【新NISA2年目へ】「オールカントリーやS&P500だけ」はもったいない―これらの“弱点”を補完する「2つの投資先」
Finasee / 2024年12月18日 16時30分
Finasee(フィナシー)
2024年は、日経平均株価がついに34年ぶりの高値を更新し4万円の大台を突破したほか、米国のS&P500指数やナスダック総合指数も過去最高を更新し続け、新NISAにとって最高のスタートダッシュとなった。政治関連のニュースにマーケットが翻弄(ほんろう)される場面もあったが、総じて多くの投資家は順調に成功体験を積めている。
筆者は今年1年をかけて、北は北海道から南は福岡まで、新NISAをテーマとした講演を行ってきた。そこで特に印象的だったのは、月日の経過とともに参加者から寄せられる質問の傾向に変化が見られたことだ。春先は制度概要と、商品では「オールカントリー」に関連する内容が大部分を占めていたが、夏ごろからはインデックス以外の商品や、商品の見直しに関する質問が増えた。
各地の講演で筆者は、「オールカントリー」や「S&P500指数」に代表される王道のインデックスファンドは、「『万能』ではなく、最も『無難』な商品」であると繰り返し述べてきた※。
※【「新NISAはオルカン1本でOK」はホント? 向いている人・向いていない人の決定的な違いとは】ご参照
資産形成の第一歩を踏み出すには適当だが、長期資産形成を実践する上で、これらの商品に縛られる必要は必ずしもない。むしろ、興味を持った地域や資産が出てきたら、少額から投資をしてみることをおすすめすると伝えてきた。そうして経験を積んでいけば、途中で多少失敗することがあっても、投資の引き出しが増え、長い目で見てマネーリテラシーの向上にもつながるからだ。
そこでここからは、NISA初年度の振り返りも兼ねて、今年特に質問が多かった2種類の投資信託、インド株式ファンドと高配当・連続増配株式ファンドについて、活用方法も併せて解説することとする。
優良なアクティブファンドも多い「インド株式ファンド」長期資産形成を実践する上では、「リスクは取れるうちに取っておく」という考え方も大切だ。その意味で、新NISA元年に投資先としてインドに注目が集まり、実際にインド株式ファンドの資金流入が増えたのは良い傾向であったように思う。
●インド株式ファンドの純資産残高推移
※QUICKのデータを基に楽天証券資産づくり研究所作成NISA元年の大ヒット商品となった「オールカントリー」が連動を目指すMSCIオールカントリー・ワールド指数は、定義上は新興国を含む全世界の株式を網羅した株式指数である。しかし、時価総額加重ベースゆえ、実態としては米国が全体の6割超を占め、インドの割合はわずか2%程度にとどまる。指数の特性上、将来の成長性や期待値は加味されていないため、インドの将来性に期待し、先回りして投資をしたいなら「オールカントリー」のような広域の株式インデックスに追加する形でインド株ファンドを取り入れることをおすすめしたい。
人気の中心はインド株式市場の代表的な指数であるNifty 50(ニフティ・フィフティ)をベンチマークに掲げたインデックス型だが、実はインドを含む新興国株式は、インデックスを上回る成績を収めている優良なアクティブファンドが多い。米国株式のように、一部の銘柄群が株式市場全体を事実上「支配」するような状況にはなく、運用者の目利きが機能する余地が残されているためだ。また、新興国投資においては、投資先企業のガバナンスリスクを見極める必要もあることから、投資先の質を維持するという面でもアクティブファンドは有効である。
インド株式市場は、10月以降軟調な動きをしており、現状では「高値づかみ」の状態になっている投資家も多いと思われる。このように、新興国株式特有の価格変動の大きさがあるからこそ、積立による時間分散も同時に実践することが望ましい。国の成長を見守るつもりで、長期投資を心がけてほしい。
ポートフォリオの緩衝材に「高配当・連続増配株式」高配当株式と連続増配株式は、「聞いたことはあるけれど、違いがよく分からない」という声を耳にすることが多かった。
前述のインド株式ファンドが「攻め」の資産なら、高配当株式や連続増配株式はいずれも、「守り」の要素が強い、株式市場の下落局面で下値抵抗力を発揮するタイプの資産と言える。高配当株式と連続増配株式は、同じカテゴリーに属する資産ではあるが、その性質は微妙に異なる。
高配当株式とは、株価に対する配当金の割合(配当利回り)が高い銘柄を指す。配当利回りは「一株当たり年間配当金÷現在の株価×100」という計算式で算出され、3%以上の銘柄を高配当株と表現することが多い。業種としては、電気・水道・ガスなどのインフラ関連、製薬・医薬品、銀行などが含まれる。
これに対し、連続増配株式とは、年間の1株あたりの配当金額が増え続けている銘柄を指す。先の高配当株の場合、業績が振るわないと配当を見送ったり、減配したりすることもあるが、連続増配株式は、1株あたり利益が減少しても配当が毎年増額することから、株主還元に対する意識がより高いという見方もできる。主に米国では、25年以上連続増配の銘柄は「配当貴族(Dividend Aristocrats)」、50年以上連続増配の銘柄は「配当王(Dividend Kings)」と呼ばれ、投資信託やETFを通じて投資できる。
●「高配当株」と「連続増配株」の違い
筆者作成高配当株式と連続増配株式には共通の銘柄も多いが、連続増配の方が下落局面でより強固な下値抵抗力を発揮する傾向にある。2024年の米国株式市場は、ハイテク株を中心とした成長株優位の相場が続いたため、連続増配の成績は振るわなかった。しかし、今後長期にわたり資産形成を続けていく上ではポートフォリオの「緩衝材」としての機能を発揮する場面も訪れるだろう。
以上見てきた通り、インド株式も高配当・連続増配株式も、S&P500や「オールカントリー」などといっしょに保有しても「不協和音」が起きにくく、相性はむしろ良い。2025年のNISA戦略を検討する上で参考にしてほしい。
篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』『FP&投資信託のプロが教える新NISA完全ガイド』(ともにSBクリエイティブ)。
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