2025年、世界経済のカギ握るトランプ政策の“優先順位” 「不確実性」に潜むリスクとチャンスを探る
Finasee / 2024年12月26日 11時0分
Finasee(フィナシー)
2024年は中央銀行による金融正常化が進展
――2024年のマーケットについての総括からお願いします。
2024年は、新興国に続いて先進国の中央銀行が金融緩和を開始しました。その一方で日本は金融引き締めに転じましたが、それまでの超低金利状況の是正という面を考慮すると、グローバルでは中央銀行の金融政策正常化の年だった、といえるでしょう。
この背景としては、世界的な経済成長の鈍化と、それに伴うインフレの鎮静化が挙げられますが、金融政策正常化の動きは、当初の想定からはかなり遅れました。その理由は、経済成長は鈍化したものの想定より堅調に推移したこと、そのためいまだインフレへの警戒を緩められない状況が続いていることが挙げられます。
MFS債券運用部門共同最高投資責任者(Co-CIO)ピラー・ゴメス・ブラボー氏――世界経済が予想外に堅調だったのはなぜでしょうか。
主要国の財政政策が要因だと考えています。例えば米国の場合、財政の景気刺激効果が長期間持続しており、今後も続く見通しです。大統領選の影響で、消費者に対する財政支援が強く、それが特にサービス業の好調さに反映されています。実質所得が上がった消費者がサービス業への支出を増やし、振るわない製造業をカバーして景気を支えている状況です。
――債券市場についてはどうでしょうか。
底堅い米経済を反映し、足元ではクレジットなどは株式と同様、割高なバリュエーションとなっています。マクロ環境が良いため投資適格社債のみならずハイイールド社債もバリュエーションが上昇し、スプレッドがタイト化しています。その影響で相対的に米国債のイールドも高めに留まっています。投資家にとってはトータルリターンからみても魅力的な金利水準といえるでしょう。
2025年の世界経済の見通し――カギを握るトランプ政権の政策の優先順位――25年の世界経済および債券市場をどうみますか。
まず、米国経済の基本的なシナリオは高成長の継続です。足元の経済指標をみる限り、財政の景気刺激効果は続いており、経済が底堅く推移する中、インフレ率は緩やかに下落していくというのがベースケースになります。
――米国経済のリスクとしてはどんなことが想定されますか。
堅調な実体経済の一方で、インフレ再燃と財政赤字拡大の不確実性には注視が必要です。具体的には、第2期トランプ政権の政策が、どういう順番で実施されるのか、これが重要なポイントです。例えば移民対策や関税強化を先行させ、インフレ再燃の可能性が強くなった場合、FRBが金融緩和をストップする事態も考えられます。それが米国の経済成長を下押し、最悪のケースではリセッションを招く可能性があります。
トランプ次期大統領の政策には、経済成長を促す政策もありますが、そうした政策が効果を発揮する前に、移民対策や関税強化が行われるとリセッションに陥る可能性も出てくる。こうしたリスクは、まだマーケットには十分理解されてはいません。
――米国のみならず、グローバル経済にも影響が及びそうですね。
規制緩和や減税が先か、あるいは移民対策や関税強化が先かによって、グローバル経済への影響も違ってきます。
現状、欧州経済は減速方向の半面、日本は上向き、そして新興国は堅調という見方をしています。一方で、米国の関税政策が早期に実施された場合、最も影響を受けるのは欧州経済です。関税の内容によっては景気後退につながりかねません。中国経済にも大きな影響はありますが、中国政府が25年3月に公表すると見られる経済刺激策の内容をみて動向を判断することになるでしょう。
――米国経済のメインシナリオは高成長だが、政策の順番次第でリセッションの可能性もある…となると、25年はいつにも増して不透明感が強いですね。
トランプ政権の発足後、最初の100日間、いわゆるハネムーン期間はおそらく米国経済の一強状態に近いと考えられます。一方でその後、夏場以降は政策の順序や政策の解釈などの影響が大きくなり、米国およびグローバル経済の不確実性は高まるでしょう。ご存じのように、トランプ氏は、SNSなどでも政策に関する発言を積極的に行うタイプなので、その意味でも予測は困難です。25年のマーケットを語るうえで「不確実性」がキーワードになるのではないでしょうか。
――そんな中、日本の投資家が注目しておくべき経済指標やイベントはありますか。
米国の労働市場の指標、欧州の地政学リスクに関する情報などです。さらに中国の景気刺激策や地方政府における債務問題も要注目でしょう。
株式市場については一時的な値動きにとらわれる必要はありませんが、長期的なファンダメンタルズの実体経済に関連する動きは重要です。また、インフレを測る上で米国の住宅市場も注視すべきです。経済成長の強さを示す指標となる原油価格にも注目が必要でしょう。
◆これらの状況から25年はどんな地域・アセットに妙味があるのかについては<後編>
【2025年は勝ち組・負け組が鮮明に…プロに聞く「投資妙味」のあるセクター、銘柄選別の視点とは】
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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