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実録・人間劇場 横浜・寿町ドヤ街編(5)深夜2時「秀樹を捜しているんだけど…」タダ者ではない高橋という気味の悪い男 その後現れた女装家・秀樹に驚き

zakzak by夕刊フジ / 2025年1月10日 15時30分

高橋と秀樹が待ち合わせていた寿町のセンター前広場=横浜市(夕刊フジ)

「ちょっと、あるホームレスを捜していてね」

横浜のドヤ街・寿町の中心にある「横浜市寿町健康福祉交流センター」(通称・センター)の広場に、スーツ姿の見慣れない男がいた。もう深夜の2時である。明らかに不審だったので話しかけてみると、返ってきたのが冒頭のセリフである。

「秀樹っていう男なんだけど、聞いたことない?」

男の名は高橋といった。ダボダボのスーツは着こなせているとは言い難い。初めのうちは泊まる部屋を探しにきたネットカフェ難民かと思ったが、話をしているうちにタダ者ではないことに気がついた。後から知ったが、高橋は東海地方のヤクザだった。無料低額宿泊所(生計困難者が無料または低額な料金で宿泊できる施設)を運営し、貧困ビジネスを生業としていた。

高橋は以前、そのホームレスに金を貸していたことがあるという。しかし、ホームレスは一向に金を返そうとせず、姿をくらませた。ただ、最近になって連絡がつくようになると、「寿町にいます」と返事がきた。そして、名古屋から「迎えに来た」そうだ。

高橋の目は私が今まで見てきた人間の中でもっとも気味が悪かった。目玉が異様に飛び出し、瞳孔は開き、眼球がギョロギョロと動き回っている。あくまで直感でしかないが、人を殺めていそうだなとも思った。

「ちょっとトイレに行ってくる」

そう言ってセンターにある公衆トイレの多目的用トイレに入ったきり、20分出てこなかった。やっと出てきたかと思うと、さっきよりもさらに瞳孔が開いていた。

「よう、秀樹」

高橋と待ち合わせをしていた秀樹という60代の男は、真冬だというのにピンクのTシャツに赤のミニスカート、赤のハイヒールという格好だった。高橋のキャラの濃さですでにおなかいっぱいだというのに、一体この街はどうなっているのか。

それに、私は秀樹のことを知っていた。彼は上野(東京)で有名な女装家である(悪い意味で)。ハッテン場になっている某成人映画館の前でヤンキー座りをし、酒を飲みながらいつも騒ぎ、通行人に迷惑をかけまくっていた。秀樹は上野でトラブルを起こし、寿町に引っ越したという。だが、高橋にも見つかってしまった。

「じゃあ秀樹、行くか」

そうして秀樹は高橋の後についていった。

数カ月後、上野で自転車に乗っている秀樹を見つけた。

「あの日はあのままどこかへ連れて行かれそうになった。逃げたけどな。見れば分かると思うけど、高橋はヤバいから」(秀樹)

それから1年近くがたつが、私は寿町でも上野でも秀樹を一度も見ていない。上野で秀樹と一緒になって騒いでいたチンピラたちに聞いても、「最近、秀樹、いないんだよね」と答えるだけであった。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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