新卒2か月で退職も…2年連続の指名漏れ 入籍1週間で異国へ、テスト入団から叶えた夢
Full-Count / 2024年4月20日 7時10分
■台鋼ホークスの小野寺賢人、新卒2か月で退職して独立リーグに挑戦した
波乱万丈の野球人生を歩んでいる一人の日本人投手がいる。CPBL(台湾プロ野球)の台鋼ホークスでプレーする小野寺賢人投手だ。新卒2か月で会社を退社し、独立リーグからプロ野球選手という夢を追うも、ドラフト会議では2年連続で指名漏れ。悔しい思いを胸に、異国の地でのチャレンジに燃えている。
「小学生の頃からずっと、プロ野球選手になりたいって言ってた気がします。卒業文集とかにも、プロ野球選手になるって書いてました」
宮城県出身の25歳は、地元の聖和学園高から北海道の星槎道都大に進学。スカウトから注目を集める選手ではなかったが、社会人野球を目指した。しかし、複数チームの練習会に挑戦してすべて不合格。北海道のクラブチーム、TRANSYSに入部し、フルタイムの社会人として働きながら野球を続けることに決めた。
「チームのことはすごく好きだったんですけど、早朝から出勤して8時間働いて、練習を夕方から夜までやって帰って、みたいな生活で。もう1か月も休みなしで。仕事がちょっと忙しくなって、野球ができなくなるかもしれないと言われたので、もうその場で辞めさせていただきたいですって言いましたね」
「今動かないと人生変わらない」。心苦しい思いを抱えつつも、新卒で入った会社を2か月で退職する決断をした。かつて駒大苫小牧高で甲子園を制し、TRANSYSの助監督を務めていた本間篤史氏の縁で、ルートインBCリーグに所属する埼玉武蔵ヒートベアーズのテストを受験。無事に合格すると結果を残していく。
2年目の2022年には、13試合に登板して5勝1敗、防御率1.65の成績で最優秀防御率とベストナインのタイトルを獲得。昨季は10勝2敗1セーブ、防御率3.19の成績で、最多勝、最多奪三振と投手部門MVPにも輝いた。しかし、待っていたのは2年連続の指名漏れ。「海外リーグ挑戦のため」という理由で退団した。
■台湾挑戦の1週間前に入籍「海外に行くと家族なのか、彼女なのかで違う」
「やっぱりスカウトが見たら若い選手のほうがいいですし、今はピッチャーだったら150キロ出ないと話にならない世界。自分みたいな(コントロールを売りにしている)タイプが評価されないのは、割としょうがないのかなって思います」
意外なところから声がかかっていた。2024年からCPBLの1軍に新規参入する新球団の台鋼ホークスが、日本の独立リーグから投手を探していたのだ。同球団の横田久則投手コーチと小野寺を見てきたNPBスカウトの縁などで、「テスト外国人」としてウインターリーグ参加が決まった。4試合に登板して2勝0敗、防御率3位の0.92。決勝では8回2/3を投げ、6安打1失点の好投でMVPに輝いた。
囲み取材を受ける中、台湾の記者の一人が「さっき監督が来年契約するって言ってたんですけど、気持ちはどうですか?」と質問。「え、そうなのって。そこで知りました」とまさかの形で正式契約を勝ち取った知らせを受けた。そして、新たな挑戦が決まった中、プライベートでも大きな覚悟を背負っていた。
ドラフト会議の後、ウインタリーグに挑む1週間前に入籍。「海外に行くとなると、家族なのか、彼女なのかで違うところはすごくいっぱいある。結果がどうであれ、結婚していた方が僕らの今後のためにはいい環境になるのではないかと考えました」。新妻も海外移住に抵抗なく支えてくれており、「野球でお金を稼げる環境があるのであれば、応援してくれると思います」と心強い。
新天地では、すでに2試合に先発登板。4日の中信兄弟戦では5回途中5失点とほろ苦デビューとなったが、10日の楽天モンキーズ戦では7回途中2失点(自責1)と試合を作った。初勝利は惜しくもお預けとなったが、同じくBCリーグ出身の鈴木駿輔投手と投げ合い、CPBLでは5452日ぶり日本人対決と話題になった。
描く未来は、逆輸入でのNPBからのドラフト指名だ。「日本では無名な存在なんですけど、こういう道で野球をやってる選手もいる。僕みたいな選手もいるので、覚えてください!」。台湾の地で結果を残し、新たな道を切り開く。(工藤慶大 / Keita Kudo)
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