まさかの失点に…涙流し「自分のせい」 国立で思わぬ展開、悲願阻んだ“魔の10分間”
FOOTBALL ZONE / 2025年1月12日 7時30分
■選手権4強で敗退の東福岡、前半に先制も悔やまれた後半序盤のスキ
全国の舞台での連続無失点が360分を超えたところに訪れた魔の10分間だった。第103回全国高校サッカー選手権大会は1月11日に国立競技場で準決勝が行われ、東福岡(福岡)は第1試合で前橋育英(群馬)に1-3で敗れ姿を消した。
準々決勝で静岡学園(静岡)を0-0からのPK戦で破って勝ち抜くなど、東福岡は大会初戦から4試合をすべて無失点で乗り切った。この前橋育英戦でも前半は完全に相手の攻撃をシャットアウト。カウンターを受けそうに見えた場面でも、相手の前線の選手が走り込むよりも前に東福岡の最終ラインが全員揃って戻るなどスキのないものを見せていた。
前橋育英の山田耕介監督が試合後に「東福岡の球際や囲い込み、2人、3人でのチャレンジ&カバーに前半はやられた。東福岡の特徴はサイド攻撃よりもディフェンスだと思っていた」と話したように、チャンスらしいチャンスは作らせず。逆に東福岡は前半11分にFW伊波樹生が「監督が狙えと言っていたスペースに信じて走り込んだ」というプレーでニアサイドでのワンタッチゴールを決め、1点リードで後半に入っていた。40分ハーフを4試合で320分間、それに前半の45分間を合わせて365分間を無失点で乗り切っていた。
しかし、わずかなスキが後半3分に生まれた。自陣で大きく弾んだボールを処理しようとしたDF大坪聖央が、相手FW佐藤耕太に前へ入られてしまう。そのまま入れ替わられると失点となり、無失点記録は368分で止まった。だが、それ以上に大会での初失点がチームに与えた影響が大きかった。大坪は「自分のせいで……」と涙ぐみ、悔しさを隠せなかった。
3位の表彰を受け取った東福岡の選手たち【写真:徳原隆元】
キャプテンのDF柴田陽仁は「失点していないのは良いことだったけど、失点後のメンタルの持ち直しが難しかった」と率直に話す。プロのサッカーチームでも、長く無失点だったチームの失点や、無敗だったチームの敗戦はダメージが必要以上に大きい。まして3年生たちにとっても「自分たちの代にとっては初めての選手権だった」という舞台だから、誰も出場経験のないチームで準決勝の国立決戦、さらにミスが絡んでの失点となれば、悪い要素が重なりすぎた。
それに加え、流れを渡してくれない前橋育英の試合巧者ぶりもあった。柴田が「前半よりも相手のFWが背後に抜けてくる動きが多くなった」と話した状況は、前半に強みを見せていた前に向いて圧力を掛ける守備にブレーキをかけ、自陣ゴール方向に向いた守備が増えた。その中で後半9分、後半13分と立て続けに失点。まさに、魔の10分間とでも言うべき時間で一気に1-3とひっくり返された。
そして、反撃に出るにはチームが満身創痍すぎた。平岡道浩監督によれば、ボランチのMF塩﨑響は左足首の捻挫、MF神渡寿一は体調不良からの復帰直後で、MF福澤隆大は手首の骨折によるブランクを経て大会に間に合った。実際に塩﨑は取材エリアを左足首にアイシングを施して足を引きずりながら通過。前橋育英の選手からは、「後半になって、相手(の運動量)が落ちてきた」という言葉も聞かれた。
第94回大会以来4回目の優勝は果たせなかった東福岡だが、全国の大舞台で300分以上の無失点を続けて忠実なプレーと堅守は称えられるべきもの。柴田が「強いヒガシ(東福岡)を取り戻すというテーマでやってきた」と話した目標は、少なからず果たせたと言っていいだろう。平岡監督は「これを経験した1年生や2年生に意識改革が起これば、伝統に加えて大きな財産になる」と、今大会の戦いぶりを称えながら先を見据えていた。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)
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