ニュースの核心 米国の「核の傘」という虚構 疑念払拭できず「拡大抑止」で初の日米閣僚会合 日本はまず「持ち込ませず」の撤廃を
zakzak by夕刊フジ / 2024年8月2日 15時0分
日本では来週6日と9日、広島と長崎の原爆の日を迎える。原爆や戦争による犠牲者の冥福と世界平和を祈る日だが、日本を取り巻くように、中国とロシア、北朝鮮の軍事力強化、連携強化が進んでいる。習近平国家主席率いる中国は1月時点で、保有核弾頭数が500発に増えたとの推計がある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は6月、軍事同盟に近い「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。日本の安全保障には深刻な脅威といえる。米国の「核の傘」を軸にした抑止力は機能するのか。日本政府は、国民を守り切る防衛力と法律の整備を急ぐべきではないのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が核心に迫った。
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日本と米国の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に合わせて、「拡大抑止(核の傘)」に関する初の閣僚会合が7月28日、東京で開かれた。
米国が日本に提供している「核の抑止力を強化する」という触れ込みだが、そもそも「核の傘」は本当にあるのか。私は「虚構だ」と思っている。日本は国家として「自立する意思」さえ失ったかのようだ。
核の傘とは、日本が他国から核による攻撃や威嚇にさらされたとき、同盟国である米国が核で反撃する体制を指す。それによって、相手の攻撃や威嚇を抑止する狙いだ。
だが、そんな枠組みは言葉だけの話で、実際には存在せず、機能していないのは、かねて内外の多くの識者たちが指摘してきた。
例えば、国際政治学者として名高いヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は1958年の著書で、「米大統領は西欧と米国の50の都市を引き換えにするだろうか。西半球以外の地域では、あえて戦う価値がないように見える」と書いている。
ニューヨークやワシントンが核攻撃される危険を犯してでも、西欧や日本を守るために大統領が核反撃を命じることはない、という話だ。
元自衛隊統合幕僚長の河野克俊氏も2022年の講演で、「安保条約には1行も書かれていないのだから、米国が絶対に核の傘をかけてくれるとは言い切れない。米国が『大丈夫だ』と言っても、『本当かな』という疑念がかすめる」と語っている。
専門家でなくても、普通の人が「自分の国が火の海になるリスクを犯してでも、米国が日本を守るだろうか」という疑念を抱くのは当然だ。
日米両国は年内に協議内容を共同文書にまとめて公表することを検討している。だが、これまた虚構性を証明している。閣僚レベルの共同文書が国同士の条約に勝るわけはないが、米国が核の傘=拡大抑止の提供を書き込んだ他国との条約は、日米安保条約を含めて、1例もないのだ。
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