ゲキサカ特別インタビュー『岡田武史ブラジルW杯観戦記』前編
ゲキサカ / 2014年9月19日 17時17分
ワールドカップ(W杯)を本格的に見て回ったのは2002年日韓大会以来、12年ぶりのことだった。「王国」と呼ばれるブラジルで岡田武史元日本代表監督は何を感じ、どんなことを思っていたのか? グループリーグ敗退という結果に終わった日本代表について、ドイツの優勝を支えたもの、岡田氏の胸を激しく揺さぶったチーム――。縦横無尽に語ってもらった。
日本代表は、マスメディアが大会前に持ち上げるほど強くないし、大会後に見下すほどに弱くなかった
1分2敗に終わった今回の日本代表について、いろいろな人がいろいろな立場から意見を言っていることと思う。その中には「所詮、日本サッカーの力はまだまだこんなもの」という意見もあるのだろう。コートジボワールに1-2の逆転負け、10人のギリシャと0―0の引き分け、そしてコロンビアには1-4と大敗したのだから「弱いな、日本は」と見下されても仕方ないのかもしれない。
私はそうした見方に必ずしも同意しない。というか、今回の日本代表はかなり力のあるチームだったと今でも思っている。あれだけ攻撃にタレントがそろっていたらリスクを冒す価値は十分にあった。攻撃的なサッカーを目指したアルベルト・ザッケローニ監督の気持ちも痛いほど分かる。私だってそうしたことだろう。
残念だったのは「代表は国の誇りをかけて戦うところだ」という原点がぼやけていたことである。選手たちは二言目には「自分たちのサッカーをしたい」「攻撃的に戦いたい」と大会前も大会中も述べていたが、正直、私はずっとそこに違和感を覚えていた。
「自分たちのサッカーがやれたらそれで満足なのか」
「自分たちのサッカーができないときはどうするのか」
「自分たちのサッカーができたら負けてもいいのか」
「負けてもいいサッカーならだれでもできるだろう」
違和感を言葉にすれば、こんな感じだろうか。W杯がそんな甘っちょろい世界ではないことはブラジル大会をご覧になった方ならすぐにお分かりいただけるだろう。
ブラジル大会で日本代表が目指したものが、守備的だった(とされる)南アフリカ大会の反省の上に成り立っているかのような言説も当時の監督だった私を戸惑わせた。大会中に会った外国の記者たちは、お世辞もあるだろうが、南ア大会の日本代表を結構評価してくれるのに、日本では「南アの日本代表は守備的だった」の一言で片付けられる。なぜなのか。本当に不思議でならない。
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