19年J1・MVPが復活の狼煙 パリ五輪世代とホットライン「準備はしていた」「玖生のおかげ」
FOOTBALL ZONE / 2024年4月9日 6時10分
■仲川が松木のクロスに反応し、昨年5月以来の得点を決める
FC東京は4月7日、J1リーグ第7節で鹿島アントラーズと国立競技場で対戦し2-0の勝利を飾った。この試合で2019年にJ1得点王に輝き、リーグMVPを取ったFC東京のMF仲川輝人が、昨年5月6日の第12節北海道コンサドーレ札幌戦(1-5)以来となるゴールを記録している。
仲川の約1年ぶりとなるゴールは、まさかのヘディングだった。この日、FW荒木遼太郎がレンタル元である鹿島との契約上で試合に出られず。FWディエゴ・オリヴェイラ、FW小柏剛のコンディション不良もあり、センターフォワードで抜擢された。
161センチの仲川にはディエゴ・オリヴェイラのようなポストプレーは難しい。また、今シーズン加入してゴールを量産している荒木のように中盤に引いてゲームメイクに絡んでいくタイプでもない。前半から1トップとして裏を狙い続けていたが、なかなかチームメイトとのタイミングが合わずに、ボールを要求する場面が見られていた。
「ディフェンスラインの前でボールを受けても、相手は鹿島なのであまり崩れないと思っていました。やっぱり裏に抜ける動きだったり、ペナルティエリアの角を取りに行く動きをしていかないと、相手のDFはズレていかない。それに(裏を狙うのは)僕の特徴でもあるので。タロウ(荒木遼太郎)とは違った形ですけど、チームでもそこを取りに行こうとしていました」と仲川は、その意図を語った。
後半に入ると、少しずつ仲川へのボールも増えていき、同10分には左サイドに回った松木からアーリークロスが送られると、鹿島の守備を外した仲川がヘッドでボールをゴールに流し込んだ。
殊勲の先制点を挙げた仲川は「いや、もう(松木)玖生のおかげです。アイコンタクトができて、まさかロングパスだとは思わなかったですけど、準備はしていたので。僕が合わせるだけだったのかなと思います。点を取れれば何でもいいというのはありましたが、まさか頭で取るとは思っていませんでした。本当に約1年ぶりのゴールですし、良い結果がでなかった不甲斐なさ、責任感もあったので。タロウが出られないとか、怪我人がいてとか、しかも連戦ということもあったので、普段と違うポジションですが、得点に関われたことにはホッとしました」と、白い歯を見せた。
ゴールを決めた仲川は、ゴール裏の電光掲示板を飛び越えてファン・サポーターの前に行き、チームメイトとゴールを喜び、耳に手を当ててファン・サポーターを煽るなど、ゴールセレブレーションにも時間をかけた。歓喜の時間について「(たっぷりと時間を)使わせてもらいましたけど、みんなと喜び合えたし、ファン・サポーターの前でしっかりゴールという結果を見せられたので、有意義な時間を噛み締めました」と振り返る。
耳に手を当てるパフォーマンスについては「『どうだ』『ここにいるぞ』っていう意味もあるし、俺の名前を叫んでほしかった。自分が結果を出せていなかったことで、批判をしてくる人もいた。そういう人たちを結果で見返すことが、サッカー選手のあるべき姿なので、そういう意味も込めたパフォーマンスでした」と説明した。
■クロスバーを叩いた惜しいシーンも「決めたかった」
久しぶりとなるリーグ戦でのゴールを挙げた仲川だったが、2点目を取るチャンスもあった。後半22分に松木が相手DFをはねのける力強いドリブルでボールを運び、MF遠藤渓太にパス。その遠藤からゴール前に速いボールが入り、そこに仲川が飛び込んで合わせた。
ボールがクロスバーを叩いたこの場面について、仲川は「渓太を信じて、縦に行ってクロスを入れてくると思っていましたし、相手DFの裏に飛び込む形だったので、ああいったところでもう1点取って、チームを楽にさせる仕事を突き詰めないといけない」と反省したが、同時にこの形が出たことの意味を仲川は強調する。
「やっとチームが、ああいった形を出せるようになってきた。あれで点がもっともっと増えてくれば、選手たちも飛び込んでくるし、クロスも来るし。クロスを防がれたらマイナスへのパスコースが空いてくるので得点も増えてくる。そういう意味でいうと決めたかったですけど、ああいうシーンをもっともっと増やすことが大事だと思います」
この試合後、松木、荒木、そしてGK野澤大志ブランドンがU-23日本代表に合流するため、チームを離れた。FC東京は彼ら抜きで、東京ヴェルディ、FC町田ゼルビアとの東京ダービー2連戦に臨むことになる。
かつて町田に所属していた仲川は、現在の町田の印象について「すみません、口が悪いですけど」と前置きをして「面倒くさいサッカーをしてくる」と言い「褒めているんですよ。そういうサッカーは、僕たちにとっても嫌なので。言葉を綺麗にすると、『イヤらしい』チーム」と言い直した。
そして「(現在の町田の結果には)正直、驚いていますけど、やるべきことというか、やっていることは徹底していますし、攻守の切り替え、球際の強さ、いやらしさは、首位にいてもおかしくない存在だし、力だと思う。それに対して僕らは対策をするというより、どう打破していくかだと思う」と、力を込めた。
連勝という形で国立2連戦を終え、上昇ムードにあるFC東京。J1の先輩としての貫禄を示し、さらに上を狙えるかが問われるダービー2連戦に臨む。(河合 拓 / Taku Kawai)
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