ピクサー最新作『2分の1の魔法』は監督の「個人的な体験」がベースに / ピクサー訪問記(1)

ガジェット通信 / 2020年3月1日 9時0分

ディズニー&ピクサー最新作『2分の1の魔法』(3/13より全国公開)の舞台となるのは、かつて生活のなかに満ち溢れていた魔法が科学や技術の進歩と共に忘れ去られて久しい世界。

エルフ、サイクロプス、ゴブリン、ケンタウロスなど様々な種族が共生するファンタジーだが、物語は監督の個人的な体験がベースになった作品だという。

このたび米国カリフォルニア州サンフランシスコにあるピクサー・アニメーション・スタジオを訪れる機会があり、『モンスターズ・ユニバーシティ』以来となるタッグで本作を手掛けたダン・スキャンロン監督とプロデューサーのコーリー・レイに話を聞くことができた。

ファンタジーRPGのようなワクワク感

今作の主人公は内気で自信がもてず自分を変えたいと思っている少年イアン。かなわぬと知りつつも、生まれる前に亡くなった父親に一目会いたいと願っている。そんな彼を見守る陽気で好奇心旺盛な兄・バーリーもまた、幼い時に亡くした父にもう一度会って伝えたいことを胸に秘めていた。

ある日イアンは、16歳の誕生日プレゼントに亡き父が母に託した魔法の杖と手紙を受け取る。記されていたのは、“死者を1日だけ蘇らせる魔法の呪文”。なんとイアンは隠れた魔法の才能をもっていた……のだが、人生初の呪文に失敗して下半身だけの姿で父を復活させてしまうハメに。兄弟と2分の1の父は、タイムリミット24時間以内に彼の完全体を取り戻すため、“不死鳥の石”を探し出すクエストに出発する――。

筆者は事前に、復活の呪文を唱えるシーンを含む冒頭約30分間と、イアンが成長するうえで重要となる中盤のとあるシークエンスを鑑賞させてもらった。魔法オタクの兄・バーリーの知識の源がテーブルトークRPGだったり、イアンが序盤は簡単な魔法から習得していく姿を見て、テレビゲームのRPGなどで呪文カルチャーに慣れ親しんだ日本人なら大好物の作品だと感じた。内面の成長によって唱えることができる呪文が増えていく様はまさにゲームのレベルアップといった感じでワクワクする。

インタビューの冒頭ではそんなフッテージ鑑賞後の率直な感想を二人に伝えてみた。

「ピクサーにもRPGが大好きなスタッフがたくさんいるよ。そういったゲームの要素は、モダン・ファンタジーを作る楽しみの一部だった。僕らは現代を舞台にしたファンタジー映画にしたかったんだ。主人公を人間ではなくエルフにしたのは、映画からより魔法を感じさせるため。アニメーションならではの方法で本物の冒険へ出かけるにあたり、ゲーム好きのスタッフが世界観の構築の面で大いに活躍してくれたよ。僕自身はそれほどゲームに夢中な子ども時代を送ってなかったからね(笑)」(スキャンロン監督)

「ダンは映画を作るのに忙しかったの。子どもの頃、彼はストップモーションの映像とかを撮影していたの。だから彼はボードゲームで遊ぶ代わりに、すでに映画を作っていたのよ」(レイ)

監督の「個人的な体験」がベースに

ピクサーのラインアップで兄弟を主人公にした作品は初となるが、それは今作が監督の「個人的な体験を描く作品」として制作されたことにリンクしている。監督の父親は、彼が1歳、彼の兄が3歳のときに自動車事故で亡くなったという。

「子どもの頃に父親が亡くなって、父親のことを知らずに育ったら、伝説の人みたいに思えてくる。彼についてのすべてや、手に入れられるどんな小さなことでもとても興味深いんだ。また、どうやったら自分は父親みたいな大人になれるんだろうかと考える。父親が亡くなっていると、自分がどんな大人になるかの道標がなくなってしまうから。それが僕の経験に基づいて、映画の中に入れたかった要素の大きな部分だった」(スキャンロン監督)

「兄弟姉妹がいる人たちを集めて、家族について話し合う機会があったの。とてもたくさんのスタッフがダンや私たちのところにやって来て、親を失った経験について話した。それはダンが父親を亡くした体験に似ていたわ。私たちは必ずしもそういう話を求めていたわけではないけど、大勢の人がやって来て、彼らの個人的なストーリーを分かち合ってくれたのよ」(レイ)

「個人的な体験」をベースにしていると言っても、そこは“Story is king.(ストーリーこそすべて)”を提唱しているピクサー。今作もピクサー流のストーリーテリングで誰もが没入できるエンターテインメントに仕上がっているのは言うまでもない。設定の白眉はやはり、会いたいと願ってきた亡き父親が愉快な下半身として蘇り、24時間経てばまた消え去って一生会うことができないというギミックだろう。

「最大のチャレンジは、お父さんの下半身だけで感情を表現することだった。イアンとお父さんの関係性、バーリーとお父さんの関係性をそれぞれ描く必要があったの。それは彼らが父親の足に触れるというシーンで表現されている。でも私たちはそのシーンで本当に人々の共感を呼ぶだろうかと考えないといけなかった。イアンとバーリーが初めて父親と心が通じたと感じたことを、観客も感じるだろうか? アニメーションの視点から、そしてストーリーの視点からそれを考えることは興味深いことだったわ。このストーリーを通して、私たちは同じような状況に対応しているすべての人々に訴えかけようとしている。喪失と取り組み、家族と取り組み、兄弟姉妹との関係に取り組んでいる人たちに」(レイ)

冒険を通して兄弟がいかに成長し、父子の関係性はどのように変化していくのか。そして、魔法に目覚めたイアンは無事に“亡き父との思い出”を作ることができるのだろうか。「ピクサー史上最も衝撃的で感動的な結末が待ち受けている」そうだが……?

『2分の1の魔法』2020年3月13日(金)全国ロードショー

https://www.disney.co.jp/movie/onehalf-magic.html

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