの投資家としてのイメージは、この株式投資の部分によるところが大きいのではないでしょうか。
たとえば直近だとアップルへの投資や、絶対に売却しないとバフェットが公言しているアメリカン・エクスプレスやコカコーラへの投資は、事業投資ではなく株式投資であり、株式投資によって生じる損益は、営業損益に計上されます。ちなみに、バークシャー・ハサウェイが2020年に、日本の5大商社株に投資したことで大きな話題になりましたが、これも事業投資はなく、株式投資によるものです。
つまりバークシャー・ハサウェイという会社は、事業投資によって参加に多くの子会社を持ちながら、さらに多数の会社の株式への投資を通じて企業価値を高めている、文字通りの投資会社なのです。
個人投資家もバークシャー・ハサウェイに投資できる今やインターネット証券会社に口座を開けば、米国株式を直接買い付けることができます。そして、バークシャー・ハサウェイも米国株式市場に株式を上場しているので、その株式を買えます。
バークシャー・ハサウェイの株式は、A株とB株に分かれています。それぞれの株価ですが、9月6日時点でA株が70万3091.54ドルで、B株が468.61ドルです。1ドル=145円で計算すると、A株は1億194万8273円になります。米国株の場合、1株から投資できるとはいえ、1億円超もの資金をすんなり出せる投資家は、そうそういません。だからB株があるのです。B株なら6万7948円で購入できます。
では、A株とB株でなぜ、買付金額にこれだけの差があるのかというと、議決権の違いです。B株の議決権は、A株の1万分の1しかないように設計されているのです。
なぜA株とB株があるのかというと、そもそもバフェットは株式分割を一切行わず、そのためバークシャー・ハサウェイの株価は、極めて「値がさ」になっていたのですが、あえて“良し”としていました。なぜなら本当の意味でバークシャー・ハサウェイの事業内容や、バフェットの哲学を理解して長期保有してくれる、グレードの高い投資家にのみ、バークシャー・ハサウェイの株式を保有してもらいたいと、バフェット本人が思っていたからです。
ところが、投資信託の仕組みを用いて小口資金を集め、バークシャー・ハサウェイの株式に投資する投資会社が現れてきました。そうなると、手数料稼ぎの売買によって、バークシャー・ハサウェイの株式が投機対象になる恐れがあるとバフェットは思ったのでしょう。この動きを強く批判して、最終的に議決権を1万分の1にしたB株の発行に踏み切ったのです。
とはいえ、これによって私たち個人投資家でも、バークシャー・ハサウェイの株式に投資できる機会が生まれました。21世紀に入ってから、バークシャー・ハサウェイの株価は何と1000%超の上昇率をキープしていると言われているだけに、投資したいと考える投資家は少なくないでしょう。
8月30日の誕生日で94歳になったバフェット…後継者問題はただ、ひとつ問題なのは、すでにバフェットが高齢であることです。今年5月にオマハで開催されたバークシャー・ハサウェイの株主総会で、バフェットは「後継者問題については心配しなくても良い」という旨の発言をしたそうですが、これまでのバークシャー・ハサウェイの高いパフォーマンスは、やはりバフェットの企業を選ぶ目にかかっているだけに、後継者がそれを引き継げるかどうか、一抹の不安は残ります。
バフェットは自分の資産管理人に、自分が亡くなったら、妻に残した遺産はすべてS&P500のETFにするよう指示しているという話もあります。それは米国経済に対する揺るぎない信頼の証ともいえますが、果たしてその時、バークシャー・ハサウェイのパフォーマンスは今まで通りに維持されるのかどうか、一考の必要はありそうです。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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