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「似合わなすぎる」マッチングアプリ婚活に失敗したアラフォー男性を一蹴…バツイチ同級生の「核心を突いた言葉」

Finasee / 2024年12月19日 18時0分

「似合わなすぎる」マッチングアプリ婚活に失敗したアラフォー男性を一蹴…バツイチ同級生の「核心を突いた言葉」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

職場の既婚者たちが結婚や子育てに励む姿を見て、ふいにうらやましくなってしまった正志(38歳)は、手軽に登録できるマッチングアプリで婚活を始めた。

外資系企業に勤め、平均よりは高い年収がありながら、これといって趣味もなくお金の使い道がなかった正志は、モテるためにまずは身だしなみからと、高級サロンに足を運び、スーツや時計、車など高級なアイテムを買いそろえていく。

しかし寄ってくる女性は、年収を聞いてきたりと、ときに露骨に金目当てな女性ばかりだった。正志は婚活をすればするほどすり減り、ついには婚活を辞めてしまった。

●前編:「年収もすごいんじゃないんですか?」結婚を焦るアラフォー男性が初めての婚活で直面した「残念な現実」

偶然再会した同級生はバツイチだった

マッチングアプリを辞めてから数か月。

正志は婚活のことを忘れたふりをしながら、再び仕事に没頭する日々を送っていた。夢中で買い集めた装備品たちは、今やクローゼットや車庫の中に死蔵され、出会いのための高級志向はすっかり鳴りを潜めていた。

そんなある土曜日の昼下がり、たまたま立ち寄ったチェーン店のカフェで、正志は声をかけられた。  

「あれ? 正志、だよね?」  

顔を上げると、目の前には懐かしい笑顔があった。高校時代の同級生、大原雅子だ。会うのは十年近く前の同窓会以来だったが、見た目は変わっていなかった。

柔らかなベージュのセーターにデニムを合わせた、飾り気のない服装。それでも、どこか堂々としていて目を引くものがある。

「おお、久しぶり」  

思わず声を上げると、雅子は椅子を引いて正志の向かいに腰を下ろした。

「本当に久しぶり。偶然だね、こんなところで会うなんて」

驚きと喜びが混じった表情で言う雅子に、正志も自然とほほ笑みがこぼれた。

「意外と分かるもんだよな。見た瞬間、あれ、大原だって思ったよ。あぁ、今は大原じゃないんだっけ」

「あー……実は去年旦那と別れてさ……。だから名字は大原だよ。子供がいるわけでもないから、今は1人でのんびりやってる」

「そうだったのか、ごめん」

さらりと言う雅子の言葉に、正志は思わず目を見開いた。

随分前に彼女が結婚したという話は聞いていたが、まさか離婚していたとは。

「険悪な感じで別れたわけじゃないし、全然気にしないで。まあ、でも、結婚生活って難しいなって実感したよね」

「そうか……大変だったんだな」

正志はそれ以上の気の利いた言葉を返すことができなかった。

高校時代、明るく面倒見の良い雅子は常に周囲の人気者だった。そんな彼女が結婚に失敗したという事実が、正志には妙に現実味を欠いて感じられた。

「正志はどうなの? 結婚とか、してないんだっけ?」

雅子の言葉に、正志は乾いた笑いを浮かべた。 

この年になれば、まず聞かれて当然の内容だろう。普段ならおっくうに思えただろうが、このときの正志は不思議と素直に胸の内を吐露していた。

「してないよ。まあ、婚活はしてたけど、全然ダメだったな」

「婚活?」  

少し首をかしげながら聞き返す雅子。高校生の頃と変わらないそのしぐさが懐かしくて、思わず口元が緩んだ。

「そう。マッチングアプリでね。自分なりに頑張ってみたんだけど、結局うまくいかなかった。なんというか……相手が自分を見てくれてる気がしなくてさ」

「そういうの、ちょっとわかるかも。離婚して思ったんだけどさ、結局、どんなに条件が良くても、一緒にいてホッとできる相手じゃないと続かないんだよね」  

正志はその言葉を聞き、少しだけ肩の力が抜けた気がした。  

「でもさ、婚活のために自分を変えようとしたのは偉いよ。具体的にどんなことしたの?」  

雅子が問いかけると、正志は少し照れながらも正直に答えた。旧友相手に取り繕っても仕方がないと感じたからだ。

「髪型を変えたり、高いスーツを買ったり、あと車も奮発したり……モテるためにいろいろやったけど、今思えば全部無駄だったな」

「え、ちょっと待って。正志がそんなことしたの? 似合わなすぎる」  

ストレートなせりふとともに吹き出した雅子につられて、思わず正志も笑った。写真を見せてとせがまれて見せれば、雅子の爆笑は止まらなくなる。

「笑いすぎだから。マッチングアプリって写真で判断されるわけだろ? だから気をつけないといけないと思ってさ」  

「でも、全然らしくない。あっ、私が服を選んであげようか?」  

雅子の意外な提案に、正志は少し戸惑った。

「今度一緒に買い物に行こうよ。私、実は結構そういうの得意なんだよね。はやりに乗ってカラーリストの資格とか取っちゃったし。ちゃんと自分に似合うものを選んで着れば、それなりに見栄えすると思うんだよ」

「へぇ、すごいな。じゃあプロの力を借りようかな」

「任せて任せて」

予定を決めようとスマホを取り出した雅子を眺めながら、正志は高校生のときに戻ったようなわくわくした気持ちを、年がいもなく感じていた。

結婚とか、そんなに焦らなくてもいいんじゃない?

次の週末、2人は一緒にショッピングモールを回ることになった。

雅子は思いのままになるマネキンを手に入れて少し楽しんでいるようにも見えたが、選ぶ服はどれも正志の肌になじむのか。鏡の中には派手さこそないがどこか肩の力が抜けた自分の姿が映っていた。「自分らしい」というのは、こういうことなのかもしれないと思った。

雅子に言われた通りの洋服を一式買いそろえ、休憩がてらフードコートに立ち寄った。

「で、続けるの? 婚活?」

「まあ、そうだな。もう1回やってみてもいいかなとは思ってる」

「ふーん、でもさ、結婚とかそんなに焦らなくてもいいんじゃない?」

「いや」と、反射的に口を開いた正志に、雅子が言葉を重ねた。

「本当に良い相手を見つけたいなら、自分をちゃんと見せることが大事なんじゃない? 着飾ったって、意味ないと思うけどなあ。スペックだけで人の価値が決まるわけじゃないし」

雅子の言葉は、核心を突いていた。やはり結婚と離婚を経験しただけあって、その言葉には妙に含蓄がある。

それに正志も身をもって理解した。実際、見えを張って自分を大きく見せても、なにも良いことはなかった。

だがそれも当然だろうと今になってみれば素直に思える。

正志自身、相手は自分の持ち物や見た目で判断してくるだろうと考えて着飾った。アプリで出会った金目当ての女性たちに不満を持っていた正志だったが、今思えばお互いさまだった。

「確かに、そうかもな……」

正志は改めて雅子を見つめた。

その笑顔は昔と変わらず、どこか安心感を与えてくれるものだった。

「雅子、服のお礼に今度おごらせてよ。何かおいしいものでも食べに行こう」

「えっ、いいの? それじゃあ、おでん食べたい! 私、安くておいしい店知ってるんだよね」

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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