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ゲキサカ特別インタビュー『岡田武史ブラジルW杯観戦記』前編

ゲキサカ / 2014年9月19日 17時17分

 南アフリカの大会で私が選手に注意喚起したのは「勝負の神様は細部に宿っている」ということだった。戦術論やシステム論で頭でっかちになるのではなく、1cmでも間合いを詰めてシュートのコースを狭める、体を逃がさずにブロックする。『俺が全力で走って戻らなくても何とかなるだろう』というような妥協を排する。そういう小さなことをしっかり積み重ねて勝利に近づいていこう、ということだった。

 ブラジル大会では、その上に、タレントのそろった攻撃陣で多彩な攻撃を積み上げれば良かったのではと感じる。

コートジボワール戦 日本はなぜ前線からプレスをかけられなかったのか?

 日本の3試合を振り返って惜しまれるのは、やはり初戦の逆転負けだ。今回のチームに本当に勝ちたい気持ちがあったのなら前線からプレッシャーをかけることは絶対に必要だった。2戦目、3戦目でやっとそういう機運が出てきたが、初戦に負けたあとでは使えるエネルギーは限られた。

 大国ならいざ知らず、未成熟な日本に、初戦を落としてから挽回できるほどの力はまだ蓄えられていない。だからこそ初戦にすべてをぶつける覚悟が必要だった。チリのようにピッチ全面、ありとあらゆるところでプレスをかけろとまでは言わないが、ボールに対する出足の厳しさ、鋭さ、連続性は要所で絶対に見せるべきだった。それが初戦からできていれば、状況は変えられただろう。

 なんのかんのといっても、どこか日本人は欧米に対する根強いコンプレックスを持っている。サッカーで外国人指導者をむやみにありがたがる風潮もその一例だろう。欧州組が増えて、一見すると選手はたくましくなったように見えるけれど、彼らは彼らで本場欧州の豊かなサッカー文化の厚みに触れて、我々以上に落ち込むことだってあるだろう。そういう欧州に対するコンプレックスはそうは簡単に乗り越えられるものではない。特にそれは個人単位ではなかなか難しいものだ。

 リオの海岸に行くと、小錦みたいなブラジルのおばさんが極小ビキニ姿で闊歩していた。美しさに自信があろうとなかろうと関係なしに平気なのだ。同じことが日本人女性にできるだろうか。「恥ずかしい」「笑われたらどうしよう」とか、そういう自意識の壁というか何かを最初から越えてしまっているのだ。日本人ならプレッシャーに感じてしまうことを平気で超えられるメンタリティーが向こうにはある。私がW杯で初戦の重要性を強調するのは、個人単位では難しいけれど、南アのときのカメルーン戦のように、初戦に勝利してチームとしてその壁のようなものを乗り越えると、逆に「俺たちにだってできるよね」とドーンと勢いが付くことを知っているからだ。

▼『岡田武史ブラジルW杯観戦記』中編
▼『岡田武史ブラジルW杯観戦記』後編

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