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BOOK 探検家・作家の角幡唯介さん 脱システム志向、たった一人「生」か「死」究極の選択 『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月21日 10時0分

――スポンサーをつけない方針を貫いている

「(収入の大半は)ひたすら書き続けることですね。スポンサーをつけない理由ですか? それがカッコよいことだと思えないからですね。僕がやっていること(探検・冒険)は言ってみれば『遊び』。それに対しておカネを貰うことは、カッコよくないし、面倒くさい。クラウド・ファンディングでもそうですが、おカネを貰うと『夢』を語らなきゃいけないし、品行方正である必要もあるでしょ。〝正しい存在〟を強いられるのがイヤなんですよ。自分の稼ぎだけでやっていくのは確かにキツいけど、〝正しい存在〟にならなくてもいい。意地張ってずっとそういう方向で来ましたから、今さら変える気もない。(いま生計が成り立っているのは)まぁ、幸運でしたね」

43歳の壁超えた

――現在48歳。多くの冒険家や登山家が命を落とした〝43歳の壁〟を超えましたね

「確かに体力は落ちてきているんですけど、思ったほどではないですね。一方の経験値はどんどん高くなってきて、これまで難しかったことが当たり前のようにできるようになって、ハラハラしないというか、飽きるというか、新鮮味がなくなるんです。だから、(やる冒険・探検の中でも)質を高めたい、とか、新しい場所に行ってみたい、という気持ちはありますね。今は65歳くらいまでやるつもりではいるんですけど」

――今回の日高山脈という場所はどうでしたか

「僕は、自分の行為を全部自分でつくり上げたいから、GPSや衛星電話も使わない。人の気配がするのもイヤ。(極地へ行って)地球の中で、たった一人の人類として存在しているような状況がいい。日本国内でそういうフィールドはなかなかありません。例えば、奥只見はすごくいい所でしたが、僕が思う10日から2週間の登山を続けるにはエリアが狭すぎる。これだけ長期の〝地図なし登山〟をやれる場所は日高山脈しかなかったですね」

――冒険・探検の中で何度も命を落としかけた。「死」をどうとらえていますか

「かつては、なるべく『死』に近づいて生還したい、(冒険や登山で)自分の生命エネルギーをギリギリまで使い果たした上で生還したい、という気持ちが強かった。つまりそれは『死』までの距離を可能な限り縮めることによって『生』の手応えを感じるという、いわば究極の選択です。だから登山家がもっと高い山、もっと難しいルートをどんどん求めるのも分かるんですよ。ただ僕も50歳を前にしてそういった切実さも少しは薄れてきたかな」

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