「子育て罰」の“収入半減”に悩む33歳2児の母親。そのショックをやわらげた「あるもの」とは
Finasee / 2024年8月30日 16時0分
Finasee(フィナシー)
野村彩(33歳)は、念願だった保育園の保育士の職を得た。子供の頃から、将来の夢を問われると、「保育士さん」と答えるのが常だった。自分自身が幼いころに通っていた保育園で仲良くしてもらっていた「みさきセンセイ」が彩の理想の女性だった。
ただ、大学の在学中に妊娠してしまった彩は、保育士や幼稚園教諭の資格は得たものの、卒業後は出産と子育て、そして、日々の生活に追われるようになったため、保育士になるといった子供の頃の夢を忘れるような暮らしをしてきた。その夢に改めて向き合うきっかけを与えてくれたのは、子供が誕生すると同時に始めた投資信託の積立投資だった。
夢をあきらめ、育児に追われた20代彩が夫の野村由人(34歳)と出会ったのは、大学時代に山歩きをするサークル活動をしていた時だった。大学は違ったものの同じ山歩きをするサークル同士で交流があり、在学中に何度か一緒に山を歩いている時に、自然と寄り添うようになった。
彩は、野村との間に結婚を意識するようなこともなかったのだが、意図せずに最初の子供を身ごもった時に、野村がその事実から逃げようとせず、結婚して一緒に家庭を作っていこうと言ってくれたことがうれしくて結婚を承諾した。その時には、彩は大学の最終学年であり、野村は一足早く就職していた。
結婚、出産、そして、第2子の妊娠と出産があったため、彩の20代前半は、あわただしく過ぎていった。新生児の子供の成長については、知識としては学校で学んでいたが、実際にその場に立ち会うと、授乳の後にげっぷをしてくれないとか、夜遅くまで起きていてなかなか寝てくれないとか、気になりだすと心配がどんどん膨らんだ。
実家から離れた東京で夫婦2人だけで子育てをしていると、小さなこと一つひとつについて相談する相手に困った。野村の母親は何かと気にかけてはくれたが、野村の実家は北海道だった。彩は高校生の時に母親を病気で亡くしていた。
子供のケアを優先し、働くことを断念夫婦2人での子育てには、行き届かないことが多かったのかもしれない。長男の幸人は言葉が遅かった。幸人と2歳違いの長女の茉莉は、すくすくと活発な女の子に育ったことと比べると、幸人は人見知りで、運動音痴であり、音楽のリズム感も悪かった。
3歳の頃に、余りにも他の子と比べてできることが少なかったため、知能に問題があるのではないかと専門の機関で調べてもらった。その結果、知的機能や身体機能に何の問題もないことがわかった。「幸人には幸人のペースがある」と夫婦で自らに言い聞かせて、他の子供と比べたりすることをやめた。そして、幸人をよく見て、幸人が求めていることをくみ取ろうとした。
そんな幸人を第一にした生活をしていたため、彩たちの生活は貧しくなっていった。子供が2人できると、生活費がその分増えた。ただ、幸人を気にして彩は働きに出ることができなかったので、その分生活は苦しくなったのだ。
幸人の検査結果が「問題なし」と判明し、幸人の思うようにさせてみようと考えるようになって、ようやく生活の再建に向けて彩も働き口を探すようになった。幸人を同じ年の子供たちと遊ばせるためにも、保育園に預けた方が良いということも考えた。
ただ、そんな切り詰めた生活をしていても、夫婦で話し合って、子供の誕生に合わせて毎月1万円を、その子のために積立投資をすることだけは実行していた。それが、後に思わぬ効果を発揮する。それは……。
●子供優先で苦しい生活の中でも、毎月の積立投資を続けていた彩夫婦。元本割れも経験した末に待っていた意外な結末とは!? 後編【「子供のために夢をあきらめた」2児の母が、「米国成長株投信」を10年間積み立てた結果に衝撃!】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
風間 浩/ライター/記者
かつて、兜倶楽部等の金融記者クラブに所属し、日本のバブルとバブルの崩壊、銀行窓販の開始(日本版金融ビッグバン)など金融市場と金融機関を取材してきた一介の記者。1980年代から現在に至るまで約40年にわたって金融市場の変化とともに国内金融機関や金融サービスの変化を取材し続けている。
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