2025年、世界経済と金融市場のキーワードは「緩やか」 一方、トランプ政策次第でどう変わる? 楽天証券経済研究所・愛宕伸康氏に聞く
Finasee / 2024年12月26日 12時30分
Finasee(フィナシー)
米国経済の強さが際立った2024年 市場は各国の金融政策に振り回された1年に
――2024年を振り返って、世界経済および金融市場の主な動き、流れは?
2024年を振り返ると、実体経済面ではなんといっても米国の予想以上の強さが印象に残った一年だった。それを受けて、1~3月にも米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じると見ていた市場予想が大幅に後ずれし、年前半はドル円相場がほぼ一本調子で下落。6月には1ドル160円を超える円安となった。
米景気がFRBの大幅利上げにもかかわらず崩れないという異例の事態となった背景には、新型コロナ禍で実施された現金給付を背景とする過剰貯蓄、株価上昇に伴う個人金融資産残高の上振れ、労働参加率低迷による雇用環境のひっ迫がある。
金融政策面では、FRBや欧州中央銀行(ECB)など海外中銀が利下げに転じる一方で、日本銀行は3月にマイナス金利解除、7月に追加利上げと、各国の金融政策がそれぞれ大きな節目を迎えた1年となった。
年後半は、欧米中銀の追加利下げ、日銀の追加利上げを巡り、金融為替市場が右往左往する展開となった。
減速傾向が否めない2025年の世界経済 円安圧力は残存の見込み――2025年の世界経済の見通しは?
24年の実質GDP成長率が2.8%だった米国経済は、トランプ新政権による関税引き上げや不法移民強制送還などの影響から減速し、25年は前年比2.2%になると予想している。
またユーロ圏は、インフレは落ち着いていくものの低成長が続き、25年の成長率は1%程度と予想する。不動産市場が低迷し、消費マインドに改善の兆しが見えない中国も、25年の実質GDP成長率は4.3%と、24年の4.8%から減速するだろう。
金融政策については、FRBは景気に中立的な金利水準まで利下げを行おうとするが、拙速に利下げを進めるとインフレ再燃リスクが高まるため、25年の利下げペースは相当ゆっくりしたものとなろう。したがって、長期金利の低下も緩慢となり、円安圧力が残存することになると予想する。
実質賃金の伸びが消費を下支え 日本の実質GDP成長率は1%程度に――2025年の日本経済の見通しは?
25年の日本経済は、まずインフレが落ち着いていくにしたがって実質賃金の伸びがプラスで推移し、消費を下支えする。インバウンド需要や企業による旺盛な設備投資も景気を押し上げることから、実質GDP成長率は1%程度になると予想する。
日銀は現在、25年度後半にかけて「物価安定の目標」である消費者物価上昇率2%が持続的・安定的に実現するとの見通しに基づき、景気に中立的な政策金利までの利上げを実施中で、25年末までに政策金利を0.75%もしくは1%まで引き上げると見ている。
緩やかな金融政策で株価・景気は堅調も、トランプ政策次第で「不安定化」リスクも――2025年のマーケット展望は?
FRBが緩慢な利下げを継続するもとで米国長期金利は緩やかに低下していき、米株価は堅調に推移するとみている。一方、日本株も緩やかな景気拡大のもとで堅調を維持する。日銀はゆっくり利上げを進め、日本の長期金利は緩やかな上昇傾向をたどる。この結果、ドル円相場は緩やかに上昇(円高)することが想定される。
リスクとしてはやはり、第2次トランプ政権の政策運営を指摘しておきたい。関税引き上げなどによって想定以上にインフレが発生するようなことになれば、米長期金利が不安定化したり、FRBが再利上げに踏み切らざるを得なくなるおそれもある。大幅減税などで財政がこれまで以上に悪化すれば、それも長期金利を上昇させ得る。その結果、米国の金融システムが不安定化したり、為替相場が乱高下するようなことになれば、日本の景気、市場、日銀の金融政策運営にも大きな影響を及ぼすことになる。
楽天証券経済研究所
チーフエコノミスト
愛宕 伸康氏
神戸大大学院経済学研究科修了後、1991年日本銀行に入行。政策委員会審議委員スタッフ、物価統計課長、日本経済研究センター主任研究員(チーフフォーキャスター、出向)、横浜国立大学派遣講師、人材開発課長などを歴任。岡三証券チーフエコノミスト、いちよし証券上席執行役員チーフエコノミストを経て、2023年10月より現職。東京財団政策研究所主席研究員なども兼任。著書に『日本経済 30の論点』(日本経済新聞出版、共著)等。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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