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怪作か?迷作か?ホラーのような、変身ヒロインのような『クロックタワー3』見方を変えれば意外と良いかも【特集】

Game*Spark / 2024年10月30日 20時0分

今は無きヒューマンが手掛けたホラーゲームの金字塔『クロックタワー』。ポイント&クリック形式のマップ探索を基本に、自らの命を狙う追跡者と緊張とのチェイスが繰り広げられるシリーズです。


記事執筆時点で20年以上も新作が発売されていませんが、ついに初代の復刻版『クロックタワー・リワインド』が2024年10月リリースされました(バージョンによって発売日時の差有)。


同作の売れ行きが好調であれば、『2』『ゴーストヘッド』とシリーズ作が着々と移植されていくことが期待されますが、1作だけ“これは移植されるだろうか…”と思わざるを得ない作品として、『クロックタワー3』があります。というのも、本作はヒューマンではなく、同社の倒産後にカプコンとサンソフトが共同で手掛けた『クロックタワー』シリーズ最新作となるホラーアドベンチャーですが、中々に癖の強い作品でもあるのです。


本記事ではそんな『クロックタワー3』の『クロックタワー』っぽい側面と、そうではない側面をご紹介。なお、本記事ではPS2実機でのプレイをキャプチャーデバイスで録画した際の画像を掲載しています。


『クロックタワー』じゃないかもしれないけど…けど…!


ストーリーは、母から「誕生日が過ぎるまで、どこかに隠れて」という手紙を受け取った主人公の少女「アリッサ」が、心配になり家に帰ってきてしまったところから始まり、過去の世界などに飛ばされつつ、自身の命を狙う追跡者たちと対峙することになります。


制作陣には映画「バトル・ロワイヤル」の深作欣二氏を監督として迎え、舞台となるイギリス・ロンドンの建造物や下水道など、薄暗いマップは雰囲気抜群。ゲーム面では過去作のポイント&クリックから直接キャラクターを動かす形式に変わり、体力に相当する概念として「パニックメーター」が実装されました。


このメーターは「アリッサ」が敵から直接攻撃を受けたり、近くで武器を振るわれたりすると上昇。メーターが満タンになると「パニック状態」になり、操作に制限がかかるだけでなく、敵に攻撃されるとゲームオーバーになってしまいます。


過去作の連打で危機を脱する「パニックボタン」は採用されておらず、追跡者を撒く際は相手を一時的に怯ませる「聖水」などのアイテムで時間を稼いだり、各マップに設置された「回避ポイント」や「隠れポイント」を活用したりしなければいけません。


ここまでの要素は『クロックタワー』のイメージと、そこまで逸脱していないように聞こえるかもしれませんが、問題となるのは本作の根幹にある設定とストーリー展開、それに伴う演出に「ボス戦闘」です。


本作は序盤で“人間に残虐性を吹き込み、殺人を犯させ続ける「魔のモノ」”なる存在がおり、主人公「アリッサ」は「魔のモノ」と闘ってきた「ルーダー」の血を引いていることが判明します。


登場する追跡者は全員“「魔のモノ」の力で蘇った殺人鬼”であり、各ブランチ(ステージ)の最後では、アリッサのルーダーとしての能力が覚醒。「ボス戦闘」が始まり、精霊の武器である弓矢で追跡者を倒せるようになります。


過去作でも“異形の怪物”や“超常現象”の概念に加え、最終的に追跡者の打倒を目指す展開はありましたが、本作は序盤ステージの段階で主人公が闘う決意を固めるほか、「ボス戦闘」時に武器展開シーケンスが挟まったり、必殺技演出が用意されていたりと、変身ヒロインのイメージが強めです。


また、ムービーでは全体的に演技が大げさで、途中では演劇のような演出も挟まるなど、“これがホラーとして作られている”という前提も相まって怖さより面白さの方が勝ってしまう場面も。


極めつけに、本作も「バロウズ家」が重要ワードではあるのですが、過去作で中心人物だった「シザーマン」が“敵の幹部の1人”程度の役割に落ち着き、「シザーウーマン」とコンビを組む饒舌な道化師風の兄妹になってしまっています。


他にも“あれどうなったんだ?”と思う場面や“あの設定なんだったんだ?”と思ってしまう箇所もあり、ヒューマン倒産後のナンバリングが付いた“新生『クロックタワー』”として考えると“冒険しすぎた”感が否めません。


仮に特撮ドラマであれば、「斧男」の回は語り草になると思います。

しかし、変身ヒロインものとしては、“懲役換算年数が強さに変換される演出”、“中盤に必殺技が効かない敵幹部が登場し、新アイテムでパワーアップする展開”、強敵に刺したトドメの一撃が時間差で発生するムービー”、“主人公と対になる必殺技をもつラスボス”など、特撮が好きな筆者個人としてはそこまで嫌いになれない部分もあります。


実際、公式サイトのスタッフ欄では杉村升氏、雨宮慶太氏、野口竜氏といった面々が並んでいますが、代表作を見るとカプコン作品のほかにも「仮面ライダーBLACK」「人造人間ハカイダー」「宇宙刑事ギャバン」などの特撮作品の名前が掲載。エンドクレジットに掲載されているメンバーも監督補の辻理氏をはじめ、東映の特撮に携わったことのある人物が多いため、スタッフの経験や個性が発揮された結果なのかもしれません。


求められていた方向性かは別として全体的なクオリティは悪くなく、少なくとも序盤はホラーとしての雰囲気を感じました。


また、『星のカービィ』や『スマッシュブラザーズ』シリーズで知られる桜井正弘氏は、本作の大げさな演技について、「それがよかったかというわけでもない」などと前置きしつつ、「なんらかの参考にできる話」として引用しています。


『DmC Devil May Cry』より。

後に発売されたMetacriticsで高いユーザースコアを誇るゴシックサイコホラー『デメント(Haunting Ground)』に、本作を踏まえたようなシステムが多く実装されたことも考えると、同じカプコンで言えば、イメージの違いなどからファンの不評を買い、最終的に外伝扱いになるも、ゲーム部分では『デビルメイクライ』シリーズ本家に一部システムが逆輸入された『DmC Devil May Cry』と立ち位置が近い作品と言えるかもしれません。


執筆時点で中古の市場価格も比較的安めなので、ゲーム史に残る1作として遊んでみるのもオススメです。




これにて本記事の『クロックタワー3』の紹介は以上です。前回は円谷プロダクションの「ウルトラマン」シリーズ原作の『ウルトラマンネクサス』、今回はどこか東映っぽさのある『クロックタワー3』を取り上げましたが、次回は“20周年”という意味では前者と、“カプコン”という観点では後者と共通するPlayStation2でプレイ可能な作品を特集します。


次回も近日公開予定なので、ぜひ予想してみてください。

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