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『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』ヤマザキマリ先生インタビュー「どんなに煮詰まっていてても、お風呂の中では“無”。完全にリセットされる」

ガジェット通信 / 2022年4月7日 9時0分

Netflixシリーズ「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」が全世界独占配信中。実写化でも話題を呼んだ『テルマエ・ロマエ』を原作に、約10年ぶりのアニメ化。 古代ローマのルシウスが現代日本へタイムスリップし、 自国の浴場に日本の入浴文化を取り入れていく”お風呂コメディ”です。

本作の原作を手がけているヤマザキマリ先生にお話を伺いました!

【動画】『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』予告編

https://www.youtube.com/watch?v=0xEPNweUKx8&t=2s

――ヤマザキ先生は海外で生活されていますが、今回Netflixシリーズとしてアニメが世界配信されて海外の方がご覧になられることについて思ったことはありますか?

例えばフランスやイタリアでは単行本もありがたいことに結構売れていて、アニメ好きの人や漫画好きの人知ってもらっているので、そういう皆さんには是非Netflixアニメ版での「テルマエ・ロマエ」を見てもらいたいなと思いました。

海外ではアニメーションで表現可能な世界というとフィクションの世界観だったりSFっぽかったり、少女漫画的なものとか定形型の先入観をまだ多くの人が持っていると思うんですよ。でも、「テルマエ・ロマエ」みたいな比較文化論的視点で捉えたような作品は新しい分野じゃないかなと思うので、アニメを普段みないような人たちの反応もまた楽しみです。

今の時代、私のように35年以上も海外に暮らし、イタリアで油絵と歴史を学び、その後シリア、アメリカなどに暮らしてきた人間が漫画家になる場合もある。私のそうした経験が化学変化を起こした結果として生まれた「テルマエ・ロマエ」みたいな漫画っていうのは、日本でも特殊な事例だと思うので、新しい文化を知ってもらってさまざまな領域で生きている方の何らかの触発の過程になれば良いなと思っています。

――全世界配信以外にも、Netflixでのアニメ化で新しいな、面白いなと感じた部分はありますか?

Netflixではシリーズ構成としても参加していますが、普段だったら本当はこんなことはマニアックすぎて表現しちゃいけないんじゃないかとか、意味が通じないんじゃないかとか配慮してしまうようなこと思う存分に情熱と熱意を込めて表現できるっていう(笑)Netflixさんでのメリットを大いに活かさせていただきました。

――書き下ろしエピソードも配信されていますが、久々に「テルマエ・ロマエ」のストーリーを考えられていかがでしたでしょうか、元々構想されていたのですか?

元々構想していたものです。ルシウスがなぜマニアックな技師になっていったのかという背景について、いづれどこかで描きたいと思っていました。原作の中でもおじいさんの話が出てくるのですが、ルシウスはお父さんを早くに亡くしていて、おじいさんとの関係が強い。代々浴場技師の一族である「モデストゥス家」に関しては結構思い入れがあるんです。今回その描写を実現できたことが嬉しいです。

――そんなルシウスへの強い思い入れはどこから来たのでしょうか?

ルシウスは一つのことにとことんのめり込んでしまう人。そういう人って社会性はあまりないかもしれないけど、実はイノベーターとしての素質がある。世間体や周りの目を気にするゆとりもないほど何かに打ち込める人に、妥協の無い、人間としてのクオリティの高さを感じます。レオナルド・ダ・ヴィンチもそうだし、スティーブ・ジョブズもそういう人物ですよね。

私自身も子供の時から変わっていたんで、みんなが私とどう対峙していいかわかんないみたいなのをしょっちゅう経験していました。ルシウスにはどこか私的なものが投影されていると思います。

実際、漫画「テルマエ・ロマエ」が流行った時に、私の同級生があれを見て、ルシウスは私だと言ったんですよね、あのどうでもいいことにいちいち大袈裟にこだわる感じ、まるでマリじゃん、と。そう言われればそうかもしれませんが、でもルシウスは描いていればどんどん勝手に動いてくれるキャラクターなんで、描くのが楽しいのは確かです。

――津田健次郎さんの声の演技によって、また新しい魅力のルシウスを観ることが出来ました。

そうですね、これまでのFlashアニメだとFrogmanさんが声を当てたり、阿部寛さんが実写でルシウスを演じてるんですけど、今回のルシウスは津田さんが声を吹き吹き込んだことによってまた全然違う感じになっているように思います。

今までよりも、なんというか、おちゃめ感があるというか、ちょっと現代的なルシウスというのか。突進していくキャラクターというよりも、その一生懸命さがちょっとおかしな結果を生み出してしまったり。愛されキャラ的な意味では津田さんの声って非常に暖かさを醸すというかね、見ている人に応援してもらえるような声だという気がしますね。

――書き下ろしエピソードはファンにとってたまらないですが、「巡湯記」でのお風呂レポートも面白いですよね!

