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「物流2024年問題」による勤怠管理サービス需要を捉えたヒューマンテクノロジーズ

Finasee / 2025年1月17日 6時30分

「物流2024年問題」による勤怠管理サービス需要を捉えたヒューマンテクノロジーズ

Finasee(フィナシー)

 

ヒューマンテクノロジーズ(証券コード:5621)について、今期および来期にわたる業績予想について紹介する。同社は2011年12月に設立され、2023年12月に東証グロース市場に上場している。企業向けのクラウド型勤怠管理サービス「KING OF TIME」を開発・提供する「KOT-SaaS事業」が売上高全体の約88%を占める中核事業となっている。

 KOT-SaaS事業では、KING OF TIMEを月額300円/IDで提供している。競合他社が機能追加によるアップセル方式を採る中、同社は全機能をワンプライスで提供する戦略を採用している。勤怠管理から給与計算までをシームレスに管理できる機能性と、直販・販売店・OEMの3チャネルを活用した販売戦略により、勤怠管理SaaS市場で10年連続シェアNo.1を獲得している。

特に注目すべき点として、課金方式を従来の「打刻ベース」から「登録ベース」へ段階的に移行中であり、この施策により課金ID数の拡大が見込まれる。また、プレミアムサポートや電子契約サービスなど、付加価値サービスの展開も進めている。

直近の2025年3月期第2四半期決算では大幅な増収増益を達成。新規案件はアナログ管理からの移行需要が依然として多く、特に物流の「2024年問題」の影響が大きく、加えて導入難易度が高いとされる建設・医療・運輸業からの導入が増加している。

   

上記が今回行った業績予想である。

KOT-SaaS事業はKPIとして課金ID数が四半期ごとに開示されており、売上高を課金ID数で割ることによりおよその単価を算出している。同社は2023年10月から直販での新規契約の課金方式を打刻ベースから登録ベースへ移行を始めており、2025年4月から既存契約も含めて全面移行開始を計画している。理論的には、登録ベースへの完全移行後は、休職者や短期アルバイトなども含めた全登録従業員が課金対象となるため、利用ID数にかなり近い数値が課金IDとなるはずだ。

しかし同社は直近決算説明資料で、「2025年度下期以降で2割程度増加としていた課金ID数については見直し中」と言及し、当初想定していた課金ID数成長率を下方修正する可能性を示唆している。登録ベース移行による課金ID数増加に伴い価格交渉は発生するものの、同社は業界最安値(月額300円/ID)でサービスを提供しているため、単価維持は可能と見られる。また値上げも予定されていないことから1課金ID数当たりの売上高は現在の水準で維持されると予想した。課金ID数の前四半期比(QoQ)成長率は登録ベースへの全面移行により、2026年第1四半期において大幅増を予測し、10%増と置いた。

また、2026年3月期の費用面では、電子契約サービスの開発資産(380百万円+α)の減価償却が2025年第4四半期から3年間に亘って行われることに加え、広告宣伝費として310百万円の投資を計画している。さらにシステム開発の前倒しによる外注費の増加も見込まれる。これらの費用増は一時的なものであるが、短期的な利益率への影響は避けられないと考えられる。

以上の予想と会社予想、四季報予想との比較を以下に示す。

2025年3月期のわれわれの予想は、売上高、営業利益ともに会社予想、四季報予想を上回り、強気となった。

今回の予想では2026年3月期において、広告宣伝費として約310百万円投下することを念頭に置いているが、タイミング次第で利益が出る時期に差が出てくるだろう。

現在2026年3月期の課金ID数における平均QoQ成長率を5.0%と置いているが、これを4%に下方修正したとしても、営業利益は1,104百万円と依然として四季報予想を大きく上回る。加えて、同社は2022年8月にタイに現地法人を設立しており、決算説明資料の中で東南アジア展開について言及している。特にタイ展開については現状では業績に与える影響は軽微とされているものの、日系企業からの導入実績が着実に積み上がっており今後は日系企業を中心とした展開により新たな収益の柱となることが期待できる。また東南アジアの労働人口は日本の約4倍規模であり、人件費高騰に伴う労務管理のニーズも高まっていることから、中長期的な成長ポテンシャルは大きいと考えられる。

一方で、2025年下期に予定されている外注費(システム開発の前倒し)やセキュリティー強化(ゼロトラスト対応の前倒し)等の費用については、発生時期や金額の見通しが立てづらく、これらの費用発生時期によって各四半期の利益水準が大きく変動する可能性がある。

投資判断を下す際にはこのような費用発生のタイミングと規模についても慎重に見極める必要があるだろう。

hands

オルタナティブデータのプロバイダー。購買情報や位置情報といった様々なデータを株式投資に役立つ指標として加工し、Webサービス「PERAGARU」を通じて機関投資家や個人投資家に提供している。
 

橋本 達也/株式会社hands アナリスト

機関投資家向けの日本株リサーチサービス「PERAGARU」の運営メンバーでアナリスト。主に小売と食品を主要領域とし、オルタナティブデータを用いた分析が得意。

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