ちゅうぎんFGが好調、3ヵ月で通期計画の4割を稼ぐ 金利上昇で追い風
Finasee / 2024年9月12日 11時0分
Finasee(フィナシー)
住宅ローン金利の上昇を伝える報道が増えてきました。上昇は固定型から始まり、マイナス金利の解除後は変動型でも引き上げる例が増えてきています。
金利の上昇で予想されるのが、銀行の業績拡大です。非金利業務の強化で低金利に耐えてきた銀行は、金利の上昇で本来の実力の発現が期待されます。
ちゅうぎんフィナンシャルグループもその1つです。従来は保守的な業績予想を出す傾向にありましたが、足元の2025年3月期は強気です。純利益で240億円を稼ぐ計画で、第1四半期でその4割を達成しました。
今回はちゅうぎんFGに焦点を当ててましょう。同社の概要と業績を紹介します。
岡山県の地方銀行グループ 30年ぶりに海外支店を開設ちゅうぎんFGは中国銀行を中核に持つ金融グループです。中国銀行が持ち株会社化し、2022年に誕生しました。近年は地方銀行の再編が進んでいますが、中国銀行は1930年の発足を最後に他行と統合したことがありません。持ち株会社制への移行も、単独の株式移転で行われました。
中国銀行は岡山県を地盤に持つ地方銀行です。岡山県を中心に、広島県や香川県などに店舗を展開しています。
岡山県におけるシェアは高く、2024年3月末で預金の51.3%、貸出金の46.0%を中国銀行が占めています。また広島県や四国地方でも一定のシェアを握っており、総資産は中国地方の地方銀行で2番目に位置しています。
【中国地方に本店を持つ地方銀行の総資産(単体、2024年3月期)】
・広島銀行:12兆7201億円
・中国銀行:10兆7083億円
・山陰合同銀行:7兆3331億円
・山口銀行:7兆2058億円
・鳥取銀行:1兆1437億円
出所:全国地方銀行協会 地方銀行の決算
中国銀行は海外にも店舗を持っています。2023年にはシンガポール駐在員事務所を支店に格上げしました。中国銀行の海外支店開設は、1994年の香港支店以来で約30年ぶりです。
シンガポール支店の狙いは、地域の海事産業の支援です。瀬戸内海に接する岡山県は造船や海運が盛んな地域です。同じく海事産業が盛んなシンガポールへ支店を持ち、金融面から支援することで地域企業の海外進出を支える狙いがあります。
この取り組みもあり、中国銀行の海外店およびオフショアの貸し出しは増加しています。シンガポール支店は、2026年度までに総資産1000億円を目指します。
出所:ちゅうぎんFG 決算説明会資料より著者作成前期は増収増益 銀行の苦戦をグループ会社がカバー次にちゅうぎんFGの業績を押さえましょう。
直近の2024年3月期は増収増益でした。増益は役務取引等利益や債券関係損益の改善がけん引しました。株式関係損益の減少や与信費用の増加をこなし、経常利益および純利益のいずれも増加しています。
【ちゅうぎんFGの業績(2024年3月期)】
・経常収益:1846億円(+2.6%)
・経常利益:311億円(+5.3%)
・純利益:213億円(+4.4%)
※()は前期比
※参考(中国銀行単体):コア業務粗利益:843億円(-2.8%)、コア業務純益314億円(-11.3%)
出所:ちゅうぎんFG 決算短信
中国銀行単体では減益でした。コア業務粗利益の減少と経費の増加から、経常利益および純利益はいずれも減益となっています。
コア業務粗利益の減少は資金利益の悪化が主因です。円貨の貸し出し利息は好調だったものの、外貨の調達コストの増加が重荷でした。また、前期に計上していた投信解約損益のはく落も、資金利益の減少につながっています。
一方、銀行以外のグループ会社は好調でした。前期に計上したグループ会社間の株式売却益の影響を除き、大きな増益を果たしました。ちゅうぎんFGは、持ち株会社化でシナジー効果が高まったことが背景にあると分析します。
【ちゅうぎんFGのグループ会社の経常利益(2024年3月期)】
・中国銀行:266億円(-9億円)
・中国銀行を除くグループ会社:42.4億円(+13.9億円)
※()は前期比
出所:ちゅうぎんFG 決算説明会資料より著者作成
今期は大幅増益の見通し 強気の予想を開示した理由は?ちゅうぎんFGは今期(2025年3月期)も増収増益を見込みます。銀行単体でも経常利益および純利益は増益の計画です。経費や与信費用は増加を予想しますが、粗利益の増加が上回る見通しです。
【ちゅうぎんFGの業績予想(2025年3月期)】
・経常収益:2040億円(+10.4%)
・経常利益:345億円(+10.6%)
・純利益:240億円(+12.2%)
※()は前期比
※参考(中国銀行単体):コア業務粗利益:931億円(+10.4%)、コア業務純益370億円(+17.8%)
出所:ちゅうぎんFG 決算短信
この業績予想を、プロは「意欲的」と捉えたようです。2024年6月に開催された機関投資家向けの決算説明会では、強気の計画を出した背景に関して質問がありました(出所:ちゅうぎんFG 決算説明会 主な質疑応答)。
過去の推移を見ると、近年は確かに保守的な予想が多いようです。ちゅうぎんFGの期首予想は、2021年3月期から4期連続で実績を下回っています。
【ちゅうぎんFGの純利益】
期首予想 実績 実績の期首予想比 2020年3月期 138億円 119億円 -13.7% 2021年3月期 111億円 144億円 +29.7% 2022年3月期 147億円 183億円 +24.4% 2023年3月期 186億円 204億円 +9.6% 2024年3月期 150億円 213億円 +42.0%
※2022年3月期までは中国銀行
※2023年3月期は期首予想が中国銀行、実績がちゅうぎんFG
出所:ちゅうぎんFG 決算短信
取締役頭取(代表取締役)の加藤氏は先の質問に対し、従来は保守的な計画を出すことが多かったと認めた上で、目標は「ある程度チャレンジに設定すべき」という考えを明かしました。営業店に自主目標を導入し、実績などから「まだまだ上を目指してやれる」という手ごたえを感じているようです。
高い目標を掲げるちゅうぎんFGですが、達成には自信をにじませます。加藤氏は今期の計画に関し「必ず達成していける」と表明しました。
進捗も順調です。第1四半期の実績で、経常利益および純利益は期首計画の約4割に達しています。
【ちゅうぎんFGの業績(2025年3月期 第1四半期)】
・経常収益:524億円(25.7%)
・経常利益:137億円(39.7%)
・純利益:93億円(39.1%)
※()は期首予想に対する進捗率
出所:ちゅうぎんFG 決算短信
目論見通り、ちゅうぎんFGは目標を達成できるのでしょうか。中間決算は11月に公表される予定です。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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