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「できるまでやっとけ」は育成でなく“選抜” 野球離れ阻止へ…上達促す大人の思考

Full-Count / 2024年4月11日 7時50分

子どもの上達のために指導者が果たすべき役割とは(写真はイメージ)

■野球スクール運営の田中聡氏…「何でできないんだ」+2文字で“魔法の言葉”に

 たった2文字を付け加えるだけで、選手は飛躍的に成長するかもしれない。米国の独立リーグや日本のプロ野球でプレーし、引退後は主にジュニア世代を指導する田中聡さんは、「何でできないんだ」と選手を叱る指導に疑問を投げかける。指導者は「何でできないんだろう」と考えることで、選手の上達をサポートできると言う。

 香川・尽誠学園で選抜に出場した田中さんは法大卒業後、米国の独立リーグや日本ハム、阪神でプレーした。2003年にユニホームを脱ぎ、現在は東京・羽村市の野球スクール「HERO-S」で主に小学生を指導している。

 子どもたちは当然ながら、大人よりも経験が浅く、理解力に欠ける場合もあり、大人が簡単にできることを、同じようにできるとは限らない。だが、学童野球チームには、「何でできないんだ」と選手を怒鳴る指導者が少なくない。怒声・罵声が野球離れの一因にもなっている。

 田中さんはスクールに来る子どもたちに対して、うまくできないことを叱らない。できない理由は経験や練習の不足と考えているからだ。「何でできないんだ」ではなく、「何でできないんだろう」と思考を巡らせる。

 例えば、打球方向を打ち分けられない選手には、テニスのラケットとボールを使う。手首の角度によってラケットの面とボールの当たり方が変わり、ボールの飛ぶ方向が変わることから、打撃のヒントを得るきっかけをつくる。上達する方法を選手と一緒に模索するのが指導者の役割であり、できるようになる達成感が野球の楽しみにつながると、田中さんは考えている。

「選手に『できるまでやっとおけ』と伝えて、できる選手だけを使うのは育成ではなく選抜です。野球の競技人口が多かった時代は、ふるいにかけるやり方でもよかったかもしれませんが、育成と選抜は全く違う指導です」


野球スクール「HERO-S」を運営する田中聡さん【写真:間淳】

■スリルがないスポーツは「出汁が入っていないうどんのようなもの」

 田中さんは、練習では選手の育成に重点を置き、試合では勝利を目指す大切さを伝えている。暴力を伴うような行き過ぎた勝利至上主義は論外だが、「練習と違って、試合は勝ちにいかなければいけません。だからこそ、ルールブックの最初に『勝ちを目的にゲームを行う』と書かれています。どんなカテゴリーでも、最後まであきらめず勝利を目指す。あきらめないでプレーするからドラマが生まれ、手を抜かずに一生懸命やってくれた相手に感謝や敬意が芽生えると思っています」と語る。

 だからこそ、スクールの紅白戦でも、どん欲に勝利にこだわる姿勢を選手に求める。そして、自ら両チームの投手を務めるなど、緊張感のある試合展開を演出する。スリルこそがスポーツの楽しみであり、上達につながる要素だという。

「スポーツの楽しさは、緊張からの解放にあります。私は“スリル”と表現しています。スリルがないスポーツは、出汁が入っていないうどんのようなものです。WBC、プロ野球、甲子園のように舞台が大きくなるほど緊張は大きくなり、結果を出すと解放感や成功体験を得られます。緊張は基本的にプラスに働くと思っています」

 野球をするのが選手自身である以上、指導者はプレーに直接手助けできない。ただ、声のかけ方1つでも上達をサポートできる。(間淳 / Jun Aida)

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