株価急落時は“「S&P500」離れ”が目立つ? 「オルカン」が流出を抑えられた理由は? 8月投信概況
Finasee / 2024年9月19日 7時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年8月の公募ファンドの純資産残高は98兆9739億円で前月比9967億円減少した。2カ月連続で残高減になった。資金流出入額は、月間で約1兆960億円の資金純流入(前月の流入額は約1兆6240億円)だった。
資産別には「外国株式型」が51兆9944億円で残高が前月末比0.73%減少した他、「ハイイールド債券」が同4.28%減、「エマージング債券型」が前月末比3.90%減、「エマージング株式型」が前月末比3.67%減少した。資金流出入では資産別にみると「外国株式型」(約7270億円)、「国内株式型」(約2280億円)、「複合資産型」(約910億円)の順で資金流入があったが、「外国株式型」は前月の約1兆2270億円から流入額を大幅に減額した。「国内株式型」は前月の約1490億円から流入額が増額した。一方、資金流出は「不動産投信型」(約280億円)、「国内債券型」(約68億円)、「ハイイールド債券型」(約45億円)の順に資金が流出した。
◆「全世界株式」より「米国株式」の流入額が大きく減少個別ファンドの資金流入額でトップは、「外国株式型」の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の約1520億円(前月は約2240億円)、そして、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の約1181億円(同約2000億円)、「アライアンスB・米国成長株投信D」の約795億円(同約1680億円)、「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)」の約482億円(同589億円)の順で前月と変わらなかった。流入額の順位は変わらないものの、4ファンドともに流入額が減額しているが、その減額の比率は「全世界株式(オール・カントリー)」(32.1%減)より「S&P500」(41.0%減)、「世界厳選株式」(18.2%減)より「米国成長株」(52.7%減)というように、米国株式に特化したファンドが、より大きな減額率になった。
◆M7がけん引してきた米国ハイテク株に一服感?米国株式については、2023年に「マグニフィセント・セブン(M7)」(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディア)と呼ばれる大型ハイテク株に売買が集中し、「M7」の値上がり率だけで「S&P500」の値上がりのほとんどを説明できてしまうといわれた。集中的に物色され、株価も大きく値上がりしたために、「M7」については「株価が値上がりし過ぎて割高」という指摘が強まっていた。
ただ、割高と言われても株価は値上がりし続けたため、「買うから上がる、上がるから買う」という需給相場になっていた。需給相場では、株価が上がっている間はどんどん上値を伸ばすが、上昇に勢いがなくなると一気に株価が急落するという傾向がある。積立投資が普及しているため、一気に資金流出入が逆転することは考えづらいものの、8月の資金流入の減少が、この後、資金流出に転じるような動きにならないかどうか注目したい。
また、前月よりも資金流入額が増大した「国内株式型」は、株価が急落して底打ちをした8月5日の週に約1640億円の資金流入を記録するなど、短期間に20%超の急落となった株価に「押し目買い」の動きが強まったと考えられる。資金注入額上位ファンドも「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」(約154億円)、「日経225ノーロードオープン」(約148億円)、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」(約140億円)など、インデックスファンドに資金が流入した。また、「その他」に分類されるブル・ベア型の国内株式ブル型である「SBI日本株4.3ブル」(約146億円)、「楽天日本株4.3倍ブル」(約114億円)への資金流入も目立った。
◆「複合資産型」の分散効果に見直しも「外国株式型」と「国内株式型」に続く資金流入となった「複合資産型」は、「のむラップ・ファンド(普通型)」(約123億円)、「あおぞら新グローバル分散ファンド(限定追加型)2024-07」(約113億円)、「のむラップ・ファンド(積極型)」(約108億円)などに資金流入が目立った。
「複合資産型」は、株式や債券、REIT(不動産投信)などに資産を分散するため、これまでのように米国を中心とした外国株式が勢いよく上昇しているような局面では、その資産価値の成長力で見劣りし、人気が高まりにくい資産クラスだった。ただ、株式だけではなく、インカム収入が期待される債券やREITにも投資することで、株価が下落するような局面にあっては、その株価下落の影響を緩和し、全体的に安定的な運用成果が期待される。このため、リスク資産に不慣れな人が最初に投資する資産として選ばれる傾向も強く、地方銀行などでは売れ筋の上位に「のむラップ・ファンド」が入っているところもある。8月に資金流入が拡大したのは、日本株式や米国株式の急落によって株式市場の先行きを不透明に感じた投資家が少なくなかったため、より安定的な資産を求める機運が高まったということがあっただろう。
このカテゴリーには「投資のソムリエ」(2022年1月に純資産残高約6525億円、現在は3864億円)、「東京海上・円資産バランスファンド(毎月)(愛称:円奏会)」(2020年2月に約7500億円、現在は2823億円)、「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」(2007年5月に約1兆4000億円、現在は2469億円)などの巨大ファンドがあった。株高局面で大きく残高を減らし、また毎月決算型は新NISAの対象外になるなど、制度的な逆風もあるが、1年決算型など新NISA対象のコースもある。米国に景気後退懸念がくすぶるなど、株式市場の先行きが楽観できないだけに、「複合資産型」にどこまで人気が戻っていくのか注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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