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世帯年収1800万円の夫婦がタワマン購入を検討…お金のプロが「自分だったら今は買わない」と助言したワケ

Finasee / 2024年9月19日 17時0分

世帯年収1800万円の夫婦がタワマン購入を検討…お金のプロが「自分だったら今は買わない」と助言したワケ

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

都内の私立高校で英語教師として働く渡部恵さん(仮名・37歳)は、年明けに会社員の夫との間に第1子が生まれる予定です。

出産を機にマイホームを購入したいと考え、物件探しを始めました。内覧を重ねて新築タワーマンション(タワマン)の候補物件を見つけましたが、販売価格は2億円と高額でした。

世帯年収1800万円のパワーカップルの2人はペアローンでの購入を検討していましたが、双方の両親から猛反対され、マイホームや住宅ローンの事情に詳しい専門家への相談を勧められました。

●前編:【“2億円の新築タワマン”を35年ペアローンで…物件購入目前のパワーカップルに猛反対した「意外な人物」】

タワマン購入に真っ向から反対する双方の親

私は都内の私立高校の教師です。旅行会社に勤務する2つ下の夫とは、もうすぐ結婚3年の革婚式を迎えます。年明けには第1子も生まれる予定です。

結婚後はお互いの職場からドアツードアで30分以内のタワマンを賃貸していましたが、子供が生まれるのを機にマイホームの購入を考えるようになり、今年のゴールデンウィークから物件探しを始めました。

内覧したのは専ら新築のタワマンでした。そして、幸運にも今の住まいの近くで「ここなら!」という物件を見つけたのです。

託児所やキッズルーム、小児科のクリニックも入る子育て環境の整備された物件です。近年のマンション価格の高騰を受け、高層階の部屋だと販売価格が2億円に上っていますが、わが家は世帯年収が1800万円近いこともあり、2000万円の頭金を入れれば残りの1億8000万円はペアローンを組めるという話でした。

そこで初孫誕生を楽しみにしている双方の親に資金援助も期待しつつ相談したところ、「2億円近い借金を抱えるなんて、とんでもない」と真っ向から反対されてしまいました。

そして、うちの母と一緒に、住宅購入や住宅ローンなどに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の小室さんに相談に行くことになったのです。

お金の専門家ということでかっちりした真面目な人を想像していましたが、実際に会ってみると、小室さんは私たち夫婦と同世代で、ファッションもラフな感じでした。

ひょっとして私たちに肩入れしてくれるかもと淡い期待を抱いたのもつかの間、いきなり、「いい物件だけれど、自分が渡部さんだったら今は買わない」と言われてしまいました。

FP小室さんが「今ではない」とアドバイスする理由は…

「ええっ、いい物件なのにどうしてダメなんですか?」と食い下がると、小室さんはこんなふうに答えたのです。

「よく持ち家と賃貸、どっちが得かなんて言われてますよね。僕は不動産会社の出身ですから、ガチガチの持ち家派です。渡部さんにもいずれはマイホームの購入をお勧めしたいと思いますが、今じゃないんですよ」

そして、丁寧にその理由を説明してくれました。

「渡部さんのように新居で子育てをスタートしたいと考える人は実際に多い。でも、僕はそれを『悪魔の選択』と呼んでいます。子供を持つ前と持った後では大きく価値観が違ってくる可能性があります。特に渡部さんのようなパワーカップルの場合、子供中心の生活になることで、乗る車も、よく行くお店やレストランも、全く変わってしまう人が多いんです」

「僕の知り合いのバリキャリ夫婦は、ご主人が関西に転勤になった時に、奥さんの方が『ワンオペ育児は無理!』とあっさり仕事を辞めて着いていきました。子供が生まれたことで人生観が変わり、スローライフを志向して地方に移住した人もいます。いずれも極端なケースですが、要は、子育ては実際に始めてみないと不確定要素ばかりだということです」

「お二人とも今のような働き方を続けていくのなら、家の近くに夜遅くまで預かってくれる保育園があった方がいいし、休日や夜間も診療してくれる小児科があると便利ですよね。就学前は奥さんの実家の近くに住んでいれば、いざという時にはご両親の手を借りることもできます」

「子供はあっという間に大きくなります。どこそこの私立に通わせたいと考えているなら、通学のしやすさにも配慮しないといけません」

「渡部さんは、今、僕が言ったようなことを全てチェックした上で、このタワマンを選びましたか?」

そんなふうに畳みかけられるとぐうの音も出ません。

小室さんが指摘した高層階症候群とペアローンの問題点

さらに小室さんは「鵜呑みにする必要はありませんが、こういう研究があることも知っておいた方がいいでしょう」と、タワマンで育った子供が健康不良や近視になりやすい、自宅にこもりがちで発達障害を起こしやすい、成績不良に陥りやすいといった、いわゆる“高層階症候群”について分かりやすく解説した記事のコピーも渡してくれました。

私と小室さんのやり取りを聞いていた夫が「確かに、僕らのマンション選びには“子供目線”が欠如していたかもしれません」と白旗を上げるに至り、夫の隣に座るうちの母はますますにんまりです。

「小室先生、この住宅ローンについてはどう思います?」

意気揚々とした母の問いかけに、小室さんは資金計画書を開いて次のような説明を始めました。

住宅ローン金利は当面上昇していく可能性が大きく、今の金利水準だと借入額は年収比で7倍以内には抑えたい。私たちの合計1億8000万円近い借り入れは、明らかにオーバーローン状態のように思える。金額が大きいだけに、今後も現状かそれ以上の収入を得ていくことを前提としたローンはリスクが高い。

確かに、くだんのタワマンを購入した場合、管理費や修繕積立金を含めると毎月の住居費は今の1.5倍近くに膨れ上がります。これから子育て費用もかかりますから、私たちのどちらか一方が病気になったり、失業したりしたら大変です。

小室さんはペアローンの問題点についても分かりやすい形で指摘してくれました。

「渡部さんのような高収入カップルの場合、うまく活用すればより高額のローンを組めるのがペアローンの大きなメリットです。一方で、ローンにかかる諸経費は1人で組む時の倍になりますし、どちらかに不測の事態が生じた場合、もう片方の負担が大きくなってしまいます。何より一番のリスクは、ご夫婦が離婚した場合です。片方にだけ返済義務が残ってしまい、物件を手放そうとしてもローン残高が販売価格を大きく上回って売るに売れない可能性があります」

思わず夫と顔を見合わせました。不動産会社の担当者からはそんな話は一切聞かされていませんでした。プロの助言とはこういうものなのだなと妙に納得した次第です。

助言を受けてタワマン購入は再考することに

「大変参考になるお話をありがとうございました。購入は再考します。子供が生まれて新しい家を買おうとなったら、必ずまた相談に来ます」

夫が丁寧にお礼を言うと、小室さんはこんな言葉をかけてくれました。

「不動産業界では、家との出合いを『一期一会』というんですよ。実際、1つとして同じ不動産はないわけですしね。こうしてご縁ができたわけですから、ぜひ渡部さんの一期一会のお手伝いをさせてください」

一期一会、いい響きの言葉だなと思いました。

結果として双方の親の思惑通りになったのはしゃくですが、私たちにとっては小室さんとの出会い自体が一期一会であり、これからの人生でこのご縁を大切にしていきたいと思います。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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