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“逸材中学生”が伸びないのは「球界の悲劇」 育成課題解決へ、巨人U15の帯びる使命

Full-Count / 2024年5月5日 7時50分

初の対外試合に臨んだ巨人の中学生硬式チームU15「多摩川ボーイズ」【写真:高橋幸司】

■巨人の中学硬式チーム「多摩川ボーイズ」が初の対外試合…目的は“個々の成長”

 4月に正式に発足した巨人の中学硬式野球チーム「ジャイアンツ U15 ジュニアユース」(連盟登録名:多摩川ボーイズ)が3日、東京・多摩川緑地広場硬式野球場で初の対外試合に臨み、連勝で初陣を飾った。“プロの登竜門”「NPB12球団ジュニアトーナメント」で活躍した選手や、元プロの子も所属する注目チーム。しかし、巨人OBで同ユース代表を務める大森剛氏は「勝つために選手を集めたわけではないし、目指すところは日本一ではない」と語る。体の大きい早熟型から成長過程にある晩熟型まで様々なタイプがいる中学生年代を、いかに上のレベルに引き上げていくか、大きな使命を抱いている。

 24人の中学1年生で発足した巨人U15は、第1試合で東京城南ボーイズ(1年生)、第2試合で女子硬式エイジェックユースと対戦し、それぞれ5-3、5-2で快勝した。故障予防を踏まえて投手は1イニング25球に制限。7回制2試合で計14人がマウンドに上がり、リエントリーの活用で全員が出場して、それぞれの持ち味を発揮。特に目を引いたのは第1試合で5盗塁をマークした走塁で、盗塁王4度の実績を持つ片岡保幸監督も、「こんなに積極的に走ってくれるとは。期待以上の動きをしてくれた」と称えた。

 発足メンバーには、野球日本代表「侍ジャパン」井端弘和監督(元中日、巨人)の長男・井端巧選手、DeNA・小池正晃コーチの次男・小池樹里選手、そして巨人・阿部慎之助監督の長男・阿部成真選手も名を連ねた。昨年末のジュニアトーナメントに出場した選手も、井端、小池を含めて9人いる。試合前の挨拶で、巨人軍OB会長の中畑清さんが「びっくりした」と語ったように、一聴すると“豪華メンバー”をそろえたようにも聞こえる。

 しかし、「見ての通り体の小さい子もいるし、大きくても技術的に不器用な子もいますよ」と大森代表。確かに身長143センチから174センチまで体格もタイプも様々だし、まだユニホームにゆとりのある子もいる。「早熟・晩熟など、いろいろなタイプを集めて指導し、指導法を社会に還元していく」ことがチームの理念の1つでもあるのだ。


「5番・三塁(のち遊撃)」で出場した第2試合で中前打を放った井端巧【写真:高橋幸司】

■育成が難しい早熟の選手…小・中学生までに身に付けたい俊敏性を重視

 とはいえ、成長度合いが異なる中学生に、個々に合わせた成長を促していくのは容易ではない。難しいのは、体ができていない晩熟型よりも、むしろ早熟型の方なのだという。フィジカルコーチを務める石森卓さんは、「同学年で同じことをしたとしても、晩熟の選手は、早熟の選手に食らいついていくことで適度な負荷が得られるのですが、早熟の選手にとっては“ストレッチ目標”(背伸びして届く難易度の目標)にならないため、色々な意味で負荷が足りなくなる可能性があります」と説明する。

 その問題を組織として解決しているのが、片岡監督ら首脳陣が事前に視察に訪れた欧州のサッカークラブだ。世代ごとにカテゴライズされた育成システムがあり、能力の高い選手は上の世代に“飛び級”させることで、適切な負荷を与えられる。一方、日本の野球界は、逸材中学生が高校野球でプレーはできないし、怪物高校生がプロ野球でプレーできるわけではない。現状は1学年で活動している巨人U15も、早熟型の選手には、他チームの3年生に練習相手を依頼するなど、試行錯誤をしているという。

 そしてもう1つ、早熟型には、体の成長が早いゆえの“不利”が生じることがある。「早熟の子は、ある程度、力任せ、体格任せでプレーできてしまうので、体の動かし方の“巧みさ”などを身に付けるタイミングが少ないのです」と石森コーチ。逆に晩熟型は、小さいうちに自分の体を思うように動かせる能力を習得しやすく、のちに体格が早熟型に追いついたときに優位に立つことができる。

 そこで巨人U15の練習では、筋力強化ではなく、俊敏性や柔軟性を重視。ウオームアップにバドミントンを取り入れるなど、小・中学生までに身に付けておきたい、逆に言えば高校生以降では習得するのが困難な“神経系”を養うことに重点を置いている。

「“スーパー中学生”と言われるような子たちが、そのまま順調にプロまで行けているかといえば、決してそうではありません。力と体格だけに頼ってしまって、高校以降で伸びないのは野球界にとっても悲劇。そういう子たちをどう順調に成長させてあげられるかは、私たちの使命の1つになります」と大森代表。

 正解が見えてくるのは5年後、10年後になるだろうが、この日24人が示した失敗を恐れない積極性や、チームとしての明るさ・一体感は大きな希望を抱かせてくれる。それぞれがどんな選手に育っていくか、長期的視点で注目していきたい。(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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