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BOOK 作家・新庄耕さん 人は深層で騙されたがり、不動産が持つ〝魔力〟に心奪われる 話題呼んだ前作からスケールアップ『地面師たち ファイナル・ベッツ』

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月28日 10時0分

怪しくてロマンがある

──地面師軍団が今回狙うのが釧路の土地。その額、なんと200億

「土地を探すのにものすごく苦労しました…。前作が100億だったから、今回は倍の200億にしようと。でもそんな土地どこにあるんだよって。ちょうどIR(統合型リゾート)が話題になっていた時期だったので、IRの候補地の一つ、北海道に目を付けると同時に、『北極海航路』を思い出したんです。調べたら、地球温暖化によって北極海の氷がもっと解けて北極海航路が盛り上がれば、寄港地となる釧路は開発が進んでシンガポールのようになると書いている学者の先生がいたんですよ。これだ! と。将来的な可能性はないともいえないようだし、怪しいぶん、ロマンがありますよね」

──釧路の土地を売りつけるターゲットとなるのが、シンガポールの御曹司・ケビンです。<人間は自分の都合のいいように情報を解釈する>。騙す側の理屈も、騙される側の心理も両方味わえるのが本作の魅力です

「追い込まれれば追い込まれるほど、人は見たいものしか見なくなっていくんですよね。でも、人はなぜ騙されるかといえば…実は心の深いところで、騙されたがっているのかもしれません。いい夢を見たいから。ただ夢は実現しないものですが(笑)」

──世にあるさまざまな詐欺のなかでも「地面」を扱う特殊性や面白さ、そして怖さを堪能しました

「僕は『狭小邸宅』でデビューしたこともあり、不動産界隈の人と付き合いがあるんですが、彼らは本当に不動産ラブなんです。お金も好きですが、土地と建物を含めて大好き。金や株式にはない、実体がもつ魔力があるんだろうと思います。地面師は僕にとってもワクワクする題材でした。これからも自分の中のワクワク感に素直に従って小説を書いていきたいと思っています」

■『地面師たち ファイナル・ベッツ』(集英社)1980円税込み

元Jリーガーの稲田はシンガポールのカジノに全財産をつぎ込み失った。その一部始終を見ていた大物地面師・ハリソン山中は稲田をスカウトし、北海道に送り込む。地面師軍団が釧路の土地を売りつけるターゲットに選んだのは、禅に傾倒し、父を乗り越えようとするシンガポールの御曹司・ケビンだった。一方、警視庁のサクラは拓海に接触してハリソン山中の居場所を突き止めようと執念の捜査を続ける。地面師たち、ケビン側、警察。三つ巴の戦いの結末は。

■新庄耕(しんじょう・こう) 1983年東京都生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒業。40歳。リクルートに勤務後、いくつかの仕事を経て2012年「狭小邸宅」で第36回すばる文学賞を受賞しデビュー。著書に『ニューカルマ』『カトク 過重労働撲滅特別対策班』『サーラレーオ』『地面師たち』『夏が破れる』など。

(取材・砂田明子 撮影・酒巻俊介 レイアウト・吉村剛)

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