あのコーナーをご提案いただいたときに、なるほど、昔取った杵柄を発揮できるじゃないの、と思ったんですよ(笑)。私に温泉レポートをやっていた過去があることを知らない人ってたくさんいると思うのですが、ここであの頃の経験が役になったわけです。人間どんな経験も無駄にはならない。どんな些細なことでも、どんなに馬鹿馬鹿しいことでも、いづれ何某かのかたちで役に立つ日が来る。あのコーナにはそんな教訓めいたものが示唆されているのかも。大袈裟ですかね(笑)

――すごく素敵なコーナーだなと思いました。

温泉に行きたい気持ちをそそるのと、温泉文化を知らない世界の人たちがたくさんいるわけですよ。コロナ以前には、日本って「海外旅行したい場所」のトップだったわけですよね。そういった観光の面をふまえて、日本の持ってる温泉文化っていうのは大事だと思いますので、別に誰かに頼まれたわけじゃないですけど、温泉観光大使として世界の人に啓蒙したい(笑)。お湯に入れば心身の老廃物が排出され、皆優しく寛大になれますよ、と。

――ヤマザキ先生ご自身のお風呂のこだわりをお聞きしたいです。

お風呂は1日3回入ってます。

外で仕事しているときは無理なんですけどだいたい朝と夜は必ず入る。朝起きてから入る、夜寝る前に入る、中間で仕事していて煮詰まったら入る、もっと煮詰まっていたら2回でも3回でも入るから常にお湯は沸いたままです。

それと入浴剤というか、「湯の花」は欠かせません。別府だったり伊豆だったけど箱根だったりとか北海道、登別……いろんなところで買ってきたご当地の湯の花っていうのがあるので、旅行出来ない今、お風呂に入れて温泉気分を楽しんでいます。

私はお風呂には10分くらいしか入らないのですが、入浴している間頭の中は完璧に「無」です。そうすると、それまでどんなに煮詰まっていてても、心身ともども老廃物や毒素が排出され、完全にリセットされるので、その後の仕事の効率も俄然良くなる。ローマ人たちがなぜ日がな一日ずっと風呂場で過ごしてたかっていうと、それはやはり1日を有効利用したいからでしょう。古代ローマが千年の歴史を誇ったこと、浴場文化は実は密接に繋がっているはずだ、と思うわけです。

――「テルマエ・ロマエ」はお風呂で見ても楽しめる作品かなと思いますが、Netflix作品でお風呂で見てみたいものはありますか?

今いろんな番組がありますからね、温泉紀行をみたいなものがあればいいなと思います。色々な世界中の温泉を巡って、その温泉とその人たちの付き合い方みたいなことを知りたいです。

ローマ遺跡に関しても浴場だけに特化した専門家って、そんなにいないんですよ。風呂の歴史についてちょっと深く考察してくれる海外の研究者なんかがいたら、その人に紀行をやってもらいたいな。

北アフリカのアルジェリアなんかに行くといまだに2,000年前に使ってたお湯が沸いていて、実際に人が入っていますから。あとトルコのアンカラやイタリアにもたくさんありますし、アメリカやブラジルにも知られざる温泉地はあります。もし自分に時間があったら、兼高かおるさんみたいに世界中を飛び回って、温泉地へ行って、みなさんに紹介したいものですが。

――ぜひいつか先生の温泉紀行見てみたいです!改めてになりますが、先生にとって「テルマエ・ロマエ」というのはどの様な存在ですか?

「テルマエ・ロマエ」は私の人生を変えた作品です。若い頃にイタリアに移り住み、それからのさまざまな経験や学習が化学変化を起こして生まれた作品なので、これまでの人生の総決算的な要素ではありますね。

漫画の連載は終えてしまいましたが、ルシウスに対しての思い入れも実はずっとありましたから、こうしてまたアニメ化することが出来て本当に嬉しかったです。たくさんの方に楽しんで笑っていただきたいです。そしてチャンスがあれば、漫画の方でもまたテルマエ・ロマエ続編を描いてみたいです。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

【関連記事】「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」津田健次郎インタビュー「しっかりとした知識の上にギャグが成り立っている」「1日に2回入るほどお風呂が好き」

https://getnews.jp/archives/3249742

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