[Fリーグ]二兎を追った木暮監督が選んだ「パワープレー」という戦術
ゲキサカ / 2015年2月25日 11時50分
11月中旬、練習中にシュライカー大阪の木暮賢一郎監督は選手たちを集めた。リーグ戦では、7連覇中の名古屋オーシャンズが着々と勝ち点を積み重ねており、大阪が1位でレギュラーシーズンを終えてプレーオフ・ファイナルに直接進むことは、現実的ではなくなっていた。
木暮監督は10月にサテライトから昇格させたFP加藤未渚実をトップチームで起用するなど、少しずつチームの世代交代に踏み切っていた。加えて、主力にケガ人や出場停止の選手が出たことで、チームの得点力は低下していた。16節の名古屋戦から21節のすみだ戦までの計6試合で挙げたゴール数は14。点を取り合った19節の神戸戦(6-4)を除けば、5試合でわずか8ゴールだ。この状況を変えるために、木暮監督は試合の流れの中でパワープレーを導入することを決める。
多くの場合、パワープレーは試合終盤にリードされているチームが一発逆転を狙い、FPにGKのユニフォームを着せて5人で攻める戦術だ。2012年のW杯で日本代表がこの戦術を用いて、ポルトガル代表と引き分けた試合を覚えている人も多いだろう。しかし、木暮監督は、試合の流れの中で足元の技術に長けたGK宮竹晴紀を攻撃に参加させるパワープレーを取り入れることにした。
「パワープレーっていうのは、最後(で使うとき)もそうだけど、(守っている側は)集中が切れやすいうえに、油断したらやられるから意外と疲れる。相手は一度切れた集中力、たとえば、『またディフェンスか』『またパワープレーか』となり、自分たちのスピーディーな攻撃ができなくなる。一度切れた集中を、1試合の40分の中で立て直すことはすごく難しい。それは試合中にミスをして、そのゲームの中で気持ちを切り替えるのと同じようなもの。その一方で、こちらは自分たちから仕掛けているから、リズムをつくりやすい」と、木暮監督はパワープレーをするメリットを挙げた。
経験の浅い若手は、なかなかゲームを組み立てられない。一度、相手につかまれた試合の流れを、パワープレーという戦術を用いることで補う狙いがあった。ただし、これを選手たちに実行させるには、動機づけが必要だとも感じていた。上記のようにパワープレーのメリットを話した木暮監督は、同時に「決してモチベーションが上がるような戦術ではない」ことも認めている。
ここで用いようとしたパワープレーは、アグレッシブにゴールを目指す積極的な攻撃というよりも、相手の出方をうかがった慎重な攻撃であり、流れを引き戻すことを主眼に置いているからだ。「選手がそれを受け入れてやるためには、動機がないといけない。理由がないと選手はやらない。なんのためにやるかを、しっかり説明しないといけない。そうじゃないとチームは壊れる」。そこで11月中旬の練習中に、木暮監督は選手を集めて「プレーオフ・ファイナルの2連戦で名古屋に勝つためにパワープレーを取り入れる」と説明した。
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