札幌が連敗ストップ…反転攻勢は可能? 転機になり得る効果的な“ミシャ式”の一策【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年4月8日 7時20分
■ホームのG大阪戦で1-0勝利、開幕7試合目にして初白星
北海道コンサドーレ札幌はホーム札幌ドームで行われたJ1リーグ第7節のガンバ大阪戦に1-0で勝利。連敗を5でストップするとともに、開幕7試合目にして初白星となった。最初に正直な評価を言ってしまうと、CK(コーナーキック)からG大阪がゴールネットを揺らし、長いVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)チェックの結果オフサイドの判定になるまでほぼG大阪のペースと言って良かったし、札幌がボールは持ってもゴール方向に加速していかないシーンが目立っていた。
右サイドのMF浅野雄也、左アウトサイドでスタメンに抜擢されたMF近藤友喜からのチャンスメイクも前線と噛み合わず、DF岡村大八を中心とした粘り強い守備は目を引くが、少なくとも札幌に勝利の道筋を見出すことは難しかった。そんな状況を変えたのが後半19分の“3枚替え”だった。膠着した流れで3枚替えをするのはミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督の常套手段ではあるが、この試合は実に効果的だった。
シャドーにMF長谷川竜也とMF青木亮太が、3バックの右に古巣対戦となるDF高尾瑠が入る。これによりDF馬場晴也が左ストッパーに回り、DF菅大輝が左のアウトサイドに上がった。前線はMF駒井善成のゼロトップのような形になり、長谷川、青木との流動性が生まれた。その直後にG大阪もベンチに温存していたFW宇佐美貴史など3枚を同時に替えてきたが、札幌の矢印がより上回る結果となった。
その効果が表れていたのが後半23分のシーンだ。最終的には前線から守備参加していたMFウェルトンにクリアされたが、この攻撃に3枚替えの効果が見られた。左サイドでマイボールにした札幌は馬場からボランチのMF荒野拓馬が受けて、MF宮澤裕樹につなぐ。これに連動して、高尾が右ワイドに開いたところでパスが展開されると思いきや、宮澤は前に生じたスペースを使ってドリブルで持ち上がった。
ここで高尾はそのままステイするのではなく、右ワイドで縦パスを受ける浅野を一気に外側から追い越したのだ。G大阪のディフェンスは左サイドバックのDF黒川圭介とボランチからスライドしたMF鈴木徳真が浅野に引き付けられて、高尾を完全に逃してしまった。そのままボックスの右側まで高尾が侵入すると、長谷川が手前に引いたスペースに駒井、ゴール前の中央に青木、さらにファーサイドからは菅、さらに宮澤もうしろから走り込んでいた。
■3枚替えで本来の札幌らしさ生み出し→決勝ゴール奪取
G大阪側から見ると、右サイドバックのDF福岡将太が青木をチェックして、その代わりにウェルトンが手前スペースをカバーする形で難を逃れたが、もしウェルトンが攻め残りを選択していたら、札幌のゴールチャンスになっていただろう。話を札幌側に戻すと3枚替えの直前にも札幌が押し込んだところから荒野のクロスバー直撃のシーンはあったが、ビルドアップからの前向きな矢印と連動に変化が生まれたことで、G大阪を後手に回す効果を生んだことは間違いない。
札幌に待望のゴールがもたらされたのはその5分後だった。馬場が左ワイドに流れた青木に縦パスを付けると、中にボールを運んで、前に出てきた中央の馬場にパス。そこから荒野、高尾とつないで、右外の浅野が受ける。ここでボックス内には長谷川、駒井、宮澤、さらに青木も入り込んでいた。
ここで浅野はクロスを選択せず、ニアから動き直した長谷川につなぐ。するとここで高尾がポケットに侵入したことで、G大阪の守備にズレが生じる。この流れで長谷川のショートクロスを宮澤が福岡の外側からヘッドを叩きつける形でゴールが生まれたなかで3枚替えの3人がしっかりとチャンスに絡んだことは象徴的だった。
未勝利だった札幌がこれまで無敗を続けていたG大阪に1-0で勝利したという結果を見ると、これまでの試合と違う札幌の変化を見出したいものだが正直、試合をトータルすればG大阪側にも十分に勝機のある試合だったし、結果からシンプルな勝ち筋を物語ることは難しい。
しかし、この3枚替えで生み出したような流れを前半から作り出せるのが本来の札幌であるし、もともと前半は0-0で耐えて後半勝負といったゲームビジョンが植え付けられているチームでもない。この成功体験をここからの戦いにどう結び付けていけるのか。躍進への転機にできるかどうかは自分たち次第だろう。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
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